マクロビ食は有効な放射線対策ではない

福島の原子力発電所が注目されております。放射性物質が放出され、原子力発電所周囲では長時間曝露した場合に将来健康に何らかの影響がでる事が否定できない強さの放射線量を記録したからです。健康への影響が懸念されないレベルでは比較的広範囲で確認されております。そして、今後の状況は予断を許さないと考えられております。
とはいえ、一部で噂されているような核爆発を起こすと謂う事態は発生し得ないものであり、必要以上に畏れる必要もないと謂うのもまた事実です。状況は冷静に把握し、普段通りの生活と節電生活を続けつつ、関係者の努力を信じて待つことが私たちに出来る事だと私は思います。しかし、必要と考えられる事態を冷静に見守ると謂う事を妨げ兼ねない情報が出回っております。それは善意の名の下に行われる根拠無きアドバイスです。
燃料や食料、日常必需品の事などでアタマを悩ます毎日ですが、マクロビ批判ブログとしては見過ごすことはできません。ちょこっとだけ触れておきます。

■教えて貰ったチェーンメール
当ブログを読んでくださっている、kkoerueriuさんから以下の内容のコメントを頂きました。

チェーンメール?で下記の物が来ました。
以下転送内容です。
チェルノブイリの時よりも、ひどい大事件なので連絡します。
「○○流マクロビ対策」
●「陰性の放射能」には陽性食品を摂取する。
●「梅干し」「味噌」「醤油」「板海苔」「出し昆布」「とろろ昆布を含む海藻」「炒り玄米」「鉄火味噌」…
●日本からチェルノブイリ原発事故の時には、「味噌」「海苔」がたくさん送られました。
●毎日、上記食品を食べつづけてください。
●長崎原爆投下後、被爆中心地でありながら生き長らえた病院はマクロバイオティックの陰陽理論を知り「味噌をナメろ」「醤油をナメろ」と指示があったのは有名な話です。
放射能を身体から排出される可能性が格段にあがります。
●このメールを周りの人に転送してください。
●ワカメやとろろ昆布をお味噌汁に入れたり、出し昆布をおやつでたっぷり食べたりしましょう。

情報ありがとうございました。
この話はマクロビ界隈では比較的よく知られた内容なのではないかと思います。出るだろうなぁ、と思っていたらやっぱり出てきました。試しに幾つか検索してみましたら、上記のメール内容とほぼ同内容の記事が書かれたブログが幾つかヒットしました。まぁ、でもこの話題をするのはマクロビ界隈の方だろうな、と思っていたら有名処がこんなツイートをしておりました。

ああ、アナタが一役買っていたのか・・・ん、でもちょっと疑問。このお方マクロビからナチュラルハイジーンに移行したんじゃなかったっけ?マクロビ的には生の食べ物は推奨されないんだよね。節操ない柔軟な思考をおもちなのでしょうね。

■根拠無し
いつも通りで、あたりまえなんですが、これらの主張には明確な根拠なんてありません。この中で海藻の話については、エビデンスは無いものの、ヨウ素の体内動態を考えると否定しきれないものもありますが、これはマクロビの理論から導き出されたものでは無いと考えられます。たまたま、彼らの主張と一致する科学的な説明があったので採り入れてみただけでしょう。このあたりがマクロビのニセ科学性ですね。
マクロビ的な主張は他の食品に現れております。それは塩分の濃いものが多い事に注目しましょう。あ、玄米についてはマクロビの万能食なので、殆どの病気に効くと主張しますので今回は無視しておきます。
■陰性と陽性
マクロビオティックは桜沢の無双原理が基盤になっており、あらゆる病の原因は体内の陰陽バランスが乱れることにより発症すると説明されます*1
放射線を照射される事による影響も、この考えに基づいて解釈されます。ここで謂う放射線*2とは波長が短く電離作用を持つ電磁波によりもたらされます。桜沢の無双原理では万物を陰陽に分けて考えます。その分類は彼が考え出した陰陽分類図によって行われます。例によってこれも根拠のないものです。
例えば・・・
陽極【 熱い←温←→冷→寒 】陰極と判断されます。
電波についても陰と陽が存在するのですが、それは波長によって決められ『長波が陽』『短波が陰』となっております。
えっ?逆ではダメなのかって?もちろん、ダメです。だって桜沢が決めたのですから、変えることはできません。
これにより、(電離)放射線は極陰性のエネルギーを持つということになり、体に放射線を受けた人は中庸から陰性に強く傾き、それにより体に問題がおきるのだ、と解釈されます。
では、陰性に傾いた体をもとに戻すのはどうしたらよいのでしょう?そうですね、陽性のものを取り入れることで中庸に戻せばよいのですね。無双原理の考え方では、塩は陽性の強い食べ物です。陰性に偏った状態にあるヒトにはどんどん塩を投入すればよいと考えるのです。だから、やたらとしょっぱいものが多いのですね。
また、同じように色についても陰陽がありまして、赤や橙色は陽性、紫や藍は陰性となり、赤色の梅干しが推奨されると考えられます。そうして決められた食養法に後付けでなんとなく科学的な説明が付け加えられて、マクロビオティック放射線対策の出来上がりです。しかし、電磁波と食べ物を同じように扱うというのはどんなもんなんでしょうねぇ。


信用してしまい、無駄なリソースの消費とならないよう、くれぐれもお気を付けくださいませ。皆様の冷静な判断を期待します。

*1:もうちょっと細かいけど今回は簡単に

*2:電離放射線