普段の食事でたんぱく質は不足しがちなの?

「栄養学のメモと活用」というブログの「そういえば過去にもやった、たんぱく質の摂取について」という記事を読んだ。


たんぱく質は牛丼2杯では不足する?
大まかすぎるかも知れませんが、内容を要約すると、牛丼並盛り三杯たべてもようやくたんぱく質の推奨量程度(60g/day)なのだから、不足に気をつけなければならないのか?という事について検討を行うというお話しでした。
そして、筆者は食事摂取基準や国民健康栄養調査の結果をもとに、検証を行っております。
そこで推察された内容は、国民健康栄養調査の結果*1も平均値や中央値を見れば十分に満たしているようにみえるが、横に示された標準偏差がとても大きいため、バラツキを考えるとだいたい16%ぐらいのひとが推定平均必要量を満たしていないのではないか、と謂うものでした。
なるほど、標準偏差とその取り扱いを考えると妥当な推察だと思います。日本人のたんぱく質の摂取量について、示されたデータは確かにたくさん出回っていないので、この資料を使うのは良いと思うのですが、どらねこには少し気になる点があります。
それは、国民健康栄養調査は個々人の習慣的なたんぱく質摂取量を調査したものではない、と謂う事です。つまり国民健康栄養調査の、食事調査はある1日だけを対象として行うものだからです。


■1日だけでは個人の習慣的な栄養素摂取は推定できない
ちょっと専門的になりますが、ちょこっと解説します。
個人の食事摂取量は体調や気分、イベント、季節などによる変動があることが知られております。例えば、ビタミンCを考えてみましょう。果物などにはビタミンCを多く含むものがけっこうありますが、果物の食べ方を考えると、毎日食べるよりも、ある時期にまとめて食べるという人の方が多いことが知られております。旬の時期に安いからとか、週末の楽しみだとか、誰かから頂いたからなど、ある1日だけを測定してもその人の普段の摂取量は推定することはなかなか困難です。
そのような栄養素は実はけっこうあって、ビタミンほどではないにしても、たんぱく質なども焼き肉屋や食べ放題などに行く日には、普段の2倍以上もたんぱく質を食べる人もいることでしょう。
栄養素によっては1日毎の変動幅はとても大きいものが存在する*2という事は栄養調査を行う上では忘れてはならない要素なのです。
こうした栄養素については、1日だけの食事調査結果では個人の日常的な栄養摂取内容を評価する事はできないという事になるのですが、サンプルサイズの大きい集団の調査であり、調査精度が高いとすれば平均値については日本人の平均摂取量を推定する上でとても参考になるとは謂えるでしょう。沢山ならべて示されたデータでもそこから謂える事は調査の性格によって変わってくるのですね。
さて、肝心の標準偏差から考えると日本人にはたんぱく質不足の人が16%ほど居るのか?というはなしですが、1日の調査だからデータのバラツキは大きいのが当然であると予想されるため、個人の平均的な日常摂取量の分布を推測するのは妥当ではなさそうだ、と謂う事です。


■じゃあ実際はどうなのよ
では、実際のたんぱく質摂取量は不足が心配されるの?そうでないの?という話になりますが、どらねこはさほど心配ないと考えております。
このデータは栄養士を対象としたものですから、平均的な日本人を代表としたデータで無いのが欠点ですが、栄養士も自分の食事はけっこういい加減なところがありますし、特別極端な食事はしていないので、参考にはなるでしょう。

見事に十分に食べている人ばかりである事が1ヶ月の傾向からみてとれます。極端な食事だから・・・と心配のある人は、牛乳や卵など安価で栄養価の高い食べものを普段の食生活に採り入れて下さればと思います。それだけでたんぱく質については大丈夫になる人がほとんどの事でしょう。
こうしたデータがどんどん集まれば、栄養教育にも活用できますから調査の協力を依頼された場合などには是非協力して欲しいと思います。

*1:最近の国民健康栄養調査ではエネルギー源となる栄養素については過小申告傾向が無視できないほど大きくなってきており、たんぱく質摂取量はこれよりも多いものと推察される

*2:参考記事→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20101108/1289201189