キャベツ湿布に個人的に思うコト

表現に乱暴なところもありますので、不快になるおそれもありますので、どうぞ読む前にご注意願います。
■初めての出会い
キャベツ湿布に初めてであったのは、妻が2度目の出産を終え、病院から帰宅した後のコトだった。
母乳育児をするんだ!と、張り切っていた妻が乳房の痛みを訴えた。すると、そこはパンパンに腫れていて熱を持っていた。
発赤、腫脹、発熱、疼痛・・・などと考えたかどうかは覚えてないけど、乳腺炎かな、と思った。
妻は既に病院からオハナシを聞いていたらしく、夜であったが電話を掛け事情を話すと、そのまま車に乗って病院へ行き、助産師さんから処置を受けてきた。
詰まっている乳腺から母乳を射出させるマッサージを受け、その後はいたむようなら乳房を冷やしておいてくれという話だ。それ以降も良くならなければ、抗菌剤が処方されるみたいだ。
感染による炎症であるからには、感染源となる異物と、細菌等の微生物が存在するはずで、乳腺開通は異物の除去に当たるのだろう。
此処まではよい!
その後、妻が冷蔵庫から取り出したのはキャベツの葉っぱ!それはキャベツ湿布という乳腺炎への対処法らしいのだ。本当(?)は湯がいたキャベツを冷やし、患部に貼り付けるらしいのだが、妻の場合はキャベツを湯がかずにそのまま貼り付けていた。
その時どらねこは、意味不明すぎる!と、思っていたが、夜遅くて眠いこともあり、そのままスルーしてこの件は終了になったような記憶がある。

■キャベツ湿布再び
良いおっぱいを出すために脂ぎったモノはほどほどに・・・といった指導は有ったみたいだけど、そんなに厳しい話も無く、6ヵ月ほど母乳を続け、あとは調製粉乳さんを利用しながら、どら息子2号は離乳を終えた。
2度目に出会ったのは、息子が通うマクロビ保育園であった。
ある時、子どもを迎えに行くと、具合が悪いのか横になっている園児が居た。彼は頭にキャベツと包帯を巻いていた。保育士に聞くと、キャベツ湿布で、熱を冷ます効果を有するらしい。
どうやら、当該保育園では発熱時の応急処置の定番らしい。他にも怪我をしたときには里芋をすり下ろしたモノを小麦粉などに混ぜ込みガーゼに塗り込みあてがったり、梅エキスがインフルエンザ対策だったりと民間療法のオンパレードだった。
後で調べて分かったのだが、これらの民間療法は『お手当法』と呼ばれるものらしく、所謂おばあちゃんの知恵袋的なモノのようだ。しかしながら、情報を引っ張ってくるときに一緒に引っ掛かるコトバに気になるモノが多かった。それは『食養』である。今現在、食養と呼ばれて実施されているモノの多くが、玄米菜食であり、マクロビは食養の一派と謂えるものである。マクロビ保育園がお手当法と親和性があっても全く不思議じゃない。

■ここでちょっと解説もどき
そんなに詳しくはないが一応の説明をする。お手当法ではキャベツ湿布の考え方の元であろう、青菜パスターというものがある。
恐らくなのだが、このパスターというのは、広い意味での軟膏に分類される泥膏(パスタ)剤からとられたモノだろうと思う。まさしく、そのような使い方をされる。
青菜パスターはキャベツやレタス、小松菜など青もの系の野菜を用いるお手当法だ。材料は青菜、じゃがいも、小麦粉などで、刻んですり潰した青菜をすり下ろしたジャガ芋と小麦粉と合わせて棍ねあわせ、ガーゼに伸ばし、塗布するものだ。
なんで、青菜なのかと謂うと、彼らの考え方では、青菜の有するアルカリ性が炎症や発熱などの酸化を冷やしたりする効果があるとされているからだ。青菜のアルカリ性って一体何?という突っ込みはされないのだろうか?
その簡易版として青菜の貼り付け法みたいなものがあって、それがキャベツ湿布だ。ねんざやちょっとした傷にも使えるとされている。
このようなお手当法がいろいろあり、その考え方の元となっているのが、植物や食べ物が持つ陰性・陽性というわけで、科学的な根拠があるわけじゃない。
個人的な感想を謂わせてもらうと、手間が掛かる割には効果が不明確で、現代ではそれを上回る効果が期待できる医薬品を簡単に手に入れることが可能である。わざわざそのようなものを持ち出すことは単なる自己満足に過ぎないだろう。

