マクロビと呪術

このエントリはマクロビとホメオパシー−共通点や類似点−の『呪術的側面を持つ』項目です。

どらねこはこっち方面には明るくないので見当違いの事を書いている可能性がありますので、その場合はご指摘いただけると有り難いです。また、こんな事例もあるよ、といったご紹介は大歓迎です。随時追加していきたいと思います。


ホメオパシーと呪術
ホメオパシー『類似の法則』という、『似たものが似たものを治す』という考え方を出発点に生まれたものです。この類似の法則というのは、類感呪術と呼ばれる呪術の一形態の延長線上にある考え方とされております。現代の知識に当てはめて考えてみるとこの考え方を元に新たな医療を考案するのは科学では無く呪術ですが、当時としては特段おかしな考え方ではなかったようです。似たものが似たものを治すというのはそういう事例もあるし、そうでない事例もあります。出発点が同じでも片方は科学的根拠のある医療になりますし、もう片方は科学的根拠のない医療となってしまいます。前者をジェンナーの種痘と考えれば分かり易いかも知れません。
技術の進歩で目に見えないモノの数が計測できるようになり、分子の振る舞いが明らかにされると、ホメオパシーの原理に疑問を抱くのは科学を識るものにとっては当たり前のことでしょう。考えられていた原理が起こりえないもので、しかもプラセボ効果を上回る効果自体が確認されていない療法であれば、それは当初の見込みが誤っていたのでは?そう考えて不思議はないと思います。
ところが、現代科学では説明できない原理で効果を発揮しているだとか、元の物質の記憶が水に転写されて効果を発揮するというような、説明がつかないけど科学なんだよ、というどうにでも言い逃れが出来る方法で利用者には説明を行っていたりします。また、量子力学で説明ができるという主張もあり、まさにニセ科学といったところです。
水の記憶が・・・というのはフレイザーの分類で謂うと感染呪術にあたるものでしょう。類感呪術の発想から生まれたホメオパシー類感呪術的側面が科学の発展により否定され持ち出した説明が感染呪術であるというのはどんなものなのでしょうね。
■科学か呪術か宗教か
呪術は経験則を因果関係とした体系を持つもので、これは因果関係を元に構築される科学と似た面を持っていると思います。テキトーに謂うと科学の芽でしょうか、子どもの素朴科学も的を射たものもあれば、全く見当外れのものもあります。誤った理論を科学として用いてしまえば後の問題となることでしょう。
例えば、ちっちゃい子にとってお母さんの謂うことを信用して行動する事は大変合理的であると思います。勿論お母さんだって間違えますけど、自分で考えて行動する場合よりも遥かに安全である事は間違いないでしょう。ちっちゃい子にとって、そうしたお母さんの誤りは誤りとして認識されない事が殆どだとおもいます。中にはお母さんの謂うことは全て正しいのだ、誤っている様に見える事は相手が間違っているからなんだ、そう思う子もいるかも知れません。でも、大人になってもお母さんは間違わない!!なんて思っていたらちょっとビックリですよね。それに近いヒトは見たことがあるような気はしますが。
個人であれば困ったヒトだなぁ、で済む事なのですが、これが科学や医療の場で行われたらどうなるでしょうか?極端すぎますが、「私のお母さんの見立てでは貴方は突発性難聴だから、この砂糖玉を飲んでおけば大丈夫です」なんて医療の現場で説明されたらどう思いますか。お母さんは誤らない?いや、お母さんだって誤るよね。じゃあ昔の偉大な思想家は誤らないの?昔の立派なお医者さんだったら??
程度の違いはあるけれど、ヒトは誰だって間違ってしまうことがある。全く間違いを犯さない存在って何だろう?
ホメオパシー類感呪術を出発点に生まれた科学を指向した治療法であったのに、いつの間にか宗教を指向した体系に変わってしまったのかも知れない。哀しいことですね。

■マクロビと呪術
さて、ホメオパシーと呪術について拙い理解を書きましたが、マクロビについてはどうなのでしょう。
・・・なんて書き出しはじめたものの、現時点ではコレだ!と自信をもってかけるような理解には到達できておりません。何が難しいのかと謂いますと、どらねこが易というものをしっかりと理解していないからなのですね(スミマセン)。
マクロビ(食養)では、食品を陰性のもの陽性のものに分類し、そのバランスが大切である、と説いています。その食の陰、陽の分類は、石塚左玄が提唱した食べ物に含まれる代表的(?)なミネラルであるカリウムを陰、ナトリウムを陽として食品中の成分比を元にして行われたものを基本にしています。マクロビでは何でもかんでも玄米で病気が良くなると主張するのは、石塚左玄が陰陽の調和が優れている食品を探した結果、玄米が最も優れている事を発見したからなのです。左玄は根拠としてナトリウムとカリウムの比が色々な食品の中で中位に位置する5:1の割合で含まれる食品であるため玄米は優れていると結論づけました。ところが、当時の分析技術の限界もあって当時のデータは実は不正確で、実際に玄米に含まれるナトリウムとカリウムの比率は左玄が適正と考えた比率では無い事が明らかになっております。寧ろ、左玄が適切な比と考えた5:1の比に近い食品に位置するのは実は『食肉』だったりするのです。
石塚左玄は食の陰陽という考えを科学的に理解しようと、ミネラルバランスに着目しました。しかし当時の技術には限界があって、実際のミネラルバランスではありませんでした。主張の根拠となる配分に誤りがありながら、提唱者の主張には誤りがないと考える・・・この構造はホメオパシーに似ているように感じます。・・・さて肝心のマクロビの呪術性はどこにいってしまったのでしょうか・・・

