新生児へのビタミンK2投与関連の覚え書き

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■資料等
特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症の特徴について、全国調査成績を分析した結果*1、発症は女児1に対し、男児2.02であり、男性に多い。季節は夏期に多い。89.6%が母乳栄養で、混合6.3%、人工栄養2.9%という割合であった。発症者の予後は死亡13.6%、後遺症あり40.4%、全治が確認された例は46.0%であった。ビタミンK投与の有無では、特発症例129のうち、未投与は16例で不明が3例であった。

1999〜2004年で合計71例のK欠乏性出血症が報告されているが、そのうち53例はビタミンK投与歴があった*2

予後を考えれば、予防できるのならなるべく予防すべき疾患であると思う。
1999-2004では、発症例のうち、投与歴のあるものの割合が高かったが、投与ルーチンを導入する医療機関が増え、新生児へのビタミンK投与が当然のように行われるようになってきたことが関連しているのでは?と考える。(1980年代後半では70〜80%程度の投与率だったようだが1990年代以降では90%を超えていると考えられる※一次資料に当たれず※)

母里らの報告によれば、西高東低の発症割合であった*3。これは当時の一世帯あたりの納豆購入金額が低い地域との相関がみられ、納豆摂取量との関連性も考えられた。納豆を食べない欧米での発症が少ないが、これは乳製品摂取量が影響しているのかも知れない*4。この文献を読むと、乳児ビタミンK欠乏性出血症には、肝機能障害・・・とりわけ胆汁うっ滞も関与する事が示唆されている。

文献※3より


食事摂取基準*5では乳児のビタミンK目安量策定に当たり、K2投与が前提となっている。

p135
臨床領域におけるビタミンK経口投与が行われることを前提

■考察
母乳栄養を特別に推進する自然育児○○の会の中には、牛乳有害論に傾倒されている方も見られるけど、それってビタミンKの観点から考えても危険な事だよね。母乳育児を推進する人こそ、牛乳などの乳製品を忌避すべきじゃあないと思う。
そして、もう一つ。ビタミンKは骨形成にも関わる成分だから、頭蓋内出血予防の観点だけで語られるのはちょっと違うんじゃないかな。キチンとした骨をつくる為にもビタミンKは必要なんだ。必須成分の不足を補うんだよ、というアプローチもありなのかな。

*1:塙嘉之ら. 第3回乳児VK欠乏性出血症全国調査成績. 昭和63年度厚生省心身障害研究 新生児管理における諸問題の総合的研究:28-34

*2:白幡聡ら 乳児ビタミンK 欠乏性出血症全国調査成績(1999〜2004年).日産婦新生児血会誌 2006; 16:S55-56

*3:母里ら. 乳児ビタミンK欠乏性出血症の疫学. わが国における乳児の脳血管疾患による死亡の地域別年次推移に関する分析昭和63年度厚生省心身障害研究 新生児管理における諸問題の総合的研究:54

*4:谷吉樹. ビタミン研究のブレークスルー−発見から最新の研究まで−. 日本ビタミン学会 2002; 1:91

*5:厚生労働省 日本人の食事摂取基準2010年版 第一出版