野菜ジュースは栄養素の吸収が良いから健康的なの?という話についてメンドクサく考えてみる

 どらの頭の中で考えている事をちょっと提示してみますよ、という記事です。
 最近はお仕事として記事を書いてばかりでしたので、それ未満のお話をツイッターで流したりしてましたが、残しておくのも良いなと思ったので久々コチラに書きます。ちゃんとした結論はないです。


■前提

 野菜ジュースは食物繊維など大事な固形成分が取り除かれたり、加熱でビタミンとかが壊れるから栄養分が残ってない、野菜のかわりになんかならない。そんな噂(?)や情報がある程度広く共有されている。そんな話がある事自体が前提。
 それを踏まえたメーカーからのカウンターの記事とかもある。
 どらは、ビタミン等の栄養素の補給はできるし、有形成分を取り除いていないタイプであれば、その他の野菜由来成分もとれるだろうね、というスタンスで著書で言及していたりする。


■野菜ジュースは栄養素を効率良く摂れるのか

 最近の野菜ジュースメーカーの広告で、野菜ジュースは加熱と破砕操作により、栄養素の消化吸収を阻害する細胞壁を壊してるから、栄養素の吸収効率はむしろよい。カロテノイドの吸収は生野菜より良いというデータがあるぞ、と謳っているのを目にした。(職能団体の機関誌の広告で)
 なるほど、生の野菜は消化吸収が悪いのが一般的だ。排泄物を観察すると野菜の一部が形を保ったまま排出されることはよくあるが、人によってはその割合が多かったりする。これらは当然、十分に栄養素が吸収されているとはいえないだろう。一理ある。
 加熱により変性し、効力を失う割合よりも、吸収率が高くなり体内で利用される割合が上回るのであれば野菜ジュースは効率良く栄養を摂れる食品であるといえるかもしれない。全部が全部というのは当然ないが、栄養素によってはそうだといえるのだろう。


■野菜はなんのためにとってるのか?

 さて、ここで考えなければならないことがある。私たちは野菜をなんのために摂っているのかだ。美味しいから食べている、いいですね。食物繊維が必要かな・・・ありです。健康のためです、まあそんな気持ちですよね。うん、いろいろあります。
 さて、健康のためにと考えると、死亡率や循環器疾患の指標に着目した疫学調査では、野菜ジュースなど、植物性食品を液体として摂取した群ではそれら指標ではどちらかというと悪い影響が示唆されるような報告が多い、という結果が出てるようだ。
 じゃあ、野菜ジュースは健康に良くないの?健康目的に飲むのは奨められないのかしら?
 こうした相関が示され、因果も疑われるような食品とどうつきあうのか、で答えは変わると思うのだけど、それをどう判断したら良いのか、それはとても難しい問題だと思う。
 栄養素を効率的に摂れるかどうかもそうだし、食品の摂取頻度と健康指標の関係をみた疫学調査の結果を踏まえて行動にどう採り入れるのかというのは両者とも科学的なお話だからだ。科学的根拠に基づいて栄養を考えているから、これらの情報を受け取った人は行動にどう反映させたら良いか戸惑ってしまうのではないか?(戸惑うのかどうかは不明だが)


■効率アップは良いの悪いの?

 栄養素の吸収についてもう少し考えてみよう。例えば糖質が効率良く吸収されるとしたらどうだろう。糖質が効率良く吸収されすぎることで体に負荷がかかり、糖尿病などの病気のリスク要因とされていることが最近は良く知られており、一般の人でもGIやグリセミックロードを気にして食事をしているぐらいだ。果物や野菜を飲み物としてとることの健康への悪影響というのはこの部分が関係しているとしたらどうだろう? 吸収が良くなること自体がデメリットである・・・と、いえるかもしれない。
 では、次のケースはどうだろう。普段からあまりおかずを食べていないビタミン欠乏のリスクが高い人がいたとして、その人がご飯を食べるときに野菜ジュースを飲むとする。ビタミン不足が解消されるメリットはデメリットを相殺するだろうか?


■メリット、デメリットどうとらえるか?

 野菜ジュースが健康に資さないかもしれない、その理由は色々想像できるが、その理由が次のようなものだったとしたら、どうだろう?
 野菜ジュースを生活に採り入れている人は食事時間の確保や準備に時間がかけられず野菜不足を実感している。それを補うために、ちょっとした仕事の合間などに野菜ジュースを単独で飲んでおり、そのため、糖質の多い飲み物が吸収されやすい形で提供されることになる。
 これが正解(?)だとしたら、食事の時に一緒に飲んだり、カレーなどのコクだしという感じで料理に使うのは問題ない飲み方ということになる。道具でもなんでもそうだが使い方次第で毒にも薬にもなる、というのはいろんな処にある。
 良い物、悪い物という分類で考えがちだが、そうした単純な二分法で考えるのには向かない問題はあって、食事と健康の話はその典型ではないだろうか?


■不足しているって分かるの?

 私は糖尿病じゃ無いしカロテノイドが不足しているから野菜ジュースを飲もう!そう妥当性を判断できる人はどれぐらいいるだろうか?そもそも、自分の体に何が過剰で何が不足しているのか、正確な処をしるのはなかなかに難しい。
 商品を売ってナンボの食品メーカーの立場はわかるけど、こうした一般の人が判断するのが難しいような情報を提示して商品の優良性を謳うというのは誠実なのかな、と思ってしまう。これが今回の記事の論点の一つだ。 


■栄養士の出番では?

 そうした判断のできる職種として「栄養士」という名前が挙がって欲しい、そしてそうした評価ができる栄養士でありたいと、どらは思ってる。
 栄養士はこうした食べものの良い悪いという話とどう向き合うべきなのか、とか最近は色々考えている。もし良かったらこのような問題をどらと一緒に考えて欲しいなぁと思う。栄養士でもそうでない人も、興味を持ってくれたら良いなぁと思います。