「ニセ医学に騙されないために」を読みました(書評の名を借りたリンク集)

メタモル出版刊行本書評シリーズの最後は予想通りだと思いますがNATROM本です。

小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20140608/1402205507
産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20140625/1403676922


「ニセ医学」に騙されないために-危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!-



■紹介するよりも
当初は前の2冊と同じように書評を書いて皆様にもおすすめですよぉ〜と、しめようとおもっていたのですが、それってあんまり意味がないんじゃないかな? とも思うようになりました。
だって、とらねこ日誌を読んでいる人でNATROMの日記を読んでいないという人はあまりいないでしょうからね。

というわけで、NATROMさんの事を知っているというのを前提として、気ままに書くこととしました。



■おおまかな内容
第1章現代医療編では、「このクスリは怖いよ」、「キケンがいっぱいだよ!」というような現代医療批判に対し、根拠を示しながら反論をしていきます。
続いて第2章代替医療編では、現代医療編で示したような有害論で不信を与えたところで、代わりにコレをやってみましょうと勧められる事の多い代替医療とはどんなものなのかを解説しております。
第3章健康法編では、個人で出来るような手軽な健康法などのオカシサ、危険性などについて指摘を行います。
本書には専門用語やちょっとした前提知識が求められるような記述や説明もありますが、健康問題などについて興味のある人ならきっと、ネットなどで意味を調べながら理解を深めていけるようなレベルと内容だと思います。


■本だけではもったいない
こうした医学的な内容を含む素材で一般向けに本を書く、というのはとても難しい事と思います。ページ数や表現方法など制約がいっぱいあるからです。用語の説明や問題の背景に文字数を割きたくても無理があり、どこかは削らなければならないでしょう。
なので、本書を手にとって興味を持った方には、この機会にNATROMさんのブログであるNATROMの日記を読み、理解を深めていただくことをオススメしたいと思います。
NATROMの日記は記事数も多いので、どこにどのエントリがあるのか分からないという事もおこりそうですので、本に対応しそうな記事をこの機会に紹介してみようと思います。(あと、一部論文や他サイト、とらねこ日誌の記事も便乗して紛れ込ませました、やめてもの投げないでぇ)



■現代医療編

p12【日本人は薬漬け?】

日本の薬の使用量はケタ違いなのか?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120831#p1
医療における顧客満足
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090522#p1



p18【万能薬は存在する?】
この項目を読んだときに、あるおいしゃさんの名前とアイコンが思い浮かびました!・・・と思ったら後でまた出てきたという。

万能薬は効かない
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20110214#p1



p24【ステロイドは悪魔の薬?】


喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090201#p1



p54【ワクチンは有害?】


シートベルトは死亡を防がない?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090925#p1
非典型例の恐ろしさ
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20121217#p1
さらばMMRワクチンと自閉症の関係性そして残されたモノ(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110112/1294753587
だれがとくをするのだろう(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120322/1332398491



p66【病院での出産は不自然?】

本文p68より
助産所代替医療と結びついていることも多い。


これはどらねこもホント実感してます。

「非常に感染力の強い方のお産」を扱う助産
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120518#p1

信仰と狂気〜吉村医院での幸せなお産
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20070707#p1
吉村医院の哲学
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100209#p1
出産施設関連統計から助産所での出産などを考える(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120927/1348740438
ちょい昔の事情(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20090731/1249041209



代替医療
p80【ホメオパシーは安全?】

本文p80より
「由緒正しいニセ科学

批判の歴史は数十年とたいへん長いのに未だに・・・というのはたいしたものだとは思いますね。・・・と、思ったら19世紀からでした(笑)


ナイチンゲール曰く、「ホメオパシー療法は根本的な改善をもたらした」
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090810#p1
ホメオパシー(Skeptic's Wiki
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%A5%DB%A5%E1%A5%AA%A5%D1%A5%B7%A1%BC



p90【瀉血デトックスできる?】

例えば、危険性のある伝統療法などを批判するときに、ついつい、そんなものは何のメリットもないとか、効果を認めたくないという心理状態に陥りがちだとおもうのですが、NATROMさんのいいなぁと思う点は、そうしたものでもかくにん!、検証をおこなうところだと思います。
瀉血なんてやばんよ〜と、どらはいいたくなりますが、肝疾患で鉄が過剰な状態を緩和するためや真性多血症では適応である、というような事をキチンと書いております。また、ブログやツイッターでも指摘された内容については検証している姿を何度も目にしております。

瀉血と降圧(論文)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4046500



p120【がんに炭酸水素ナトリウムが効く?】


癌は真菌であり、重炭酸ナトリウムで治療可能だったんだよ!
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100219#p1

トゥーリオ・シモンチーニのがん治療についてのまとめ(幻影随想)
http://blackshadow.seesaa.net/article/155335894.html

どうして日本は癌大国になってしまったのか?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090718



■健康法編
p146【水で体が変わる?】
医師の裁量権の大切さについても言及されておりますが、これを盾にインチキ商売をする人がいれば、本当に卑劣としかいいようがないですよね?


