マクロビと食養の薬剤忌避

マクロビとホメオパシー−共通点や類似点−の『薬物忌避』項目の記事です。】

ホメオパシーが問題視される理由の一つに薬剤忌避が挙げられると思います。ホメオパシー団体側は必要な薬剤投与については否定しないと仰るかもしれませんが、利用者や一部(?)団体のホメオパス医療機関で処方される薬剤を否定しレメディを推奨・利用しているという実態が指摘されております。

過去の悲惨な薬害問題や深刻な食品添加物の混入事件の記憶による漠然とした不安を持つ方々に対し、現実にはあり得ない事例や、虚偽の説明を行い、化学合成されたものが体に入る事は危険なんだと殊更不安を煽り、薬物忌避や食品添加物忌避に向かわせる主張をメディアなどに発信される方々がおります。
これらはマッチポンプの形をとっており、典型的な例はアトピービジネスやデトックスを謳う健康食品を売る商売などでしょう。ホメオパシーのレメディも同じように用いられている事例を多く目にするように、同じ構造を持っているようです。マクロビオティックや食養も同じように所謂西洋医療で処方される薬を悪者にし、不安を持った方々を取り込もうとしております。
この薬剤忌避を煽る事こそが、根拠のない代替療法の中で最も危険な部分であると、どらねこは考えます。それは子どもの健康にも関わる大きな問題だからです。特に喘息に用いられる吸入ステロイド剤を否定するような考え方は時に命に関わる問題です。

■薬物忌避の危険性

薬物忌避の持つ危険性について、喘息とステロイドの関係を例に考えてみます。とはいっても、どらねこは医療については素人なのでここは、内科医であることが検証可能なブロガー記事へのリンクを貼っておきます。ホメオパシーステロイド忌避とその問題点については此方が大変分かり易いです

喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー

リンク先でも指摘されておりますが、調査結果の分析やデータを見るだけで、ステロイド吸入を適切に使用することにより、多くの生命が救われているのだろうなぁという事が実感されますね。

出典:喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針 厚生労働省 喘息死ゼロ作戦評価委員会

吸入ステロイド剤使用量と喘息死リスクhttp://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jititai05.pdfより

出典:厚生労働省平成21年度リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト

小児喘息死亡率の推移http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-06-0001.pdfより



■マクロビと薬剤忌避
マクロビオティックや食養などの指導者はどのような主張を行っているのでしょうか。幾つかの事例を挙げてみたいと思います。先ずは、日本綜合医学会の会長も務めた沼田勇氏の主張を紹介します。


この『病は食から』という本では複数のページでステロイドを殊更やり玉に挙げております。まずは関節リウマチについて・・・

病は食から 沼田勇著 農山漁村文化協会刊 (1978)p174
非常に効果があると期待されたステロイドも、副作用の恐ろしさが広く知れわたって、現在では、医学者のあいだでも死期を早めるものとしてステロイド内服はさせないのが原則となっている。食養法を行なう場合でも、ステロイドを用いた患者は、用いない患者よりはるかに難治である。
さて、この慢性関節リウマチに対する石塚式の食養法は明らかに有効である。変型性のものは致し方ないとしても、疼痛、腫脹、全身症状などの多くはなくなるので、他の治療を併用する場合にも、食養の実行は必要だといえる。

次に腎臓病についても

同書p181
ただ、副腎皮質ホルモン剤が出回るようになってから、第一例のような治療、食養法による治療がやっかいになったことは事実であるし、この十数年来、重症の腎炎が増えてきたことも事実である。しかし、かりに腎不全に至って透析生活にはいるような場合でも、食養法を守れば、努力しただけの効果があることは間違いない。

