『「健康食品」のことがよくわかる本』を読みました

「健康食品」のことがよくわかる本

「健康食品」のことがよくわかる本

食品安全情報ブログでお馴染み、畝山さんの新刊を読みました。
前作「安全な食べものってなんだろう?放射線と食品のリスクを考える」については以前書評をかいておりますが、前作同様読み手をある程度選ぶ本だと思いました。
予備知識がない方がタイトルを見て手にとっても、あーわからないとすぐに戻してしまいそうな印象はあります。
畝山さん自身、薬剤師の方に読んで欲しいとおっしゃってますし、どらねこも栄養士の方に読んで欲しいというような、それぞれ食品や体内で生理作用を発揮するような成分と健康についてお話しする立場の人に読んで欲しい本だといえるでしょう。
なので、「健康食品のお話をする機会のある人が健康食品のことをわかるために読んでおくと良い本」といえるでしょう。


■本の構成
第1章では医薬品の安全性はどのように担保されているのかを解説します。ここでの解説は、後にでてくる食品の安全性に対する検査は医薬品に比べてどうなのか?という問題点への解答になります。
第2章では安全な食品とはどんなものかを考えます。完全にはわからないけれど、それでも食べないと死んでしまうわけですから、負担がかかりすぎない方法でリスクを管理していくことが提案されます。結果、いつもの解答にはなるのですけれど。
第3章では医薬品と食品の間にあるグレーゾーンについて、各国の実態を紹介しながら考えていきます。実例や対策などは日本でも参考になるでしょう。
第4章では食品の機能性表示の問題点を指摘します。アメリカやヨーロッパの取り組みをみると、昨年始まった日本の機能性表示制度の問題点が見えてくるでしょう。
終章ではそもそも健康食品って何だろう?という疑問を出発点に、畝山さんの考えが述べられます。

FDAかっこいい
私も一般の方へ食と健康の情報を伝える機会が多いので、お話しする際に根拠となる情報がたくさん載っていてとても参考になりました。
アメリカでは食品の健康強調表示について、FDAが評価した科学的根拠に基づいて表示できる文言がとてもシビアで、日本のトクホなどの制度とは大違いであると思いました。
カルシウムと高血圧のサプリメントFDAが評価し表示できる文言はつぎのようなものです。

p140より
「カルシウムサプリメントが高血圧リスクをさげることを示唆する幾分かの科学的根拠がある。しかしながらFDAはその根拠は一貫性がなく決定的ではないと判断した」


科学的である事を前提とすると、業者が商品の宣伝に利用できないような身も蓋もない表現になっちゃうんですね。
身も蓋もない表現をさけると、科学からは逸脱するともいえるでしょう。日本の消費者行政は果たして科学的な視点と消費者視点を持ち合わせているのでしょうか?


食品表示や公衆衛生行政などに関わる人に読んで欲しい
本を読み終え、書評を書きながら思ったのですが、こうした本は行政で働く人に読んで欲しい本だなぁと思いました。
産学官連携で健康食品や地場食品の推奨を、という事例には本で指摘されているような虚構が前提となっているものが多く存在します。
また、出産育児に対する保健指導などでは、健康食品などに対する質問や利用法などへの問い合わせが多いそうなので、保健所勤務の保健師や管理栄養士の方が読んでいただければたいへん参考になると思います。

なんだか魅力的な書評をかけませんでしたが、取っつきにくいけれど骨太の食品と健康の本だと思います。