何でも治る超ミネラル水。野島尚武博士が熱い!
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100708#p1
NATROM氏のツイート
https://twitter.com/NATROM/status/25265647953
NATROM氏のツイート
https://twitter.com/NATROM/status/100483872466280449



p170【米のとぎ汁乳酸菌で健康に?】

p172より
雑菌を含む食べものをとるのは「想定内」なので身体の防御機構も働くが、点眼や吸入はいわば「想定外」なので、より危険である。

消化管を除くと一般に粘膜は感染に対して弱いと考えられますので、そうした部分にどんなものがいるのかわからないものを接触させるのはとても危険なんですね。なので、おそらく起こらない食中毒の文脈で批判するよりもスジが良い話と思います。


とぎ汁で予防に個人的に思うこと(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110810/1312962833



p196【タバコでは肺がんにならない?】


武田邦彦氏の過去の発言を検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20110415#p1

「タバコを吸うとガンになる可能性は3分の1以下になる!」。何が何だか分からないよ!http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120318#p1

武田邦彦氏によるトンデモ発言まとめ
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/00110510





■とにかくオススメ
やたらと長いエントリとなってしまいましたが、ここまで読んで下さり有り難う御座います。
本当に読んで欲しい人には届かない、というような悩ましさはありますが、既にNATROMの日記を読んでいる人もこの機会に読み直し、本の記述と見比べてみるのも面白いんじゃ無いかと思います。
最終的に判断をするのは個人ではあるけれど、判断をするために必要な情報にたどり着けない事は多いように思います。「○○が効く!」という本ばかりが本屋に並んでいる状況から、こうした本の横に並んでいるような状況にかわれば少しは届く機会も増えるかも知れません。今はまだはまってしまっていない人や、心身共につかれた人を守れるように・・・というのは予防接種の考え方にも似ているんじゃないかな、と思います。なので、この本が売れると良いな、その助けになれば良いな、そう思ってます。

妊娠・授乳とビタミンD

とらねこ日誌では、これまでに栄養と出産・育児関連の記事をいくつか書いてきましたが、重要な栄養素について、まだ言及していない事に気がつきました。過去の病気であると思われていたくる病が報告されてもおり、ビタミンDについて、知っておくと良さそうな事を書いてみようと思います。


ビタミンDってなあに?
ビタミンD脂溶性ビタミンの一つで、体内のカルシウム濃度を調整する作用がよく知られております。どらねこも子どもの頃に、ビタミンDは骨をつくるのに大事なビタミンだよ、と教えてもらった記憶があります。
もう一つよく知られているのが、日光を浴びるとつくることができる、という話だと思います。皮膚にはコレステロールからつくられるビタミンDの素になる物質があり、それが日光(紫外線)を浴びるとビタミンDに合成されるんですね。ビタミンDは食べものにも含まれており、体でつくる分と食事から補う分を合わせたものが不足しないようにする事が求められます。


■実はすごい(?)ビタミンD
(この項目の説明はあ〜そうなの、ふ〜ん程度に流していただいてもOKです)
ビタミンという名前ではあるものの、肝臓や腎臓で活性化されたビタミンDの働き方はステロイドホルモンとみなされるようなもので、ビタミンD依存性たんぱく質の遺伝子発現をうながし、腸管や肝臓でカルシウムやリンを取り込むことで、丈夫な骨をつくります。それだけでなく、活性型ビタミンDの受容体は全身に存在しており、それぞれ別の働きをしている事が示唆されております。最近では、糖尿病の人ではビタミンD濃度が低いことから、予防につながるのではという期待で研究が進められておりますし、高血圧にもかかわっているとも考えられております。今後要注目のビタミンなのですね。
また、高齢者であっても、ビタミンDを十分にとっている人には骨粗鬆症が少ない、という報告もあります。カルシウムを十分に摂りましょう、という話は健康情報で定番ですが、この話にビタミンDが加わることでより効果的な骨粗鬆予防対策になるでしょう。


■季節とビタミンD
日光を浴びることによってつくることのできるビタミンDですが、その特徴ゆえの落とし穴があります。
南北に長いという特徴のある日本では、高緯度の東北・北海道では冬の日照量がとても少なくなるため、冬場は肌でつくられるビタミンDが大きく低下する事が予測されます。
これを裏付ける論文*1がありますので、ちょっと紹介してみます。
下記の結果*2大人の手の甲と顔の表面積に相当する600cm2で晴天の日に各地域でどれぐらいビタミンDを合成することができるのかを計算により求めたものです。


論文Fig 3より

一番日照のある正午を見て貰えば分かると思いますが、12月の札幌ではビタミンDの合成量は那覇のおおよそ十分の一程度にとどまっております。北日本に住む人は、なるべく日光浴を心がけるほかにも冬場は食事からのビタミンD摂取量を増やした方が良いかも知れませんね。


■妊娠期・授乳期こそ気をつけたい
長々とビタミンDの特徴を書いてきましたが、ここからが本番です。どうして妊娠・授乳期に気をつけて欲しいと考えられるのでしょうか。それは日本で生まれる新生児にはビタミンD欠乏症が頻繁に見られる事を明らかにした疫学調査論文*3があるからなのです。さらに、生まれた月により大きな差があることも明らかになっております。
この論文では、頭蓋癆(とうがいろう)とよばれる、ビタミンD不足による頭蓋骨の軟化状態を指標として、ビタミンDの不足状況を見ております。


