「ニセ医学に騙されないために」を読みました(書評の名を借りたリンク集)
メタモル出版刊行本書評シリーズの最後は予想通りだと思いますがNATROM本です。
小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20140608/1402205507
産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20140625/1403676922
「ニセ医学」に騙されないために-危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!-
■紹介するよりも
当初は前の2冊と同じように書評を書いて皆様にもおすすめですよぉ〜と、しめようとおもっていたのですが、それってあんまり意味がないんじゃないかな? とも思うようになりました。
だって、とらねこ日誌を読んでいる人でNATROMの日記を読んでいないという人はあまりいないでしょうからね。
というわけで、NATROMさんの事を知っているというのを前提として、気ままに書くこととしました。
■おおまかな内容
第1章現代医療編では、「このクスリは怖いよ」、「キケンがいっぱいだよ!」というような現代医療批判に対し、根拠を示しながら反論をしていきます。
続いて第2章代替医療編では、現代医療編で示したような有害論で不信を与えたところで、代わりにコレをやってみましょうと勧められる事の多い代替医療とはどんなものなのかを解説しております。
第3章健康法編では、個人で出来るような手軽な健康法などのオカシサ、危険性などについて指摘を行います。
本書には専門用語やちょっとした前提知識が求められるような記述や説明もありますが、健康問題などについて興味のある人ならきっと、ネットなどで意味を調べながら理解を深めていけるようなレベルと内容だと思います。
■本だけではもったいない
こうした医学的な内容を含む素材で一般向けに本を書く、というのはとても難しい事と思います。ページ数や表現方法など制約がいっぱいあるからです。用語の説明や問題の背景に文字数を割きたくても無理があり、どこかは削らなければならないでしょう。
なので、本書を手にとって興味を持った方には、この機会にNATROMさんのブログであるNATROMの日記を読み、理解を深めていただくことをオススメしたいと思います。
NATROMの日記は記事数も多いので、どこにどのエントリがあるのか分からないという事もおこりそうですので、本に対応しそうな記事をこの機会に紹介してみようと思います。(あと、一部論文や他サイト、とらねこ日誌の記事も便乗して紛れ込ませました、やめてもの投げないでぇ)
■現代医療編
p12【日本人は薬漬け?】
日本の薬の使用量はケタ違いなのか?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120831#p1
医療における顧客満足
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090522#p1
p18【万能薬は存在する?】
この項目を読んだときに、あるおいしゃさんの名前とアイコンが思い浮かびました!・・・と思ったら後でまた出てきたという。
p24【ステロイドは悪魔の薬?】
喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090201#p1
p54【ワクチンは有害?】
シートベルトは死亡を防がない?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090925#p1
非典型例の恐ろしさ
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20121217#p1
さらばMMRワクチンと自閉症の関係性そして残されたモノ(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110112/1294753587
だれがとくをするのだろう(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120322/1332398491
p66【病院での出産は不自然?】
これはどらねこもホント実感してます。
「非常に感染力の強い方のお産」を扱う助産師
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120518#p1信仰と狂気〜吉村医院での幸せなお産
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20070707#p1
吉村医院の哲学
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100209#p1
出産施設関連統計から助産所での出産などを考える(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20120927/1348740438
ちょい昔の事情(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20090731/1249041209
本文p80より
「由緒正しいニセ科学」
批判の歴史は数十年とたいへん長いのに未だに・・・というのはたいしたものだとは思いますね。・・・と、思ったら19世紀からでした(笑)
ナイチンゲール曰く、「ホメオパシー療法は根本的な改善をもたらした」
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090810#p1
ホメオパシー(Skeptic's Wiki)
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%A5%DB%A5%E1%A5%AA%A5%D1%A5%B7%A1%BC
例えば、危険性のある伝統療法などを批判するときに、ついつい、そんなものは何のメリットもないとか、効果を認めたくないという心理状態に陥りがちだとおもうのですが、NATROMさんのいいなぁと思う点は、そうしたものでもかくにん!、検証をおこなうところだと思います。
瀉血なんてやばんよ〜と、どらはいいたくなりますが、肝疾患で鉄が過剰な状態を緩和するためや真性多血症では適応である、というような事をキチンと書いております。また、ブログやツイッターでも指摘された内容については検証している姿を何度も目にしております。
p120【がんに炭酸水素ナトリウムが効く?】
癌は真菌であり、重炭酸ナトリウムで治療可能だったんだよ!
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100219#p1トゥーリオ・シモンチーニのがん治療についてのまとめ(幻影随想)
http://blackshadow.seesaa.net/article/155335894.htmlどうして日本は癌大国になってしまったのか?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090718
■健康法編
p146【水で体が変わる?】
医師の裁量権の大切さについても言及されておりますが、これを盾にインチキ商売をする人がいれば、本当に卑劣としかいいようがないですよね?
何でも治る超ミネラル水。野島尚武博士が熱い!
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100708#p1
NATROM氏のツイート
https://twitter.com/NATROM/status/25265647953
NATROM氏のツイート
https://twitter.com/NATROM/status/100483872466280449
p170【米のとぎ汁乳酸菌で健康に?】
p172より
雑菌を含む食べものをとるのは「想定内」なので身体の防御機構も働くが、点眼や吸入はいわば「想定外」なので、より危険である。
消化管を除くと一般に粘膜は感染に対して弱いと考えられますので、そうした部分にどんなものがいるのかわからないものを接触させるのはとても危険なんですね。なので、おそらく起こらない食中毒の文脈で批判するよりもスジが良い話と思います。
とぎ汁で予防に個人的に思うこと(とらねこ日誌)
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110810/1312962833
p196【タバコでは肺がんにならない?】
武田邦彦氏の過去の発言を検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20110415#p1「タバコを吸うとガンになる可能性は3分の1以下になる!」。何が何だか分からないよ!http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120318#p1
■とにかくオススメ
やたらと長いエントリとなってしまいましたが、ここまで読んで下さり有り難う御座います。
本当に読んで欲しい人には届かない、というような悩ましさはありますが、既にNATROMの日記を読んでいる人もこの機会に読み直し、本の記述と見比べてみるのも面白いんじゃ無いかと思います。
最終的に判断をするのは個人ではあるけれど、判断をするために必要な情報にたどり着けない事は多いように思います。「○○が効く!」という本ばかりが本屋に並んでいる状況から、こうした本の横に並んでいるような状況にかわれば少しは届く機会も増えるかも知れません。今はまだはまってしまっていない人や、心身共につかれた人を守れるように・・・というのは予防接種の考え方にも似ているんじゃないかな、と思います。なので、この本が売れると良いな、その助けになれば良いな、そう思ってます。