小学校の動物飼育はウサギが推奨されているの?



■うさぎ飼育が推進されている?
『30代転職組の教員日記(愛知県)〜元システムエンジニアの転身〜』というブログの『【衝撃!】日本全国の小学校で、うさぎを飼育するブームがはじまっています。』という記事を読みました。

『【衝撃!】日本全国の小学校で、うさぎを飼育するブームがはじまっています。』より引用
学習指導要領というものがあり、その内容にそって、学校は授業を行う。
このことは、教師の世界では当たり前のことであるが、知らない保護者も多い。
で、最近その指導要領が新しく改変されていて、低学年の「生活科」では、なんとうさぎの飼育が奨励されているのだ。

新しい学習指導要領が実際の教育現場で運用されるようになり、それに伴い文部科学省が小動物の飼育を推奨し、日本全国の小学校でどんな小動物を飼えば良いのだろう?無難なのはやっぱりウサギかな・・・という話になっているそうだ。
ええと、上記はどらねこの理解に基づく要約なのだけど、小学校も大変だなぁ・・・、そんな感想を持ちかけてふと思った。「まてよ?どらねこの知ってる範囲では動物の飼育は昔から励行されていたような気がするのだけど・・・」そんな風に思ったのでちょこっと調べて(というほどではありませんが)みました。


■指導要領を見てみる
指導要領が新しく改変された為、という事なので「小学校学習指導要領 新旧対照表」の生活科の項目を確認してみます。
現行の部分は「学習指導要領(平成10年度改訂)」で改訂が「新しい学習指導要領」であり、小学校では平成23年4月より運用開始されました。


第5節生活 p83より

生活科で動物を飼うことについては旧学習指導要領でも言及されており、この部分は新しい学習指導要領でも変わっておりません。
ちなみに、これ以前の学習指導要領(平成元年改訂)では次のように書かれております。

文部科学省webサイトhttp://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/old-cs/1322331.htmより
5)野外の自然を観察したり、動物を飼ったり植物を育てたりして、それらの変化や成長の様子に関心をもち、また、それらは自分たちと同じように成長していることに気付き、自然や生き物への親しみをもちそれらを大切にすることができるようにする。

動物を飼うことについては以前から指導要領にあった事がわかります。では、どこがかわったのでしょうか。

p84(現行)より

1学年から2学年にかけて行う事と書いてありますね。


p84(改訂)より

強調はどらねこによる

飼育の仕方について、継続的にという事が強調されております。今までの指導要領に於いても同じように飼育がなされているものと想定されていたものの、学校によってはその時だけの飼育で終わってしまっている事例があった事から文言がかわったものであるよう*1です。


■べつに指定はしていないが
では、文部科学省はウサギなど特定の小動物を奨めているのでしょうか? 言及先の記事では、次のように書かれております。

http://d.hatena.ne.jp/arigato3939/20121020/1350741142より
ウサギ、モルモット、ハムスター、ニワトリやチャボ、というのが、
「学校における望ましい動物飼育のあり方」(文部科学省委嘱研究)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06121213/001.pdf
という資料にも掲載されていて、ともかくも日本全国の小学校で、このマニュアルとにらめっこしながら、多くの教員が
「わが校は、いったい何を飼育しましょうかねえ」
と、4月の新学期になると、職員会議であーだこーだと、議論しているのであります。


これをみると、「学校における望ましい動物飼育のあり方」という参考書があり、そこで推奨されているのが5種類、というように読めます。実際にはどのような内容がかかれているのか、冊子を確認してみました。

「学校における望ましい動物飼育のあり方」p11より

「これらの小動物は、比較的多くの学校で飼われているが、ここに解説する小動物を、どこの学校においても飼育することを求めているものではない。」

あくまでも例である事がキチンと書かれて居ます。
勿論、小学校という場所、近隣の影響、職員等の配置の問題、地域の文化等々、様々な制約があるなかでの動物の選定になりますから、実際には選択肢は少ないのかも知れません。しかしながら、参考資料にはそういう趣旨ではないと書かれておりますので、その精神を大切にした運用がなされて欲しいとどらねこは思います。

ちなみに、この参考資料は平成12年につくられたもので、今回の改訂にあわせて作成されたわけではない事も書いておきます。