論文Fig. 1より

上記は、生まれた月と赤ちゃんの頭蓋癆発生割合をみたものですが、5月の31.7%をピークに、4月、6月が高い状況であり、その後ストンと低下する様子がうかがえます。これは、胎児の骨形成にとって重要な時期に母体のビタミンD合成量が不十分である事が示唆されるものです。
しかし、問題は妊娠中だけにとどまらないかもしれません。


論文Fig. 2より

これは頭蓋癆があった新生児に対し1ヵ月後に血液検査を行い、血中のビタミンD濃度(25(OH)vitaminD)を見たものですが、母乳栄養では欠乏が見られる子どもが多く確認されました。混合および乳児用ミルク使用した場合では正常範囲に収まっており、出産時の欠乏状態が改善されているのに比べて、母乳栄養児では長引いてしまっていることが示唆されます。
妊娠時もそうですが母乳のビタミンD濃度は日照時間やビタミンD摂取量に影響を受けるため、授乳中にもビタミンDの補給に注意が必要だということを意味します。
赤ちゃんの順調な発育、骨の育成のためにビタミンDを十分に提供したいところですが、これらの情報が十分に活用されていないというのが現状であるように思います。


ビタミンD欠乏を予防するためにできること
こうした赤ちゃんのビタミンD欠乏が目立つようになってきた背景として、日焼けを嫌う風潮と完全母乳育児が増えていることがあるように考えられます。
前者は、過度な日焼けが皮膚がんをはじめとする肌のトラブルや美容の大敵であるという認識が広まった結果、紫外線カットの化粧品や日焼け止め、日傘をさす習慣や肌を露出しないなどの紫外線対策がすすみ肌でのビタミンD合成が不足した・・・というわけです。過度な日焼けはもちろんよくありませんが、ビタミンDの有用性を考えればほどほどの日光浴は大切*4であると認識してもらいたいところです。
さて、母乳についてはどうなのでしょう。完全母乳育児ではビタミンD欠乏になりやすいというのは事実ですが、それだけを理由に母乳育児をやめるというのは望ましいことではありません。幸い、ビタミンDは食事でも補給することができますので、足りない分は口から食べれば良いとも考えられます。実際に、日本人の食事摂取基準でも母乳に考慮し、ビタミンD摂取の目安量を2.5μg/日ふやした8.0μgとすることが望ましいと提言をしています。
では、具体的にはどうしたら良いのかを考えてみましょう。


ビタミンDを食事で補おう
ビタミンDが豊富な食品はなに?と質問すると「きのこ!」という答えが返ってくることがけっこうあります。確かにキノコは食物繊維も多いですし、美味しいしオススメな食品なのはまちがいありません。ですが、沢山のキノコを毎日食べるというのはちょっと苦痛という人もいるかも知れません。そこで、他にもビタミンDの多い食品を知っておくことが大事*5だと思います。
実はキノコよりもビタミンDを摂りやすい食品がありまして、それは魚なんです。
えっ、魚って水銀が心配だから妊娠中に沢山たべるのはNGなんじゃない?と思われるかも知れませんが、マグロやカジキ、サメ、金目鯛といった比較的水銀含量が多いものを除けば、日本でもポピュラーな魚についてはさほど気にしなくて大丈夫なのです。
不足するとデメリットが明らかなビタミンDですから、補給に最適な魚を食べない手はありません。オススメなのはサバ、イワシ、サンマ、ブリといった青魚で、これらは妊娠中に摂りたいn-3系脂肪酸を豊富に含んだ食品でもあります。さらにオススメなのが、サケなんです。一切れ60〜80gほど食べるだけで、一日の必要量を満たせるほどです。高級魚でないというのも魅力的な要素ですね。
妊娠中は食塩が多くなると高血圧を招きやすいですから、新鮮なものを薄味で頂いて欲しいと思います。


■まとめとアドバイス



・日本(特に北日本)では冬にビタミンDが不足する傾向があります。冬はビタミンDの多い食事をしましょう。


・肌のトラブルを招かない程度に日光にあたることは健康によい影響があるでしょう。


・母乳育児を安心してすすめられるように、ビタミンDの多い食生活を心がけましょう。


・赤ちゃんにも適度な日光浴を。


・サケおすすめ。

ビタミンDはとても大事な栄養素ですが、意外とその重要性や補給方法が知られていないような気がします。特に母乳栄養ではビタミンD欠乏のリスクが高くなることをもっと知っていただく必要があるとどらねこは思います。
ビタミンD不足の話をすると母乳栄養をやめてしまうひとがでそうで・・・、と考えてしまう事もありそう*6ですが、母乳育児を推進するからこそ、ネガティブな情報もキチンと伝えていかなければならないと思うんですよね。
そのうえで、ビタミンDに気をつけていただき、よりよい母乳育児ができるようなアドバイスを専門家から提供していくことが大切なんだろうとどらは思っております。
今回の記事が皆様にとって何らかの参考になれば幸いです。



その他参考記事
母乳の成分
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20131105/1383638713
母乳と鉄
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20130326/1364274009
母乳育児に完全は必要なのか
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20091227/1261918472

*1:Miyauchi M1, Hirai C, Nakajima H.The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan.J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2013;59(4):257-63.

