「育児の不安」解決BOOKはオススメよ(書評)

今回は書評です。

森戸やすみ (著)小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK‐間違った助言や迷信に悩まされないために-

という本を読みました。
小児科医である著者本人が書いた絵が可愛らしく、一つ一つの項目が簡潔にまとめられており、育児に忙しくて本を読む時間を十分にとれないお母さん・お父さんにも読みやすいだろうなぁと感じました。


■オススメしたい理由
オススメの理由は読みやすいからだけじゃあなくて、そのスタンスにあります。本書は育児の不安にこたえるハウツー本でもありますが、子どもを育てるお母さん方に「頑張りすぎなくていいんだよ〜」というメッセージが込められているからです。
どうも育児というと子どもに問題が起こったときにお母さんばかりに負担がかかる事が多いですし、周囲の厳しい目もお母さんばかりに向けられてしまいます。お母さんも子どものためだからとついつい無理をしがちです。でもよく考えて下さい。お母さんが疲れきってしまえば損をするのは子どもなのです。
この本はそんな頑張りすぎているお母さんだけでなく、その身内の方にも読んで欲しい内容だとどらねこは思いました。


■気になる内容は?
本の目次を紹介です。どらねこが個人的にオススメでぜひ読んで欲しい項目を赤字にしてます。どら息子達がちいちゃかったころ読んでたら悩まないですんでたのになぁと思うものが幾つか・・・
そうそう、心配しなくて良い事で悩んだりするのは子育ての負担を大きくしてしまいますよね。これを読むだけでお母さんお父さんの負担軽減が期待できます。

第1章 からだの基本
・薄毛ってなおるの?
・おへそがきれいになりません
・目は見えているでしょうか?
・頭の形がいびつです
・耳の形がおかしいかも!?
血液型は知っておくべき?


第2章 食事のこと
・母乳に食べたものの味が出る?
・授乳中に薬を飲むのはNG?
・授乳中の嗜好品はダメ?
・なかなかゲップが出ません
・果汁って早めにあげるべき?
・フォローアップミルクは必要?
・母乳は薄くなっていくもの?
・離乳食の開始は遅いほうがいい?


第3章 ふだんの生活
・新生児は、いつから外出OK?
・おしゃぶりはよくない?
・お風呂? ベビーバスっていつまで?
・お風呂? かぜのときの入浴はダメ?
・どうしても寝てくれません
泣いてばかりいるけど大丈夫?


第4章 小さなトラブル
・おむつかぶれがひどいんです
・乳児湿疹が気になります
・肌がカサつくときはどうすべき?
・あせもができたときのケアって!?
・母乳やミルクをよく吐きます
・下痢のときは何をあげたらいい?
・かぜをひいたときにできることは?
・頭をぶつけてしまいました


第5章 病院のこと
・予防接種? 任意接種のワクチンも受けるべき?
・予防接種? 同時摂取は副反応が心配です
・予防接種? インフルエンザワクチンは効果あるの?
・どういうときに病院に行くべき?
・病院ではどんなことを伝えたらいい?
・入院するときの注意事項って!?


おまけ よくある疑問の一問一答♪


どうでしょう?気になる項目はありましたか。
ところで、こうしたハウツー本は本屋にいくとよく見かけるのですが、どの本が良いのか選ぶときにどらねこが参考にしている方法を一つ書いておきますね。
文章に脚注をつけて引用元を示していたり、本のおしまいに参考文献リストを明示しているものは信頼性が高いと推測できます。参考文献も論文や専門誌をひいたものであればなおよしです。大切な子どもの健康に直結する内容ですから、何にも根拠をしめしていない本を信用するのはちょっとコワイですからね。











■書かれている内容についてちょっと思った事など(蛇足)
こういった本では説明文をやたらと細かいところまで拘ったものにしてしまえば雰囲気を損なう事にもなりかねません。なので、以下に書くものはどらねこが個人的に気になったというだけの事です。この本の内容にいちゃもんをつけるとかそういうものではありません。

p28-31より
Q:母乳に食べた物の味が出る?
A:母乳の味は、それほど変わりません。偏食しないで普通の食事を!


