【マクロビとホメオパシー】化学物質

マクロビやホメオパシーを実践されている方の共通点として、『天然・自然は体に良く、合成、人工は体に悪い』と考えている。というものがあります。

■なんとなくの不安から
マクロビの場合、元禄時代(?)の日本人が食べていた(と彼らが考える)食事が理想の食事とされております。当時は工場でつくられた加工食品は無く、農作物に合成肥料を与えることなく、食品添加物も殆ど無かった事から、そこから離れてしまった現代の食事には問題があるのだ、という理屈になるのでしょう。
マクロビ側の理屈はそうなのですが、なぜそのような考えに惹かれてしまうのでしょう。
どらねこを含め多くの方は、科学の発達とそれによる技術の向上の恩恵に与り生活をしているのですが、その発展発達の途上に公害や薬害問題、自然破壊、環境汚染などの問題が注目されるようになりました。典型的な例として、水俣病サリドマイド事件、ヒ素ミルクなどがあげられるでしょう。こららの事件を切っ掛けとして漠然とした後ろめたさを感じていた方達はその不安が現実的のものとなったとしても不思議はありません。その印象があまりに強すぎたのか、化学物質と呼ばれるものに対して、神経質になる方は未だ多いような印象を持ちます。それが極端に顕れた例としては、カウンターカルチャーに端を発するニューエイジ運動*1などがあるんじゃないかと思います。
日本ではそこまで大きな運動にはならなかったようですが、漠然とした不安感はやっぱりあって、それが商売のタネとして色々な場面で利用されていると思います。テレビのCMでは『自然だから安心』、『天然の添加物を使用しているので体に優しい』などと謳い、商品が宣伝されている様子を見ることが出来ます。商品のパッケージにも香料不使用であるとか、合成着色料不使用を大きな文字で記してあります。これは表記により差別化が行われ、特定の購買層にアピールできる事を意味しております。実際には天然だから安全で、合成だから危険というように単純に分けられるものでは無いのですが、未だそのような誤解があり、社会に根付いてしまったというのが現実なのでしょう。
一般の方がこのような認識を持っていたとしてもそれが添加物忌避・薬物忌避のような直接危険な考え方と結びつくわけではないと思います。では、どのような時に危険な考え方に接近してしまうのでしょうか。
色々な場合があると思いますが、マクロビやホメオパシーとの接近は、自分や身内の体調不良や難治性の病気が切っ掛けになると思うのです。元気なときには漠然とした不安であったものが、病気になった場合もしかしたら・・・と現実的な問題として浮かび上がってくることがあるとおもうのです。

■架空の事例から
例:Aさんは3歳の子どもを持つ母親です。あるとき歯医者の待合室においてある雑誌を何気なく開いておりました。

【軒昂爽快】保存料や合成着色料は体に悪いですよ、赤ちゃんに悪影響を与えたりします。妊娠中のお母さんは注意!シャンプーに含まれる界面活性剤は皮膚からしみこんで子宮に到達して胎児に影響を与えます。子どものアトピーに悩むお母さん化学物質や添加物に注意です!!このような化学物質が原因であるアトピー性皮膚炎に現代の医者は同じ化学物質のステロイド剤を塗るよう勧めるのです。これが何を意味するのか?賢明な読者であればもうお解りかと思います。

その時はふ〜ん、などと思ってスルーしたAさん。ところが、そのあと子どもがアトピー性皮膚炎を患ってしまいました。Aさんはどうしてこんな病気になってしまったの?大切に育てているのに・・・と悩みました。ある日、以前に見た雑誌に書かれていた内容がふと頭をよぎりました。
『そういえば、赤ちゃんが体にいたとき添加物が入った普通のシャンプーをつかっていたっけ・・・もしかして。あ、母乳をあげているとき、スナック菓子も食べてていたかも、もしかしてアレが・・・』

こうして不安が膨れあがった親御さんは、病院で処方された塗り薬を確認しました。すると、ステロイド薬であることがわかります。ステロイドは危険なクスリだって書いてあったよね・・・こうしてはいられないと情報収集を行ったところ、今まで子どもに蓄積したと考えられる化学物質を解毒しアトピーが治るとふれこむ代替療法を見つけました。それらが指摘する予防接種や添加物に対する問題点にAさんは共感できる物を感じました。「・・・よし、子どものために試してみよう」

上記はフィクションですが、何となくありそうな感じには仕上がったのではないでしょうか。実際にマクロビであれば日本人本来の自然な食事で、ホメオパシーであれば症状に適したレメディによる自然治癒力アトピーが良くなると主張するでしょう。両者とも化学物質により様々な病気が起こると不安を煽り、化学物質により引き起こされた病気を治すと主張します。早い話、文明社会が不健康を作り出すという考え方に基づく不安商売なんですね。
この共通点がマクロビとホメオパシーの利用者層が重なる事に関係しているのではないか、と考えております。

自然は安全で安心、化学物質は危険だという何となく多くの方が抱いているイメージを変えていかないとこの観点から代替療法に入ってしまう方を無くすことは出来ないと思います。道は遠いようです。

*1:物質文明、科学至上主義から脱却し精神的世界を尊重し、自然回帰を・・・というような考え方