*2:Fig中の日本語はどらねこが書き加えたものです。ご了承下さい

*3:Yorifuji J1, Yorifuji T, Tachibana K, Nagai S, Kawai M, Momoi T, Nagasaka H, Hatayama H, Nakahata T.Craniotabes in normal newborns: the earliest sign of subclinical vitamin D deficiency.J Clin Endocrinol Metab. 2008 May;93(5):1784-8. doi: 10.1210/jc.2007-2254. Epub 2008 Feb 12.

*4:このほどほどが人によって違うのもまたやっかいなところです。肌の色の違いによってビタミンD合成能力にも違いがあり、色が白くて日に当たってもすぐ赤くなる人のほうが色がすぐに黒くなる人に比べてビタミンD合成量が多い傾向があることが知られています。なので、すぐ肌が赤くなってしまう人は赤くならない程度でも日光に当たることである程度の補給が出来るとも考えられるでしょう

*5:キノコ、魚、と書いてますが、その他動物性食品に一般的に多いのがビタミンDです。卵だと卵黄に多いので、そんなに高級な食品じゃなくても補給可能です。食べものは好みやアレルギーなどの問題もありますから、ビタミンDの多い食品をいっぱい知っておくことはとても有用ですね。

*6:ないといいですが

「妊娠・出産パーフェクトBOOK」はやっぱりよいね(書評)

今回は宋美玄さん著「産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK」の書評エントリです。

小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK に続いて、メタモル出版刊行本書評3連発の第2弾*1です。
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20140608/1402205507
宋さんはテレビでもおなじみの産婦人科医ですが、バラエティ番組などで、変な情報に傾きそうになると必死(?)により戻そうと奮闘なさっている姿が思い浮かび、頑張れ〜と心の中で叫んでいるどらねこ*2です。



■気になる内容は?
森戸さんの本は、「おかあさんもっと安心してよいんですよ」というメッセージをどらねこは感じましたが、宋さんの本は、ハウツーたっぷりの応援本という印象です。
まずは前回同様、本の目次を紹介です。どらねこが個人的にオススメでぜひ読んで欲しい項目を赤字にしてます。


プレ妊娠編
Q1 予防接種はしておいたほうがいい?
Q2 そのほか、妊娠前にすべきことは?
Q3 妊娠のサインってどんなもの?
妊娠編
1・普段の生活
Q1 妊娠に気づかずにやっていたことが不安です
Q2 運動はすればするほどいい?
Q3 妊婦が食べたほうがいいものって?
Q4 反対に食べてはいけないものは?
Q5 薬を飲んだりしても大丈夫?     
Q6 妊娠中の嗜好品は一切ダメ?
Q7 妊婦がしていいこと、いけないことは?
Q8 セックスってしていいの?

2・トラブルについて
Q1 つわりがひどくて困っています
Q2 体重が増えていると叱られました
Q3 よくお腹が張るので不安になります
Q4 マイナートラブルはどうすべき?
Q5 逆子は、どうしたら直るの?
Q6 高齢出産のリスクってありますか?
Q7 太ると妊娠中毒症になるって本当?
Q8 妊娠糖尿病になったら、どうすべき?

3・病院のこと
Q1 どこで産むべきか迷っています     
Q2 妊婦健診では、どんなことをするの?  
Q3 出生前診断について教えて!
Q4 無痛分娩は、赤ちゃんによくない?
Q5 病院を急いで受診すべきときって?

出産編
Q1 出産の兆候ってどんなもの?
Q2 出産の流れを知りたい!   
Q3 安産のためにできることってある?
Q4 できるだけ自然に産みたいのですが
Q5 どんな場合に帝王切開になるの?

産後編
Q1 産後1か月は休むべき?  
Q2 セルフケアのやり方を教えて!    
Q3 傷のケアはどうしたらいい?    
Q4 母乳で育てたほうがいいの?
Q5 産後のセックスはいつからOK?



■これは紹介しておきたい
本書はハウツー本としても有用ですが、妊娠、出産、子育てなどでよく出会うアヤシゲな情報にも注意を促してくれます。そのうち食と栄養に関わる項目二つを紹介させていただこうと思います。

Q4 反対に食べてはいけないものは? p32より
妊娠中は、生肉や生ハム、刺身、生牡蠣などの生もの、無殺菌のミルクやチーズは避けたほうがよいでしょう。これらのものは、先に述べた病原性原虫の『トキソプラズマ』、細菌の一種である『リステリア』に感染するリスクがあるからです。トキソプラズマに感染した場合、流産や死産のほか、胎児の脳や目に障害をきたす『先天性トキソプラズマ症』を引き起こす危険性があります。