このQ&Aはどらもそうだろうと考えますし、異論もありません。じゃあ何が気になったかというと、ここでいう味と密接に関わるであろう「匂い(臭い)」についてです。赤ちゃんが母乳を口にしたとき味を感じるわけですが、それ以外にも温度や匂いなどを感じ取ります。これら要素は味と同じように赤ちゃんにとって大事な感覚だと思います。おなかすいたぁ〜と母親からうぐうぐと吸啜する状況を考えれば温度はほぼ変わらないと考えられますので、気になるのは匂いということになります。この匂いについては、特に脂溶性成分に於いて食べた物の匂いが母乳に移行しやすいだろうと予測*1されます。香辛料が多い食品を食べた後やニンニクを食べた後などでは匂いが母乳に移行しやすいと思います。
ところで、結論は変わるのかというとそれは微妙で、「風味は変わるかも知れないけれどそれは味覚や嗅覚を成長させるよい切っ掛けになるので気にしない。偏食しないで普通の食事を!」という感じでしょうか。味だけ考えれば書いてある通りなのはいうまでもないのですけどね。

p92-94より
Q:かぜをひいたときにできることは?
よく、お母さんが「私が子どもに寒い思いをさせたから……」と来院されますが、かぜの原因は80〜90%がウイルス、10〜20%が細菌やマイコプラズマなどの病原微生物です。だからいくら寒い思いをさせたとしても、病原微生物がいなければかぜをひきません。
<中略>
かぜをひきおこす病原微生物の種類は数百種類もあります。ウイルスだけでも数十から数百の型があるので、かぜの原因を完全に特定することはほぼ不可能でしょう。そのため、「かぜに特効薬はない」「かぜに効くワクチンを開発したらノーベル賞もの」とまで言われているのですね。
では、かぜのときに病院でもらう薬はなんでしょうか。それは対症療法の薬です。対症療法というのは、原因を解消するのではなく、症状だけをやわらげる治療のこと。だから熱がつらかったら解熱剤、鼻水なら抗ヒスタミン剤、せきなら鎮咳剤を使うのです。市販のいわゆる「かぜ薬」には、それらの成分がミックスされています。


書いてある内容に異論があるという事ではなく、本書をよく読んだ方に「あれっ?」と思わせる記述であるように感じました。
本書のp90にも「またウイルス性の胃腸炎に抗生剤は効きませんから」という記述があるように、感染症の知識をある程度持っている方ではウイルスに抗菌薬は効果がないというのはよく知られている話です。それを踏まえて読むと、じゃあ「かぜの10〜20%は細菌やマイコプラズマ」なら、かぜのときでも対症療法の薬だけでるとは限らないじゃないの? 「抗生物質でることもあるんじゃね?」と思ってしまいそうです。
これは勝手な憶測なのですが、共有できていると考える前提条件に医師である筆者と読者(どらねこ)間に差があるためと考えます。
「かぜ(風邪症候群)」というものは「原因が特定されていないものを指す」という合意ができているものとして筆者は話を進めているように見えました。つまり、風邪かなと思い診察した結果、細菌性のもの(例えばβ溶血性連鎖球菌とか)を疑い、培養したらやっぱりそうだった、というケースはその時点で風邪ではなく溶血性連鎖球菌感染症になるから風邪には抗菌薬は処方されないという、というロジックです。
よって風邪には対症療法の薬と、なるわけですね。この文章だけでは、細菌やマイコプラズマが原因の風邪でも抗菌薬は効かないの?という誤解をしてしまう人がでる可能性はあるのかな、と思ってしまいました。(心配しすぎですね)


以上、ダレ得?重箱の隅つつきでした。

*1:これは香気性成分の多くは極性のないものが多い事と関係する