マクロビオティックは肉食を禁じていない?

マクロビオティックの食生活について批判的に語られる時、次のような表現が用いられる事が多いように思う。

マクロビ食は肉食が禁止されているから、栄養バランスが心配である

このような表現に対し、マクロビオティックを実践している方からは次のような反応が返ってくる事が多いようだ。

マクロビオティックでも肉食のレシピはありますよ。創始者桜沢如一先生も、必要な時には肉食を禁止していないです。

なるほど、確かにその通りだと思う。今回は『新食養療法』桜沢如一著 日本CI協会刊 (1964)及び、『食養人生読本』桜沢如一著 日本CI協会刊 (1973)を引用しながらその事を検証する。

■桜沢氏はこのように語りました
新食養療法p79の食養通則(日本内地に於ける)には肉食について、このように書かれております。

三、副食物はその土地の季節のヤサイと野草を主として、御飯の三分の一〜五分の一を適度とし(時と処によつては、或は特別な場合には、やさいの三分の一以下の鳥、魚肉、玉子など加えてもよい。)十分に噛み、腹八分に食するがよい。
<中略>
六、自然を破るもの、即ち身土不二の原則をふみはずしたもの。(季節と郷土の伝統が許さないモノ)白米、白パン、獣肉、砂糖、果実菓子、牛乳等は摂らざるを原則とする。

特別な場合には鳥、魚肉などは許可されていることがわかります。また、獣肉や牛乳は摂らないようにとの事ですが、ちゃんと原則と書いてあります。完全に禁止ではありませんね。

では、どのような場合に許可されるのでしょうか?桜沢氏は食養人生読本の中で次のように語ります。

p93より
二十才前後まで食養をやってきたら、その後は何を食ってもよいのです。原則として食養をまもっていれば、職業や事業の関係で、土地が変わっても、食事が時として乱れても困ることはちっともありません。それに二十年も食養をやっていれば自ら食物の善悪を見分けるようになっていますし、その上、悪いものは自ら好まないようにさえなっているものです。

なるほど、獣肉食は禁止されていないが、不要だから食べないという理屈なのですね。

p93-94より
獣肉や、砂糖や果実をとる必要はまったくありません。嗜好品として、あるいは薬用として時に少量をとることだけは許されますが、日本内地である限り必要品ではありません。この中でも最も自然に遠い砂糖が最も恐るべき効果を与えます。これらはいずれも活動期の大敵です。かくのごときものを常に要求するのは、すでに中毒しているので大いに警戒を要します。

マクロビ実践者の方から、桜沢氏や久司氏も偶に肉を食べていますよ、という言葉を聞くことがあるのですが、なるほど上記の説明と矛盾していないようです。彼等は拠点を日本でなく外国に置いていたので、その時には肉を食べても大丈夫であると体が善悪を判断したのでしょう。

■大事な時期は食べて欲しい
私は、大人が自分の趣味として自分だけ玄米菜食を行う場合について、基本的には個人にやめましょうなどと口を挟むつもりはありません。健康に明らかに影響しているのがわかればそれは別ですが。
しかし、妊娠期・授乳期について、また、子どもに同様の食事を勧める事については一貫して反対を表明しております。
妊娠期・授乳期は親の食事内容が子どもに大きな影響を与えますが、マクロビオティックで推奨される食生活は、乳幼児に栄養素欠乏症や過剰症を引き起こす可能性*1が高いと考えられるからです。
桜沢氏はどのような食事を妊産婦に推奨しているのでしょうか?食養人生読本から引用してみましょう。

p55-56より
さて、こんな完全な子は、どんな食養をしたら生まれるかといいますと、まず平素の食養のたしなみが何よりも大切です。大人物、賢い人、強くて、しかも優しい人、美しい人は、みな正しい食物を正しくとっている母から生れ、正しく養われた人ばかりです。
<中略>
肉や卵は絶対に(内地では)とらない方がよろしい。魚はときどきとってもよろしいが、ナルベクない方がよろしい。また、魚をとる時は頭から尾まで、ヒレもウロコも骨も、ゾーモツもみな頂くので、小魚がいちばんよく、必ずその三倍以上の野菜をそろえることが必要です。

どうやら絶対に肉は駄目なようです。では、この原則を破るとどうなるのでしょうか、同書で桜沢氏は次のように述べております。

p59より
だいたい、お産は、ごく生理的なことなのですから、苦しいものであるはずがありません。お産が苦しいなどというのは、食養を破った罪人だけです。難産の子供は、人生の第一歩から不幸で、おまけに一生不幸です。

p61-62より
『幸福製造工場』の理想的な第一回作品である赤ン坊は、赤くて小さいはずです。大きくて白い、白ン坊はできそこないで、青ン坊はペケ品です。あなた方の「幸福の鳥」は赤い鳥です。大きい「白ン坊」「青ン坊」は不幸をまきちらす凶兆です。正食をしないと、そんな子供しかできません。そんなペケ品やできそこないが生まれたら、ソレコソ苦労します。できてしまったら、しかたがありませんから、一日も早く「赤ン坊」に改造することです。それには母が正食をすればよいのです。事はかんたんです。乳のみ子のあいだに死ぬのが多い中で、ことに生まれてから一ヵ月以内に死ぬのが一番多いのは、たしかに妊娠中の悪食の報いが、いかに恐るべきものであるかを示します。

ここまでなるべく冷静になるように努めて書いて参りましたが、この一文を引用するにあたり、強い怒りがこみ上げてきました。桜沢氏を信頼する人々が、ここまで強烈に書かれた内容を読んで尚、肉食が出来ると思いますか?禁止していないと謂うのは詭弁にすぎません。
私は敢えて謂います。

桜沢如一は妊産婦の肉食を禁止である趣旨を表明している】

マクロビオティックは妊娠・授乳期に奨められるような健康食などではないのです。

関連エントリ→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100211/1265845591

*1:具体的には鉄やビタミンDビタミンB12欠乏やヨウ素の過剰