そうそう。生ものは良くないと聞いていた人でも、生ハムや無殺菌のチーズは大丈夫だろうと考えてしまいそうな気がします。多くの方には問題はないでしょうけれど、十分気をつけようと思っていたのに、うっかりは避けたいものでありがたい指摘です。
さらに・・・

p33より
手作り酵素ジュースや発酵食品も雑菌が繁殖するリスクが高いので避けたほうがいいでしょう。


なんとなく良さそうなイメージで手を伸ばしそうな食品なので注意が必要ですね。
また、

p33より
「精製された砂糖はダメ」「南国の果物はダメ」など、さまざまな都市伝説がありますが、ほとんどがウソです。


マクロビオティック発の根拠の無い言説もバッサリです。こうした話は助産院などでも聞かれる話題ですから、しっかり言及して下さるのはありがたいです。


Q2 体重が増えていると叱られました p52より
助産師や医師の中には、「太ったら産道に肉がついて難産になる」「体重を制限すれば安産になる」と、体重が増えなければ増えないほどいいと思っている人もいるようですが、決してそんなことはありません。


出産育児関係だと根拠が無いのに正しい事のようにいわれるのって多いような気がするんでよね。これらもその仲間の一つです。もっとくだらないのだと、お腹が出っ張っているから男の子だとか、筋子を食べるとあかちゃんの顔が崩れるとか・・・ぷんぷんした記憶があります。

p52より
妊婦さんの栄養状態が悪いと、2500g未満の『低出生体重児』が生まれやすくなります。こうして生まれた子どもは合併症を発症しやすく、成人してからも生活習慣病になりやすいというリスクがあります。

その他、低出生体重児では低血糖症に陥る危険性が高くなりますし、母乳だけで育てる場合に鉄欠乏になるリスクを高めるなどマイナスの要素がいくつもあります。防ぐ事ができるのなら防ぎたいものです。

p53より
ですから、たとえば妊娠前から太っていたとしても、「妊娠前の体重+12kg」に達しても、食べ過ぎに気をつけながら、できるだけバランスのよい食事をとりましょう。

目標体重を超えてしまったからもう食べない、というのはやめましょうという事ですね。何の為の体重コントロール(勿論母子の健康が目的です!)なのか、見失った制限というのはオカシイものですからね。

低出生体重に着目したどらの過去記事→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120107/1325921279

というわけで、オススメ2項目を紹介させていただきましたが、その他にも役立つ情報満載です。本屋で見かけたら手に取ってみて欲しいと思います。












■妊娠糖尿病について(蛇足)
今回も例によって蛇足です。妊娠糖尿病に対する考え方などは賛同できますし、説明もたいへん分かりやすいと思うのですが、エネルギー量の設定方法などがちょっと気になるところがありました。これについては、糖尿病診療ガイドラインに対するグチというか異議が半分という感じです。指摘内容は本書の価値を損なうモノでは無いと考えております。

p70より
糖尿病といえば、「生活習慣病」や「ぜいたく病」といったイメージが強いようですが、妊娠高血圧症候群と同じで必ずしも食べすぎたり体重が増加しすぎたりするとなるほど単純なものではありません。


その通りです。こうした問題はどのようにして起こるのか、どのような問題があるのかを宋さんは一般の方にも分かりやすい説明をしております。

p70より

そもそも妊娠すると、胎児に優先的にブドウ糖を送るため、母胎の胎盤からヒト胎盤ラクトロゲン(hPL)というホルモンが送り出されます。その結果、母体のほうの糖代謝が悪くなって血糖値が上昇し、普段から血糖値が高めの人は妊娠糖尿病と診断されることが多いのです。
<中略>
妊婦さんの血糖値が高い状態が続くと、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、羊水が増えすぎたりして、早産や難産になりやすく、帝王切開のリスクも高くなります。また、お腹の赤ちゃんが低酸素の状態になることもあります。


さて、ここまではまったく異論はないのですが、妊婦の必要エネルギー推定式を見ておやっと、思いました。

p71-72より
必要なカロリーは以下の計算で出せます。
【必要なカロリーの出し方】
(非妊娠時の標準体重(kg)×30+(妊娠時の加量分350(Kcal))


一つ目のおやっ、と思った点は、妊娠時の加量分です。この350kcalの出典がどこであるのかが分かりませんでした。糖尿病診療ガイドライン*3では、食事療法として標準体重×30kcalを基本とし、非肥満妊婦では健常妊婦の必要エネルギー付加量の妊娠初期 50kcal、中期 250kcal、末期 450kcal、授乳期 350kcal に準拠する方法と妊娠中全期間一律に200kcal付加する二つの方法が行われている旨が記載されております。
授乳期と間違えたのか、一律の付加量を誤ったのかなあと感じましたが、実際のところはわかりません。

しかしながら、どらねこは糖尿病学会の示す基本についても違和感を持っております。妊娠糖尿病というのは健常妊婦よりも必要なエネルギー量の推測は丁寧に行って欲しいと考えるからです。食事摂取基準ではその人の体位だけでなく、年齢や日常生活活動などを配慮し、消費量の推定を行うわけですが、糖尿病学会の示す「標準体重×30で求める方法」は推定するには精度が低すぎると思います。
ひとまとめに妊産婦といっても色々な方がいらっしゃいますからその範囲はそんなに狭いものではありません。年齢も10代〜40代(あるいは50代)という幅もあります。10代の女性では自身の成長分のエネルギーまで考慮する必要がありますから、同じように扱って良い物ではありません。妊婦であっても今までと同様の生活を送っている方もおりますし、運動を控える人もいるでしょう。計算式にはこれらを考慮しても良いと思うのですが、食事摂取基準よりも配慮が少ないというのはどうかと思います。

