ビタミンK欠乏による新生児・乳児の頭蓋内出血及び腸内出血の原因関連の話


<説明不足だったので此処追記>
乳児のビタミンK欠乏症を予防するため、ケイツーシロップというビタミンK製剤を予防的に提供する事は現在当たり前のこととなっているとの認識でした。ところが、K2を与える変わりにホメオパシーのレメディを処方し、そのうえ、K2を処方したことにしている助産院が存在しているという。それはどんなに危険なことなのでしょうか・・・

north-poleさんがとても有用なエントリを書いていらっしゃいましたので、どらねこは趣味に走った内容のエントリにしてみました。
オススメ→驚愕!「K2シロップ代わりのレメディ」

  • ビタミンK欠乏性頭蓋内出血

主に生後1〜2ヵ月に発生する頭蓋内出血は、乳児の生死にも関わる大変重要な問題だといえる。
ビタミンKに関するお話は、本家ブログどらねこ日誌で『ビタミンK』というエントリで纏めたことがありましたので興味のある方はどうぞ。が、ブログ閉鎖となりましたので読んで頂くことができません。余裕が出来たら再編集してアップ検討してます。

新生児、乳児がビタミンK欠乏に陥る要因

  1. ビタミンKの胎盤通過性が良くない(母胎の血中ビタミンK濃度が十分でも、臍帯血のビタミンK濃度は低い)
  2. 日齢の若い子ほどビタミンK吸収能が低い
  3. 腸内細菌叢が形成されていない(ヒトは腸内細菌が合成するビタミンKも利用する)
  4. ビタミンKのリサイクル力(?)不足(ビタミンKエポキシド還元酵素活性が十分でない)
  5. 母乳中のビタミンK濃度が十分でない
  6. 乳児のほ乳量が十分でない

他にもなんかあるかもしれないが、鶏和え酢。

様々な機序で発症するだろうけど、ケイツーシロップ投与はビタミンKが2 mgも消化管に入る事になり、多くの新生児を頭蓋内出血のリスクから救い出すことが出来るのだろう。

ところで、納豆というとビタミンKが豊富な食品なんだけど、食べた後にもしばらく生きている納豆菌がビタミンKを引き続き生産するようだ。だから成分表に載っている以上にビタミンKを補給することになるようで、これがワーファリン服用者に納豆は禁止とされる所以なのでしょうね。ワーファリン作用がビタミンKにより軽減する虞があるのね。それぐらい強力な食べ物だから健康なお母さんなら妊娠、授乳中は納豆をしっかり食べると良いかも知れない。

さて、いろいろと書き散らかしてきましたが、大変な努力の上に築かれた子供の安全を無にするようなアホな言説を垂れ流すのはやめて欲しいという事です。助産師、親の満足*1よりも子供の健康』です。



教えてください
HDN
hemorrhagic disease of the newborn is a hemorrhagic disorder of the first days of life caused by a deficiency of witamin K and characterized by deficiency of prothrombin and proconvertin and probably of other factors
これは米国小児科学会が1961年に定義したものらしい。それ以前に、出生後しばらくしてから発症する出血性疾患を原因の括り為しにHDNと呼んでいたことが混乱を招いたとされ、この文章を作成したのかな?
日本語で検索すると殆どが、新生児溶血性疾患(HDN)でヒットし、母子の血液型不適合が原因で発症する溶血性疾患の説明を見ることができる。日本ではHDNとK欠乏性出血を完全に別物として扱っている?よくわかりませんが、分かり易くて良いですね。

おまけ

ビタミン−研究のブレイクスルー−:学進出版,2002に於いて、白幡聡教授は以下のように書いている
p89
病院の解明とは別に、HDNの血液凝固異常のちりょうとして当初試みられたのは、血液あるいは血清を静脈内、筋肉内あるいは皮下に注射する方法であった。HDNはself-limiteingな疾患であるため、これらの治療効果と自然治癒を区別することが困難で、しばらくの間血液や血清の輸注がHDNの治療に用いられた。しかし、1932年に血液の筋注を評価するため比較対象試験が実施されて、この方法は生後1週までの間に起こる凝固異常の予防に効果がないことが明らかにされた。そして、1939年に Hellman ら、 Nygaard, Dam らによって、Kの投与がHDNの予防と治療に有効なことが明らかにされたのである。

う〜ん、凄い。70年も前に明らかになっていたのですよ。
その後も調査や研究議論などが積み重ねられて、今日のように概ね予防できる投与法が確立されたわけだ。素晴らしすぎます。そんな積み重ねを、
「はいレメディ処方しましたから」のヒトコトで台無しにしてしまう恐ろしさ。助産師とホメオパシーの問題はとても看過することは出来ないのだ。

*1:母乳だけで2年間も過ごさせる育児法はビタミンKの観点からも心配がありそうだけどどうなんだろう?