地域と気象と唐辛子

以前『多様な食文化を大切にしてる?』と謂う記事を書いたことがありました。その記事では取り上げなかったのですが、地域と食文化には気候も影響を与えているよ、みたいなことも書こうかなと思ってちょっとだけ資料を用意しておりました。

■過去の気象状況
昔は今に比べて農作物の品種改良も進んでいませんでしたし、ハウス栽培などの技術もありませんでしたので、栽培できる作物は気候による影響を強く受けた事でしょう。そうした制限が地域の食文化に影響を与えたことは想像に難くありません。そこまで言及できれば面白いのですが、どらねこにはそんな力量と余裕がありませんでしたので、ボツにした次第です。
で、ボツにしたのならそのまま放置すれば良いのに、元々がケチくさいどらねこですので用意した労力が勿体なくなってしまいました。なので、その時につかおうと思って作成した表を今回の記事で紹介しようと思ったわけです。(前置き終わり)
この表は都道府県庁所在地(気象台が無い場合は気象台のある都市)の1966年から2010年までの年ごとの気象データを集計し、平均値を出してみたものです。(画像をクリックすると拡大します)

南北に長い日本列島の特徴がよく顕れていて面白い*1ですね。

■からい唐辛子
どらねこが大好きな食品安全情報ブログをいつものように読んでいると、『辛いトウガラシにも水が必要 』と謂う紹介記事がありました。

http://news.sciencemag.org/sciencenow/2011/12/spicy-chilies-need-a-drink-of-wa.html?ref=hp
ボリビアのトウガラシCapsicum chacoenseは湿った条件では100%辛くなるのに乾燥条件で育てると15-20%しか辛くならない。そして乾燥条件で辛くなったトウガラシは辛くないトウガラシより50%種が少ない。Proceedings of the Royal Society Bに報告された。

詳しい話は次の論文*2を参考のこと。

Why are not all chilies hot? A trade-off limits pungency
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/early/2011/12/15/rspb.2011.2091.abstract

これによれば、辛さは湿度の高い場所で育つ際のカビから種子を守る対策として機能している模様です。でも、辛くなるにはコストがかかるため、タネは半分ほどになってしまうようです。
今回掲載した気象データを見ても分かるように日本はけっこう多湿な地域ですので、辛い唐辛子を栽培するのに適しているのかも知れません。どらねこは韓国産の唐辛子に比べ、日本産が辛いというのはこれが関係しているのかな?なんてテキトーな事を考えてしまいましたよ。

*1:個人的にはうどん県の降水量が同じ四国の高知県に比べて非常に少ないところが興味深い

*2:David C. Haak, Leslie A. McGinnis, Douglas J. Levey and Joshua J. Tewksbury. Why are not all chilies hot? A trade-off limits pungency. Proc. R. Soc. B published online 21 December 2011