上記の内容についてはこちらの記事に詳しく書いておりますので、興味のある方はどうぞ。

妊娠糖尿病ってどんな食事をすれば良いの?
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20131226/1388046513

*1:当然3弾があるのでしょうね

*2:先日、妊すぐにどらも掲載していただいたのですが、宋さんと同じコーナーに登場したかったけれどそれは叶わなかったのだけが残念です

*3:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドラインp223

おかしな酵素サプリメント

個人的にもうんざりですが、また酵素のデタラメ話の件です。


■でたらめロジック?
先日、ドラッグストアーで買い物をしていて気になったのですが、酵素を名前に冠した食品がやたらとプッシュされていたりました。販促ビデオを流して、目立つような手がきポップもいくつかつけられてて、売れ筋商品なのかなと感じました。
あ〜あ、と思ってスルーをしようしたら、そのあまりの減量効果メカニズムのデタラメさにあきれかえってしまいました。過去エントリで酵素話はある程度掘り下げて説明をしたのでもう十分と思っていたのですが、それ以前のナカミでしたので、ちょっと採り上げてオカシサに言及してみようと思います。



■それ消化吸収をよくしてるだけだから
酵素栄養学はありもしない理論を元にくみ上げられたものですが、今回の酵素減量サプリメントは、実際にはある理屈で、その通りになれば逆に太るんじゃね?というものでした。

説明概要
○○酵素は生きている酵素の力で、体が太る元である糖質や脂肪をみごと分解します。
(映像)炭水化物に酵素を入れてかき混ぜると、しだいに炭水化物がどんどん分解されていることがわかります。
酵素の力で分解してしまうので、高カロリーのものを食べてもこれなら安心です。


何も安心できないし、ソレじゃ。
例えば、デンプンを分解する酵素をつかうと、酵素にもよりますが、α-限界デキストリンやマルトース、グルコースなどが生成します。これらの物質は元のデンプンと同じように体内でエネルギーとして利用できる物質であり、

というのは誤解だということです。
それ以前に、カプセルや錠剤タイプのサプリメントでは食べた食品と混ざり合う機会も少ないので、酵素が食品に反応する時間もあまりないはずで、色々な意味で効果が期待できないサプリメントだとわかります。
ホント、こんなのばっかりで困ってしまいます。食べた物をチャラにできるなんて話は基本、信じちゃイケナイですよ〜。


■巧妙(?)なのもある
酵素により分解すればチャラ、みたいな同じような理屈のものでも、なんとなく説得力がある巧妙な酵素サプリの宣伝もあります。

酵母の力で糖質を分解! 余分に食べすぎた糖分をお腹の中で酵母が分解します。


ああ、なるほど、酵母か。確かに酵母は糖を分解してアルコール発酵をしますね。しかし、これにも色々と落とし穴があります。一つ目は、サプリメントでとった酵母が生きたまま腸内に到達して作用するのかという問題。もう一つは、酵母が糖質を分解してできるのはアルコールと二酸化炭素であるという問題です。
本当であった場合に問題となるのは後者の方で、食べた糖質が体内でアルコールになればスイーツ(笑)を食べた後には酔っ払ってしまうという大変な事態を招きかねません。また、アルコールにもエネルギーがあり、摂りすぎれば肥満の原因(それも脂肪肝のリスクに!)になるのは変わりありません。
とまあ、あれこれ書きましたが、それらサプリメントを摂っても問題になることがほとんど無いように、謳っているような有用な効果も、それが本当だった場合の危険な作用も実際には起こるようなものではないという事ですね。
そんなものにお金を費やすぐらいでしたらその分をどらねこに回していただきたいものです。


■こちらも参照してね
酵素を食べる事が良いことだ、みたいな話の元は、栄養学的に明かにオカシナ主張である「酵素栄養学」であると考えられますが、これについて詳しい話は、とらねこ日誌の過去記事でも何回か言及しておりますのでどうぞこちらを参照下さい。


食品と酵素
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110306/1299405916

朝の生ジュースは健康に良いって本当?
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120625/1340615700

酵素栄養学ってどこまで正しいの?
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20121011/1349947839

その他「謎解き超科学」という本の中でも詳しく解説をしております。



酵素は生命活動に必要不可欠な物質ですが、食べたり飲んだりして摂る必要のあるものではありません。

しょぐうこうじょう

このぶんしょうはふぃくしょんです。


■ドコカノゲンバ
「この業界、人がていちゃくしないよねぇ〜、募集しても来ないし」
「やっぱり仕事内容の割に給与がやすいからじゃないですかね」
「処遇改善を国に求めていかないといけないよな」
「そうですね、ホントに」
・・・


■カンケイソシキ(?)
「という要望が現場から来てますけどどうでしょう」
「サービスの受給者が増えるのは間違いないし、このままだとまわらなくなっちゃうなぁ」
「これは各分野からユウシキシャを集めて議論する必要がありそうですね」
「うん・・・あつめておいて」
・・・