喘息について

同書p224-225
ぜんそくが治りにくくなった原因として、ステロイドホルモンと農薬の問題があげられる。
ぜんそくの治療によく用いられるステロイドホルモンは、副腎皮質ホルモンで、プレドニンなどがよく知られている。はじめは劇的に効を奏するので、医師も患者も連用しがちだが、根治するよりも習慣的になって、ついには中毒症状になり、これがなくては半日も過ごせないという病人が、日本には何万人となくいる。このホルモンを使うと、使えば使うほど副腎が廃用萎縮して、必要なホルモンがつくれなくなる恐ろしさをもっているのである。
ぜんそくなどの何十年もつづいている慢性の持病でも、食養を一〜二週間守っていくれれば治せると主張してきたわたしであるが、食養専門家のあいだでも、このごろのぜんそくは手間どるようになってきたという意見では一致している。
その原因の一つがステロイドホルモンの乱用であり、もう一つは主食である米のつくり方や精米段階の不自然さ、そして野菜類ことに葉菜類に含まれるNOx(硝酸塩類)の急増である。この二つの原因から、昭和四十年ごろを境に、ぜんそくは食養によってさえも治しにくくなってしまった。
ステロイドホルモンの常用者は、徐々にその量を減らして、悪縁を断ち切ること、NOxに対しては、農薬の含まれない野菜を手に入れるか、自家菜園をつくるしか手は今のところないが、なんとか自衛手段を講じて、ぜんそくを克服したいものである。(この項は、河内省一氏の論文によっている。)

食養で喘息が治りにくいのはステロイドの影響って何の冗談でしょう?偶然に寛解すれば自分たちの手柄、治らなければステロイドの責任にしてしまう・・・なんて楽な商売なのでしょう。

次に、一般の認知度も高い日本綜合医学会顧問の安保徹の主張です。こちらで安保徹アトピーステロイドを使用してはいけないと語っております。

あとぴナビ「私の考えるアトピーの治し方」より
ステロイド剤を使ってはいけない
アレルギーは、異物を追い出すための防御反応
ステロイド剤は治癒反応を妨げるんですか?
ステロイドは一見炎症を治しているように見えますが、症状を抑えているだけで、使うのをやめればまた症状が出てきます。症状を先送りしているだけです。だからアトピー治療に薬を使ってはいけないのです。放っておけば自然に治るのに薬を使って長引かせるから、治る見込みが立たなくなります。アトピーで炎症が起こるのは、体から異物を追い出すためです。異物とは、食物やダニ、ハウスダストなど、人によってさまざま。健康な人であれば異物として認識しない物質でも、リンパ球が多いために過剰反応してしまった結果です。炎症が起きてかゆみが出ることにも理由があります。異物を追い出すために血流を増やすからで、そのために働いてくれるのがヒスタミンなどの物質。かゆみは異物が侵入したという警告信号だから、ヒスタミンも体に必要な物質なのです。それなのに抗ヒスタミン剤でかゆみを抑えてしまっては、せっかく体が治ろうとしている流れを止めてしまうことになります。かゆみが強ければ、異物を追い出そうとする力も強いということ。だからアトピーの症状が出た時は薬を使わずに、まず原因(アレルゲン)を突き止め、アレルゲンを避けるために環境をかえるなどの対策を考えます。

アトピー以外にもステロイド剤の使用全般について、病気を難治させるというような使用自体が良くないことのように述べ、ステロイド有害論を大きく広めている事が読み取れます。

次に、マクロビの有名どころの主張としてはこんなのもあります。

新装普及版 マクロビオティック自然療法 久司道夫著 日貿出版社刊 (2009)p124より

喘息に対する最善のアプローチは、標準的なマクロビオティックの食事を始め、料理に使う水も含め水分の摂取を抑えていくことである。もちろん、果物やサラダなど陰性の食物の摂取も制限する。このようにしていくと、数週間のうちに喘息は改善される。興味深いことに、水分を継続して過剰に摂取していると、何年もの間腎臓が過度に働きす過ぎ、喘息がおこりやすくなるのである。
喘息は今日、気管支を拡張させ呼吸を楽にする非常に強い医薬品によって処置がなされる。しかしこれは、過度な陰性状態を引き起こすので、実際のところ状態を悪化させるのである。喘息の治療には、気管支を収縮または締めるようにする必要があり、これは適切な食物によってのみ可能となる。
喘息の発作が起こりそうなときは、熱い生姜湿布を胸の上から繰り返し用いると症状が緩和される。同時に一摘みの胡麻塩や梅干しを数個食べると、肺胞が即座に収縮する。外で発作が起こったときの処置として、これは簡単に持ち運べて便利である。

久司氏については、気管支拡張剤よりもまずステロイド吸入だろ、という突っ込みが無粋なほどの理解というか、異次元の思想でしたが、薬物治療忌避という点では同じでしょう。しかし、子どもの喘息発作時に梅干しや胡麻塩を与える姿を想像すると全く笑えません。

子どもを思っての気持ちが子どもを殺してしまっては元も子もありません。マクロビがお洒落な健康食ではなく、上記のような危険な健康法であることはもっと知られて欲しいとどらねこは思います。