■出所が聞こえてきた
これらお手当法はどこから広まってきたのだろうか。以前も少しふれたが、保育園から遠くない場所にある助産院から広まったモノらしいのだ。当該助産院では自然な出産、育児を推進しており、真弓定夫氏を招いての講演会を企画するほどなのだ。
自然育児を推奨する団体や自然育児の親の会などは、なるべく医療的な処置を子どもに提供しない事を良しとする風潮がある。そして、そのような団体は開業助産師と連携をとっていたり、友好的であったりする場合が多いようだ。試しに、『自然育児・助産院』ググると、いっぱい引っ掛かってくる。そして、ホメオパシーや予防接種不要と謂った話題を目にすることが出来るだろう。
このように、開業助産院には代替療法の親和性が高い施設を簡単に見つけることが出来る。
開業でなくても、おっぱいのトラブルや母乳の質などについて、根拠のない玄米菜食が奨められたり、玄米菜食とはいかないまでも、アブラモノを控え、魚は白身魚にというような指導がなされたりするのだ。施設でもキャベツ湿布を奨めるスタッフが居たりするのはハッキリ言ってどうかと思う。その情報源が心配なのだよね。誰かに良いと教えられたからそのまま実行する、奨めるというのは無責任だと思う。善意が有れば良いってモンじゃないんだ。妊婦から、何でキャベツを奨めるのですか?と聞かれたら納得の出来る説明を返せるのだろうか?『キャベツであること』の理由を説明できないのなら、使うべきでない。科学や効果に照らし合わせて納得できないモノでも利用してしまう事は、ホメオパシーやマクロビを無批判に受け入れる素地となっているのではないか?
あと、どらねこが心配なのは、病院などでの出産後にこのキャベツ湿布を採り入れた事のある人では、代替療法に対するハードルが下がってしまうんじゃないか、というもの。初めて自然育児のヒトと接したとき、いきなりアヤシゲなキャベツ湿布登場したら引くと思うけど、病院でお世話になっていたら警戒しないかもね。キャベツで慣れたら、次は青菜パスター、豆腐パスター、里芋パスターってエスカレートしちゃうかも知れない。そうやって今でも実施しているヒトが、マクロビ保育園にはいっぱい居る。先日も息子がやられてて、やめてくれと話に行ったばかりだ。善意だから凄く厄介なんだよね。
あと、母乳育児に拘るあまり、必要性が高そうな場面でも抗菌剤を忌避するヒトが居るんじゃないかと心配になる。キャベツで冷やしてる場合じゃないと思うんだ。出産は神秘的に見えるかも知れないけど、神秘的な療法に親和的になる必要など無い。助産師には医療関係者としての標準的な処置を期待したい。妊産婦がホメオパシーなど代替療法を求めてきたら、ハッキリと突っぱねるぐらいでいて欲しい。
以上、色々毒吐いたけど、そんな風に思ってる。だって、周産期ケアのプロだから・・・それだけ立派なお仕事で重要な国家資格だと思うから。
(私がお世話になった助産師さんはキャベツ湿布の件を除けば、ほんとにもう、すっごくお世話になった。代替療法なんて採り入れなくても十分素晴らしい仕事だと思う。散々こんな事いってからでなんだけど、誰が悪いという話じゃなくて、その行為一つ一つがどのようなモノであるのか、考える必要があるのだと思う。そういう風潮を作り出すことがだいじ。K2の件で助産師に悪い印象をもった方が増えたのだとすれば、それは万人にとって良いことではないでしょうね。)



■おまけ
過去記事紹介やコメント欄などから役立ちそうな話を抜き出してみました。

助産院の食事その後】
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100323/1269319246

乳腺炎と食事との関連性は私も調べた範囲では見つけることが出来ませんでした。
ですので、これは違うという断定もできないというのが本当のところですが、それを肯定する証拠も見つからないのです。
アブラ物を食べれば、血液がドロドロになって乳腺がつまるという説明は直感的で、なるほど、と納得されやすいので、そのような理解が広まったのではないか、と私は考えております。
実際のところ、食事内容により母乳成分はある程度、変化するのですが、アブラについては、食べたアブラの種類により成分の種類が変化するのですが、母乳に含まれるアブラの総量は余り変わらない事が知られております。
これでも詰まりやすくなるというのは、イマイチ納得できないのが今現在の私の感想です。

ふぃっしゅさんのご意見

2.「母乳がどろっとしているから脂っこいものを食べている」
母乳の出始めと最後の方では、濃度が違うことが分かっています。
「母親の食事は、母乳中の脂肪の量には影響を与えないが、構成成分には変化をもたらす」と言われています。
また、母乳中の脂肪含有量と組成に影響する因子として、「母親が脂肪の少ない食事をとっていると内因性の中鎖脂肪酸合成が増加する。食事からのコレステロール摂取量とは関係ない」とあります。
3.「乳質はおいしいかまずいかとか湿疹やおむつかぶれなどに影響する」
「乳質」という表現自体、何を意味しているか統一した考えはありませんね。「おいしいまずい」が何を意味しているか、乳児がどのように感じているか検証されていません。


【母子の健康と母乳育児−母乳育児を考える−?】
http://blogs.dion.ne.jp/doramao/archives/cat_294609-1.html

母乳マッサージについてのふぃっしゅさんの意見

マッサージは不要と思います。お母さんたちが「出ていない」と不安になってマッサージを探す1ヶ月前後には、時期的に赤ちゃんも集中して吸うようになったり、おっぱいも赤ちゃんが吸うのに柔らかい良い状態になっているのですが、「マッサージに行ったから出るようになった」と思い込みやすいのでしょう。
また、自分ではおっぱいをうまく搾れなくても、助産師ならピューっと飛ばすほど出すことができますから、それをみて「出ていたんだ」という自信につながっているということもあるでしょう。
マッサージに関しては、助産師界でも議論はずっとありました。「してあげるマッサージは不要」というのが、主流になりつつありますね。でも、入院中に何もしないと「何もケアーをしていない」ように感じたりしてしまいやすので、マッサージを止められない助産師もいると思います。すれば「マッサージのおかげで出るようになりました」と感謝されることも多いですしね。でも、マッサージで出るようになったのではなく、時期的に赤ちゃんが母乳を必要とするから出るようになったのであって(これが、腸の変化との関係と思います)、手は出さなくても出るのです。
ただし、乳腺炎やうつ乳、乳頭のトラブル時には、適切なマッサージが必要ですね。それによって飲みやすくなり「出る」ようになります。
だいたい、週に一回ぐらいのマッサージで、劇的に分泌量が増えるはずはないと思います。