■ユウシキシャカイギ
「という要望がきてるんだけど」
「うん、マズイと思うよ」
「やっぱ給料あげないとな」
「でも、財源ナイヨ?」
「ほら、この国この業界には厳しいからさ」
「でも、待ったなしとかその人たちもいってるし」
「ううん、加算で対応がいいんじゃね」
「すくなくとも報酬上げるなら今よりも資格取得条件厳しくないとな」
「あと、ちゃんとやってるか書類の整備も今以上にチェックしないと」
「実績に応じる形にしたいから、報酬増は加算方式がいいんじゃね?」
「よその業界はもっとレベルが高いよ、キャリアアップできるシステムをつくらないと」
「じゃあその方向で」
・・・


スウネンゴ
「相変わらず人定着しないなぁ〜」
「ホント、資格取得も難しくなったので学生も集まらないみたいっスよ」
「業務量も増えたよなぁ、報告しなきゃならない書類は昔の3倍くらいあるよ」
「加算のためだからしょうがないっスよ」
「給与増加は5%、で要求されるレベルは30%増」
「やっぱり、やっぱり仕事内容の割に給与がやすいと人定着しないですよね」
・・・
こうした風潮には業界団体自体が積極的に首をつっこんでいくようなケースが多いように思います。さて、皆様はどう感じたでしょうか。

モフモフ療法学会モフキャラ発表

【モフキャラ応募ありがとうございました】
先日、ツイッターにて、日本モフモフ療法学会イメージキャラクターを募集したところ、リアルモフモフをはじめ、非実在モフモフまで幅広い層(?)から応募いただきました。
ご協力くださいました皆様、どうもありがとうございました。


■発表
まずは、とししげさん(@tosisige )から。

可愛らしい犬モフしゃしんモフ〜。どんな場面をパシャリとしたものなのでしょうね。


お次は ほーりー・サザエ2号(現実逃避中)さん ‏(@kappichan2001)提供ですにゃ。

こちらも犬モフしゃしんですが、マフラー(?)とお耳が一体化しているようにみえる面白い構図モフねぇ〜。


続いては、こけてぃっしゅな容姿が人気のもんもんさん(‏@monmon2236)からのエントリーです。

・・・ええと、これは妖怪クダン・・・とかいうヤツでしょうか。モフモフしていれば妖怪だろうが妖獣だろうがモフモフ療法学会ではなんの問題もありません。


さて、最後は頓服パラ子さん(@alchmistonpuku)からいただいた大作です。

羊毛フェルトでつくっていただいたものでねこ林檎さんです。林檎の光沢まで表現されたモフモフカワイイ素敵な作品ですにゃ。

モフモフあるところに安らぎあり。モフモフ療法学会公式モフキャラクターとしてモフモフ療法学会の普及に努めていきたいと思います。

「育児の不安」解決BOOKはオススメよ(書評)

今回は書評です。

森戸やすみ (著)小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK‐間違った助言や迷信に悩まされないために-

という本を読みました。
小児科医である著者本人が書いた絵が可愛らしく、一つ一つの項目が簡潔にまとめられており、育児に忙しくて本を読む時間を十分にとれないお母さん・お父さんにも読みやすいだろうなぁと感じました。


■オススメしたい理由
オススメの理由は読みやすいからだけじゃあなくて、そのスタンスにあります。本書は育児の不安にこたえるハウツー本でもありますが、子どもを育てるお母さん方に「頑張りすぎなくていいんだよ〜」というメッセージが込められているからです。
どうも育児というと子どもに問題が起こったときにお母さんばかりに負担がかかる事が多いですし、周囲の厳しい目もお母さんばかりに向けられてしまいます。お母さんも子どものためだからとついつい無理をしがちです。でもよく考えて下さい。お母さんが疲れきってしまえば損をするのは子どもなのです。
この本はそんな頑張りすぎているお母さんだけでなく、その身内の方にも読んで欲しい内容だとどらねこは思いました。


■気になる内容は?
本の目次を紹介です。どらねこが個人的にオススメでぜひ読んで欲しい項目を赤字にしてます。どら息子達がちいちゃかったころ読んでたら悩まないですんでたのになぁと思うものが幾つか・・・
そうそう、心配しなくて良い事で悩んだりするのは子育ての負担を大きくしてしまいますよね。これを読むだけでお母さんお父さんの負担軽減が期待できます。

第1章 からだの基本
・薄毛ってなおるの?
・おへそがきれいになりません
・目は見えているでしょうか?
・頭の形がいびつです
・耳の形がおかしいかも!?
血液型は知っておくべき?


第2章 食事のこと
・母乳に食べたものの味が出る?
・授乳中に薬を飲むのはNG?
・授乳中の嗜好品はダメ?
・なかなかゲップが出ません
・果汁って早めにあげるべき?
・フォローアップミルクは必要?
・母乳は薄くなっていくもの?
・離乳食の開始は遅いほうがいい?


第3章 ふだんの生活
・新生児は、いつから外出OK?
・おしゃぶりはよくない?
・お風呂? ベビーバスっていつまで?
・お風呂? かぜのときの入浴はダメ?
・どうしても寝てくれません
泣いてばかりいるけど大丈夫?


