小学生が歩かないのはゲームのせいなの?

今回は小学生の一日当たりの歩数が減ったと謂う報告とその報道を見て思ったことを書いてみます。タイトルは一応つけただけで、調査結果から謂えることと謂えない事みたいなお話しです。


■小学生の歩数減少と報道

YOMIURI ONLINE(2012年2月9日14時31分 読売新聞)より
歩かない小学生、歩数3割減…ゲーム機の影響?
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120209-OYT1T00708.htm
 東京都教委が都内の子供を対象に初の大規模な歩数調査を実施したところ、小学生は1日平均1万1382歩だったことが9日分かった。
 1979年には1万7120歩という大学の研究もあり、30年間で3割以上減少した。中学、高校になるとさらに歩数は減る傾向にあり、専門家は「ゲーム機などの影響で放課後に遊ぶ時間が減ったのでは」と分析する。

以下略

この記事について、はてなブックマークのブックマークコメント欄に短絡的との指摘が並んでおりました。いろいろな要素が絡まって歩数の低下につながっているだろうに、主因かどうかも定かではない要因の一つだけを名前をあげて採り上げるのはいかがなものかとどらねこも思いました。まさに結論ありきみたいな。憶測になりますが、ゲームが問題では?と指摘しておけば喜ぶような読者層が多いのでそう謂った見出しを選ぶようなインセンティブが働く状況なのでしょう。

この報道の元となった調査結果はリンク先で概要を見ることができます。当該ページにはゲームが関係している事をにおわす記述は皆無です。

「統一体力テスト及び広域歩数調査」の結果について
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2012/02/60m29100.htm



■ゲームが一番の問題?
子供が歩く機会が少なくなっているのは事実だとは思いますし、個々の原因はわからないものの、生活時間の中で歩く必要性が無い、もしくは必要性が少ない日課が多くなっているために歩数が減っていると謂うデータとしてあらわれているのだと思います。この中には子供に歩く事へのインセンティブを与える事で改善可能な問題と解決が難しい社会的な要因や環境要因などがあると思います。もしかするとゲームは歩く事へのインセンティブよりも強い魅力を持った日常娯楽になっている可能性はあります。しかし、それが記事に一つだけ名指しで挙げる程のものなのでしょうか?
どらねこは参考になりそうなデータとしてベネッセの行った『第2回子ども生活実態基本調査』を選び妥当性*1について推理してみました。


■調べて推測
第2回子ども生活実態基本調査報告書は次のベネッセウェブサイトで閲覧することができます。→http://benesse.jp/berd/center/open/report/kodomoseikatu_data/2009/index.html

その中にある『第2章毎日の生活の様子』よりテレビゲームで遊ぶ時間について調べたデータを見てみましょう。

【第2回子ども生活実態基本調査報告書:p76 図2-1-26 より】

どうやら子供のゲーム時間は増えている*2ようで、小学生では1時間を超えております。これだけの時間ゲームをやっているのなら外遊びがおろそかになり歩かなくなったのでは?などと考えてしまいたくなりますね。

ところで元の調査報告である平成23年度「広域歩数調査」結果(概要)を見ると調査結果では男子よりも女子は少ない事が書かれております。
【結果の概要:1調査の結果より】

結果では小学生の男女差が大きく一日あたり2000歩以上男子が上回っている事がわかります。もしゲームが子供の運動習慣を奪う主因であるとしたら女子のゲーム時間は男子を上回る*3のではないでしょうか?ベネッセの調査では男女別のゲーム時間も示しております。

【第2回子ども生活実態基本調査報告書:p76 図2-1-27 より】

女子のゲーム時間は増加しているものの、男子に比べるといまだ半分ほどの時間であることがわかります。ゲームで遊ぶ時間が少ない女子の方が一日の歩数が少ないのは読売の記事から受ける印象から考えると不思議ですよね?どうやら女子の運動時間が少ないのには他にも理由がありそうです。女子と男子の生活活動の違いを見るためにふだん何を行っているか?と謂う質問への回答をみてみましょう。

【第2回子ども生活実態基本調査報告書:p73 ふだんすること より】

この結果を見る限り女子児童は男子児童に比べ、マンガや雑誌以外の本をよく読み、家庭のお手伝いをする傾向にあるようです。ここまで見てきたことから推測(憶測)すると、男子児童がゲームや外遊びをする代わりに女子児童では本を読んだり家の手伝いをする傾向にあるように読むこともできそうです。


■こんな解釈もあるよ
表面にあらわれる数値や印象で判断すると的外れな推測になる事が良くありますので気をつけたいものですね。ここまで見てきた要素だけで推測したどらねこの解釈を書いてみます。

小学生の歩数が少ないと指摘されるが、女子の歩数が男子の歩数に比べ20%ほど少ない事がまず課題としてあげられる事でしょう。小学生女子と男子のふだんの生活内容を比べたところ、自由時間については女子の場合、男子に比べ外遊びとゲームの時間が少なく、読書や余暇の時間にあてる傾向が見られた。したがって、女子の歩数を増やすためには読書とお手伝いの時間を減らし外遊びの時間を増やすことが必要かも知れない。

どうでしょう?受け入れられがたい暴論ではないでしょうか?やりたいことをやめてもらい、やらせたいことをやってもらうと謂うのはなんだか子供の自由を奪うような考えに思えませんか?勿論、問題行動への対処は大切ですけれどね。
そもそも、あれも大事これも大事と欲張り過ぎても体はついてこないですよ?受験対策に運動習慣、お手伝いにボランティアなどなど全部が全部できるもんじゃないですよね?犯罪が怖いから女の子を外で遊ばせるのは・・・なんて考える気持ちもわからないでもないですしね。特定集団やその年代だけの問題であるかのように突きつけるばかりでなく、社会全体で取り組むことを忘れちゃイケナイと思いますよ。本当に大事な問題だったらね。

*1:第一回目調査が2004年であるベネッセの調査から何かがはっきり謂えるわけではありませんが、調査の趣旨を理解すれば何らかの傾向を見ることは可能であると思います。

*2:どらねこは小学生の頃1日3時間ぐらいやっていたと思われる

*3:本気でそう思っているわけではありません。男女の日常生活活動のそれぞれの要素は1:1で交換されるようなものではありませんし、男女間で対応しているものでもありません。しかしながら女子の歩数が少ないのはなぜかという議論をすっとばしてゲームが・・・と謂うのであれば無視できない問題でしょう。