和食(?)の持続可能性

今回は雑談レベルで、最近考えている事を気分に任せて書いてみようと思います。


■和食は優れている(?)
最近ではユネスコ無形文化遺産に登録されたなんてニュースも聞きましたが、食育では「和食」というものは栄養バランスに優れた健康食であると語られたりします。昔ながらの日本食というのは欠点も多いものでしたが、戦後の流通網の整備と冷蔵技術の発達により、季節を問わずに魚を入手できる環境ができてからの日本の食事はなかなかに良いものである*1とどらねこも思います。
魚を採り入れた食事というのは栄養学的にも良いもので、和食の良さというのは魚の良さであるといっても過言ではないかもしれません。
魚の良さにも色々ありますが、良質のたんぱく質源であるだけでなく、不足しがちなn-3系の脂肪酸の有力な摂取源になることでしょう。人間が生きていく上では脂質は重要な栄養素ですが、牛肉などでは飽和脂肪酸の割合が多くなりすぎる傾向があり、魚を採り入れることでその問題点を軽減したり、循環器系疾患のリスクを低減できることが期待されます。


■どうなる和食
そんな魚を採り入れた食文化である和食ですが、現状はけっこうピンチなんじゃないかなと、どらねこは心配しております。やっぱり食の欧米化のせいで・・・いえいえ、そんな話ではありません。
日本人の食事と栄養を語る上では最も大切な物である食事摂取基準の最新版には次の様な記述が掲載されます。


「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 p119より
世界的な魚資源の不足により、将来、α-リノレン酸の摂取が重要になる可能性がある。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/syokuji_kijyun.html



α-リノレン酸もn-3系の脂肪酸で、これは植物から摂る事ができるものです。現状の日本では魚から摂る事を前提に考えているn-3系脂肪酸だけれど、将来はどうなるか分からないと、資源について言及するような本ではない筈の食事摂取基準に書かれているのです。これって相当深刻だと考えませんか?


■うなぎとか
報道をきくと、今年はシラスウナギ漁が前年に比べて豊漁みたいです。しかしながら、それは空前の不漁であった昨年に比べての話で、10年以上前の水準には全然及ばないようです。
今後の事を考えるのであれば、せっかくシラスウナギが増えてきているのなら、これをチャンスにと捕獲しないで、資源を温存し親世代を増やそうという方向に進まなければならないはずでしょう。
こうした動きに進まなそうなのは、やはり「共有地の悲劇」的なものが漁業には起こりやすいという事なのだと思います。数が少なくなりつつある誰のものでもない資源だったら先に獲らないと自分が損してしまうという心理に陥りやすいものですから。それを実証するようにカツオの不漁が起こってますし、獲らなくても良いような大きさの魚が店頭に安い値段で並んでいる事を見かける事が多くなっております。


■大切な文化なら
和食は日本の大切な文化である。食育でもユネスコの件でも政府は積極的に和食の素晴らしさをアナウンスしてきました。本当に素晴らしい文化であり、後世に残そうというのなら、それを担う大切な「魚」をも後世に残す努力をするべきでしょう。
「魚」という資源は政府が漁獲制限を行わなければならないぐらい非常に危うい状況であるとどらねこは思います。
他省庁管轄の食事摂取基準でも心配されるレベルなのですから、農林水産省には是非とも資源を維持できるような規制を含めた対策を行って欲しいなぁと、どらねこは思います。また、食育分野についても、資源管理の大切さについても優先的に伝えていくべきでしょう。和食推奨が単なる過去を賛美のスローガンでなければすぐに取り組まなければならない問題でしょう。

*1:様々な欠点はあるというのは過去の食育カテゴリの記事でいくつか指摘してます