母乳育児を考える−ふぃっしゅさんのコメントより−その2

前回はこちらhttp://d.hatena.ne.jp/doramao/20130514/1368517708


■3.新生児の行動や表現と関わり方
ここ数年、周産期関係者向けに母乳についての本がたくさん出版されています。WHOの10か条やあかちゃんにやさしい病院、ラクテーション・コンサルタントなど、世の中で母乳に関する「権威」づくりが盛んですが、私はそれらの本を読んでも一部は納得できるのですが、何か違う、何か抜けていると歯がゆいおもいです。
きっとそれは、新生児から乳児の行動についての科学的分析や記述が少なく、というよりほとんど記述がなく、母乳=母親の努力についての方向性になっているからだと思うのです。
赤ちゃんは何を泣いているのか、どういうしぐさが何を求めているのか、月齢によってどんな行動や表情、泣き方になってくるのか、きっとお母さんやお父さん達は赤ちゃんの成長に伴って体で自然と対応していることが多いと思います。「なんだ、お腹がすいているのではなかったのか」とか「うんちを待ってぐずっていたのか」・・・とか。
実は、ここがとても大事なところで、こうした乳児へのかかわり方のバリエーションみたいなことを考えずに、ただおっぱいに答えを求めているだけの方法論が多いことが問題かと。
母乳はあくまでも育児の一部分。大事なことはどのように赤ちゃんと関わっていくかだと思います。でも日本の産科病棟の多くはきっと、育児は母乳から始まるみたいに教えてしまったいるのだと思います。
新生児・乳児の行動についてのエビデンスを高めていくことが必要ではないかと思います。でも、それは「母と子」の絆である必要はなく、「世話をしてくれる人」と自分(赤ちゃん)との信頼関係作りだと考えれば良いとおもいます。



■3.を読んでのどらねこの感想
母乳をあげないと親子の絆は築けない・・・そんな話が一人歩きしてしまい、具合が悪くなっても、母乳をあげなくちゃ・・・とお母さんは必要以上に無理する事につながりかねませんね。信頼関係作りには安定した精神状態が大切だと思いますので。






■4.胎便と腸蠕動について[出生当日〜1日]
今日は、出生直後から数日間の新生児の「哺乳量」の意味を考えたいと思います。
私が看護学生だった頃の30年前は、母子別室で3時間ごとに規則授乳が当たり前でした。数年の看護師勤務ののちに助産師になった頃には、母子同室で自律授乳(赤ちゃんが欲しい時に飲ませる)で補足分はミルクではなく糖水でという方法に変わりつつあり、時代の変化に驚いたものでした。
「母乳が出ているかどうか」は、それまでは授乳前後の児の体重測定で直母量を計算して判断していましたが、自律授乳の場合には基本的には直母量測定はしません。
退院までの児の体重の変化と、便・尿回数など全体的な判断です。
生理的体重減少期にどれだけの授乳量が本当に必要なのか、何%までの体重減少が許容範囲なのか、まだまだエビデンスが足りないのだと思います。
それ以前に、この出生直後からの新生児の変化について、実際の新生児の様子を根拠のある納得のいく説明というものになかなかお目にかかりません。

ここからは、私の観察に基づく個人的な考えです。
たとえば、妊娠初期から羊水を飲んで胎便をなぜ腸内に準備してくるのか。出生当日から1〜2日の間、赤ちゃんはこの胎便を出しますが、激しく泣くのにおっぱいを吸わない時期です。これは相当、腸蠕動が激しく授乳を求めているからではないからだと思います。目が覚めると、まず腸が動き始めるのではないかとおもいます。泣いているからといっておっぱいや哺乳瓶を近づけても拒否されます。この泣き方は、だいたい数分でピタッと終わります。静かになったと思うと、腸がキュルキュル鳴る音が聞こえて、赤ちゃんはジーと「待っています」。そのあと、ゲフッとゲップをしてほっとした様子になります。ゲップが苦しかったのではないと思います。なぜゲップをするかと言えば、大きく腸蠕動が起きたためです。おそらくこうした大きな腸蠕動の時に、胎便を肛門のほうへ送り出しているのです。
で、ほっとした後に少しおっぱいを吸って落ち着くこともありますが、そのまま眠ってしまうこともあります。
ただし、浅い眠りで、だいたい20分〜30分で次の腸蠕動が始まります。また、激しく泣いてゲフッとしてほっとして・・・。その繰り返しが何回かあった後に、赤ちゃんは急に目を見開いて起き始めます。起きたからといって、おっぱいや哺乳瓶を近づけてもこんな時は飲みません。また、泣かずにいるので抱っこしなくても大丈夫です。しばらくすると何回かいきんで、胎便を出します。赤ちゃんにしたら、ウンチを出すところは泣いて知らせる必要もなく、けっこう一人でできることのようです。一回胎便がでたあと、激しく泣きます。抱っこしていると大きな腸蠕動があって、しばらくするともう1回ウンチが出て、おしっこをして、にこっと笑っておしまい。うんちが出るのは、赤ちゃんにとってはとても達成感があるようです。
また、ジーっと目を開けているときは「肛門に全神経を集中してうんちを待っている」時のようですよ。
胎便の時期には、うんちの後も、あまり飲まずに眠るだけのことが続きますが、2〜3回ぐらい胎便を出すと、吸おうとする意欲がでてきます。
また、この胎便を出す間、激しい腸蠕動のため嘔吐することもありますが、ゲフッとすれば、その後は吸えるので「吐いているから飲ませない」のではなく、「吐き終わったら吸わせる」で良いのです。
文献によれば妊娠10週過ぎぐらいから、胎児は羊水を飲んで胎便をためてくるようです。胎内ではおしっこはしてもウンチはしません。生まれてから肺呼吸をすることとおなじくらい、ウンチをするということは画期的な変化です。
「飲む」ことの前に、自力でうんちができなければ飲むことも消化することもできないので、優先順位からしたらこの胎便を使ったうんちの練習を赤ちゃんは何より先にしなければいけないのではないかと思います。ですから、元気に生まれてリスクの少ない赤ちゃんであれば、この時期はほとんど飲まなくても問題ないのではないかと思います。
周産期関係の本を読んでも、新生児の胎便についてはその成分などについてわずかの記述があるだけで、その胎便の意義や出生直後の児の腸蠕動について書かれたものはほとんどと言っていぐらいありません。


■4.を読んでのどらねこの感想
胎便のことは文字での理解しか無かったので、とても勉強になりました。経験のない私にはとても参考になりました。
ふぃっしゅさんの赤ちゃんと会話(?)スキルが垣間見られた気がします。


次回は5.胎便から移行便、腸内細菌叢について、6.移行便から母乳便へを掲載予定です。