第4章 小さなトラブル
・おむつかぶれがひどいんです
・乳児湿疹が気になります
・肌がカサつくときはどうすべき?
・あせもができたときのケアって!?
・母乳やミルクをよく吐きます
・下痢のときは何をあげたらいい?
・かぜをひいたときにできることは?
・頭をぶつけてしまいました


第5章 病院のこと
・予防接種? 任意接種のワクチンも受けるべき?
・予防接種? 同時摂取は副反応が心配です
・予防接種? インフルエンザワクチンは効果あるの?
・どういうときに病院に行くべき?
・病院ではどんなことを伝えたらいい?
・入院するときの注意事項って!?


おまけ よくある疑問の一問一答♪


どうでしょう?気になる項目はありましたか。
ところで、こうしたハウツー本は本屋にいくとよく見かけるのですが、どの本が良いのか選ぶときにどらねこが参考にしている方法を一つ書いておきますね。
文章に脚注をつけて引用元を示していたり、本のおしまいに参考文献リストを明示しているものは信頼性が高いと推測できます。参考文献も論文や専門誌をひいたものであればなおよしです。大切な子どもの健康に直結する内容ですから、何にも根拠をしめしていない本を信用するのはちょっとコワイですからね。











■書かれている内容についてちょっと思った事など(蛇足)
こういった本では説明文をやたらと細かいところまで拘ったものにしてしまえば雰囲気を損なう事にもなりかねません。なので、以下に書くものはどらねこが個人的に気になったというだけの事です。この本の内容にいちゃもんをつけるとかそういうものではありません。

p28-31より
Q:母乳に食べた物の味が出る?
A:母乳の味は、それほど変わりません。偏食しないで普通の食事を!


このQ&Aはどらもそうだろうと考えますし、異論もありません。じゃあ何が気になったかというと、ここでいう味と密接に関わるであろう「匂い(臭い)」についてです。赤ちゃんが母乳を口にしたとき味を感じるわけですが、それ以外にも温度や匂いなどを感じ取ります。これら要素は味と同じように赤ちゃんにとって大事な感覚だと思います。おなかすいたぁ〜と母親からうぐうぐと吸啜する状況を考えれば温度はほぼ変わらないと考えられますので、気になるのは匂いということになります。この匂いについては、特に脂溶性成分に於いて食べた物の匂いが母乳に移行しやすいだろうと予測*1されます。香辛料が多い食品を食べた後やニンニクを食べた後などでは匂いが母乳に移行しやすいと思います。
ところで、結論は変わるのかというとそれは微妙で、「風味は変わるかも知れないけれどそれは味覚や嗅覚を成長させるよい切っ掛けになるので気にしない。偏食しないで普通の食事を!」という感じでしょうか。味だけ考えれば書いてある通りなのはいうまでもないのですけどね。

p92-94より
Q:かぜをひいたときにできることは?
よく、お母さんが「私が子どもに寒い思いをさせたから……」と来院されますが、かぜの原因は80〜90%がウイルス、10〜20%が細菌やマイコプラズマなどの病原微生物です。だからいくら寒い思いをさせたとしても、病原微生物がいなければかぜをひきません。
<中略>
かぜをひきおこす病原微生物の種類は数百種類もあります。ウイルスだけでも数十から数百の型があるので、かぜの原因を完全に特定することはほぼ不可能でしょう。そのため、「かぜに特効薬はない」「かぜに効くワクチンを開発したらノーベル賞もの」とまで言われているのですね。
では、かぜのときに病院でもらう薬はなんでしょうか。それは対症療法の薬です。対症療法というのは、原因を解消するのではなく、症状だけをやわらげる治療のこと。だから熱がつらかったら解熱剤、鼻水なら抗ヒスタミン剤、せきなら鎮咳剤を使うのです。市販のいわゆる「かぜ薬」には、それらの成分がミックスされています。


書いてある内容に異論があるという事ではなく、本書をよく読んだ方に「あれっ?」と思わせる記述であるように感じました。
本書のp90にも「またウイルス性の胃腸炎に抗生剤は効きませんから」という記述があるように、感染症の知識をある程度持っている方ではウイルスに抗菌薬は効果がないというのはよく知られている話です。それを踏まえて読むと、じゃあ「かぜの10〜20%は細菌やマイコプラズマ」なら、かぜのときでも対症療法の薬だけでるとは限らないじゃないの? 「抗生物質でることもあるんじゃね?」と思ってしまいそうです。
これは勝手な憶測なのですが、共有できていると考える前提条件に医師である筆者と読者(どらねこ)間に差があるためと考えます。
「かぜ(風邪症候群)」というものは「原因が特定されていないものを指す」という合意ができているものとして筆者は話を進めているように見えました。つまり、風邪かなと思い診察した結果、細菌性のもの(例えばβ溶血性連鎖球菌とか)を疑い、培養したらやっぱりそうだった、というケースはその時点で風邪ではなく溶血性連鎖球菌感染症になるから風邪には抗菌薬は処方されないという、というロジックです。
よって風邪には対症療法の薬と、なるわけですね。この文章だけでは、細菌やマイコプラズマが原因の風邪でも抗菌薬は効かないの?という誤解をしてしまう人がでる可能性はあるのかな、と思ってしまいました。(心配しすぎですね)


以上、ダレ得?重箱の隅つつきでした。

*1:これは香気性成分の多くは極性のないものが多い事と関係する