食料自給率や輸入食料にオモツタコト:その3

食べきれないほど大量輸入し、その結果大量廃棄が起こり、それが食料自給率を低下させる大きな要因であると謂う論に対して、それは謂い過ぎですよという事を前回のエントリで述べました。では、実際の食品廃棄はどのようになっているのでしょう。食品廃棄の現状を統計資料を参考にちょこっと調べてみました。

■食品ロス
食品の廃棄について調べようと考え、農林水産省のページを探していましたら、『食品ロスの削減に向けて』というウェブページがみつかりました。
http://166.119.78.61/j/soushoku/recycle/syoku_loss/index.html
しろうとねこでも食品ロスについて理解できるようなわかりやすい資料はないかなぁ?と探したところ、そのものズバリ『わかりやすい資料』という項目があり、「食品ロスの削減に向けて」というpdfファイルを閲覧できるようになっておりました。

農林水産省「食品ロスの削減に向けて」p1より

なるほど、だいたいこんな全体像になっているのですね。よく謂われる、家庭と企業から出される食品廃棄物はそれぞれ1100万トンというのはその全てがそのまんま捨てられるワケじゃないみたいです。最終的に焼却処分されるのは1400万トンなのですね。まぁ、それでも多いことは確かなのですが、どらねこは不勉強にして知りませんでしたよ。あと、食べられるのにすてられてしまうと謂う『食品ロス』については正確な数字は出ていないものの、最大限見積もっても900万トンと一応10%未満になっているようです。この廃棄量を考えると『必要ない食品を沢山輸入して食料自給率は下がっている』という主張は無理筋だと謂う事がわかりますね。公的な資料の中にちゃんと示されているのに気がつかないのかしら。勿論、食料自給率云々を抜きにしても廃棄はより少なくなるよう努力を続ける必要はあるとおもいますけど。

■食品ロスは増えている?減っている?
日本人は飽食だ、食べ物を無駄にしている・・・食育関連サイトを覗いているとそんな話をよく見かけます。では、実際のところ食品ロスの状況はどんなもんでしょう。個人の心がけが反映しやすい家庭での食品ロスの推移について農林水産省食品ロス統計調査報告を調べてみました。

調査方法が違うので2004年前後での比較は難しいのですが、傾向としては食品ロスは減ってきているようですね。調査の精度がどこまでのものか分かりませんので、この食品廃棄の割合で何かを謂うというのは難しいと思いますが、減少傾向にあるというのは信頼しても良さそうです。では減少の理由はどんなものなのでしょうか?不況による経済状況の悪化かもしれませんし、調理済み食品の使用割合が増えたからかも知れません。食べ物を大切にするという教育が効を奏したのなら良いのですけど・・・。もう少し、その実態を知りたいと思い、食事管理者の年齢階層と食品ロスの関係を比較してみました。

若い人の方が廃棄割合が高いんじゃないかな〜と思っておりましたが意外と60歳前後の方が食事をつくる場合に廃棄割合が高くなる傾向があるようです。食べ残しはどの年代でも少なくなっているのがいいですね。まぁ、近頃のわかいモンは食べ物を粗末に・・・という図式は無いようです。

■だから問題なんじゃ?
どらねこは『食品ロスの削減に向けて』という冊子や食品ロス統計調査より、食品産業全体の食品廃棄は横ばい*1で、家庭での食品ロスは減少傾向にある事が読み取りました。食品廃棄の多さが自給率低下の一因だ!という主張が正しいとすると、少ないながらも家庭からの廃棄が減少しているのでしたら、その分食料自給率は上がっていても良いような気がします。しかし、食料自給率は平成10年調査から常に40%前後で推移しており、何も上昇しておりません。では、日本の食料生産は自給率と同じように横ばいなのでしょうか。平成10年度の国産熱量は食料自給率40%で計算すると1048kcalとなりましたが、平成21年度の食料需給表をみると、国産熱量は964kcalとなっており、約8%減少しておりました。様々な要因が関係しているとは思いますが、どらねこにはこれが日本の農業の衰退を表しているように見えるのです。でも、これだけで心配するのはどうなのよ、生産額ベースの食料自給率は上がっているから問題ないのでは?という反論もありそうです。一つ表を作成してみました。

殆どの品目で生産量が低下していることがわかります。無駄を省くとかそんなレベルで対応できる次元はとっくに過ぎて居るんじゃないでしょうか。農業に対する国民のスタンスを決める時期が既に来ているのかも知れません。

*1:食品循環資源の再生利用等実態調査報告