■マクロビの呪術性

マクロビでの陰陽の性質
陰性・・・受動的・消極的・遠心力
陽性・・・能動的・積極的・求心力

このような特徴を持つとされ、食物も陰性や陽性に傾くモノを食べることで、陰性や陽性の性質をヒトに与えるとされているみたいです。この陽性のモノを食べると陽性に、陰性のモノを食べると陰性になるという考えが呪術的なモノに通じているとどらねこは考えます。(ようやくつながった・・・)
更に、この呪術的な考え方というのは代替療法を求める方々に親和性があるらしく、マクロビ実践者が用いるお手当法などにもその影響を認められます。少し例を挙げて説明してみたいと思います。

■食の陰陽と呪術
上記の主張の実例となりそうなものをいくつか採り上げてみます。

いちばんやさしい!マクロビオティックおいしいレシピ98 大森 一慧著 新星出版社 p90 より
果菜類の多くは夏の収穫物です。陰性な食材は陽性な気候、つまり暑い状態で育つので、果菜類の夏野菜は陰性です。なすやトマトを思い浮かべてください。空に向かって伸び、高いところに水分いっぱいの大きな実をつけていて、全てにおいて陰性ファクターをもっていることがわかります。この陰が、暑い時期に体をクールダウンさせるのに役立つのです。

陰性だから暑い時期の体を冷やすのですか・・・

健康食と危険食 河内省一著 潮文社 p64 より
九州の海岸に育った私は、近所の悪童たちと一緒に、学校の行き帰りに畑の茄子をちぎって、塩もつけずにかじったことを思い出します。翌日はキット、何人かの子供が、「口ジケ」=口角びらんをおこしたものです。生茄子のすごい陰性の拡散、破壊力を示しています。未熟な「いちぢく」の果汁も同じように陰性の破壊力をもっています。

陰性の破壊力って・・・何の呪い?

マクロビオティック羅針盤
マクロビオティックQ&A−理論編−『なぜ肉を食べない方がよいのか』より

たべたものの性質がそのまま身に付くという意味において、動物肉を食べるとその動物のように猛々しく攻撃的になるから食べない方が良いという解釈もあります。

『獣肉(略)をとると、それらの荒々しい波動は肉体だけでなく精神の波動にもなり、多くの場合、闘争心となって敵対的な他者との競争を望むようになるのです。』

どれも破壊力抜群の主張ですが、どちらかというと接触呪術に近い感じかしら。というよりも、『ぶったら豚によく似てるみたいなレベル』の様な気も・・・。
ウォトカで動くロボさんご指摘→ 「なぜ肉を食べない方がよいのか」は、「足の速い動物を食べれば足が速くなる」のようなポジティブな考え方はなくネガティブな考え方をした「肉食の共感呪術」が近いような。

スピリチュアルサイトのマイスピにはこのような記事が載っています。

彼にコッソリ食べさせちゃおう、媚薬になる食べ物
マクロビ&ローフード&カウンセリングをとりいれたお料理セラピーでセクシャルな悩みの食事指導を行っているMEGU先生

アスパラガス・いちじく・バナナ・チョコレート・牡蠣。
なんと、形状が性器に似ている食材は媚薬効果があるそうです!!

寿司屋での親父の会話レベルですね。

また、マクロビでオススメされる事の多い、お手当法も呪術的であったりします。例えば、息子が通うマクロビ保育園では、レンコンは肺の形に似ているから気管支系の病気に対するお手当法として有効だ、なんて会話があったりします。
tikani_nemuru_Mさんご指摘 →形状が性器ににているから媚薬とか、お手当て法とかは類感呪術の典型例ではないかと思われ。

以上の例を眺めていると、自分たちの素朴な科学と相反しないというのも受け入れられやすい背景なのかも知れないなぁ、そんな風に思いました。なので、呪術的な側面を持つ代替療法に嵌ってしまわないためには、学校教育で素朴な科学と科学の違いをちゃんと分かってもらう必要があるんじゃないかなぁ、なんて思ったりもしました。この点についてはもう少し考える必要があるかも知れませんね。

■このエントリを書き上げる上で参考にした記事など

どらねこがマクロビと呪術について言及したところ、poohさんが応答してくださいました。

マクロビオティックと呪術(メモ)−Chromeplated Rat−

で、こう云う呪術的発想って云うのは、順序立てて体系化していこうとすると、なんと云うかどこかでゲーム性みたいなものを帯びるケースが多くて(オカルトや秘密結社が、それがどれだけ洗練されていて秩序立っていても、どこかに中二病的なにおいが残るのと似ている、のかも)。呪術性そのものが持つ訴求力とはちょっと線を引いた部分で、そのことはそれとしてひとを惹き付けるちからを持っているのかもしれないなぁ、とか思ったりする。

どらねこはこの部分について、個々人が持つ素朴な科学と合致する場合に訴求力を持つのかなぁと考えました。

ホメオパシーと呪術については此方を参考にさせていただきました。
呪術教団化するホメオパシー−地下生活者の手遊び−

その他、参考になりそうなサイトなどの情報募集中です。



■皆様から教えて頂いた情報など

wackyhopeさん
私が読んでブログに取り上げた久司氏のマクロビ本では、肉食で大きく変化する顔つきの一つとして、耳が尖ってくるという記述がありましたね。ご丁寧にイラスト付きで。肉食で凶暴化・獣性化する表れだとか。

エルフって肉食だったのかも。

machida77さん
類感呪術としてのマクロビを最も分かりやすく示しているのが久司の本。魚を食うと魚のような顔になるとか、鶏を食うと鶏のような細い手足になるとか真面目に主張している。

久司氏の本は明らかにおかしいだろ?と謂う記述満載なのですが、なんで自治体主催の講演会が開かれてしまうのでしょうか。哀しくなります。魚の目に涙・・・