なぜ助産師がビタミンK投与を怠ったのか



ビタミンK不投与で乳児死亡…母親が助産師提訴
YOMIURI ONLINE 記事

 山口市助産師(43)が、出産を担当した同市の女児に、厚生労働省が指針で与えるよう促しているビタミンKを与えず、代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与え、この女児は生後2か月で死亡していたことが分かった。
 助産師は自然療法の普及に取り組む団体に所属しており、錠剤はこの団体が推奨するものだった。母親(33)は助産師を相手取り、約5640万円の損害賠償訴訟を山口地裁に起こした。
 母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれ、母乳のみで育てたが、生後約1か月頃に嘔吐(おうと)し、山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。
<中略>
しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せずに錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。

赤ちゃんは、出生時の肝臓へのビタミンK蓄積が殆ど無い事が知られており、母乳のビタミンK濃度が高くないことなどを理由に、深刻な欠乏症を予防するためビタミンK剤の投与が行われる事になっています。
これについては、こちらの記事で詳しく説明しておりますので、良かったら見てください。
http://blogs.dion.ne.jp/doramao/archives/8837473.html
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20091001/1254388660

記事では助産師が所属していた団体や、錠剤がどのような性質であったか詳しく書いておりませんが、ある特定の団体が、記事で行われたような処置に親和的であり、ネット上にもそれを示唆する記事が散見されている為、当該団体がホメオパシーに関連するものであると推測することが出来ます。勿論、どらねこの推測です。

そのように推測する理由を述べてみたいと思います。

■事例1

事実婚・自宅出産・うつ病父さんの育児日誌】
神谷さん、とりあえず最後の日
病院でのお産を嫌い、自宅出産を選択された方のブログのようです。

きょうは、出産後の神谷さんの訪問日の最後だった。神谷さんは、出産後、1週間から10日ほどは、ほぼ毎日訪問してくれる。その間に、おっぱいの飲ませ方やケアの仕方、沐浴の仕方やおむつのことや食事のことまで色々指導してくださる。
<中略>
あと、K2シロップを与えた。シロップと言っても、豆粒のような錠剤(?)だった。あかりのときは、シロップをスプーンで(母乳で育てていても、シロップを与えるのにほ乳瓶を使うところがある)与えたものだが。
 【追記】'09.10.13 この錠剤について、「ビタミンK2でなくホメオパシーのレメディでは?」という指摘がありました。

ブログ読者からの指摘で、レメディであると気づいたブログ主さんですが、なぜ、この訪問助産師の方はレメディのみを与えたのでしょう?それは、助産師の神谷整子氏がホメオパシーを行っている事から推測できます。

西東京子育てコム】
病院、助産院、おっぱいケアなど では、次のように紹介されている。

この神谷助産師はカリスマ助産師と呼ばれているようで、NHKのモギケンが出ている番組にも出演したことがあるようです。
開業助産師とホメオパシーや自然育児などと親和性が高い事がここでも見て取れます。

■事例2
リトル・ママ福岡版という母親の子育て情報サイトの情報交換掲示板にこのような書き込みがありました。

[33] ビンゴです!
かきん 2007/05/02(Wed)14:32
今日初めて春日でレメディーを処方されました。36週に入ったので「K2」を出されました。
上2人は個人病院だったのでK2のシロップを入院中に飲まされたんですよね。
春日ではレメディーでK2を取るようで、まず母親が1週間飲んで生まれた赤ちゃんにも
2回飲ませる(どうやって飲ませるんだろう?)らしいです。
レメディーがどこのやつでポーテンシーがいくつとかは聞かなかったです。

[37] 春日助産
kalin 2007/05/05(Sat)21:51
かきんさんへ
やっぱり春日だったんですね〜♪
きちんと処方をしてくださる方がいればその人にピッタリなレメディを都度処方してくれるので考える手間が省けていいですよね。
なんせ妊婦ですからあんまり考えすぎて心身に悪い影響を及ぼしても本末転倒な気もするし^^;

ちなみにK2っていうレメディ、私は知りませんでした^^
そういえば、長女を産んだときなんか飲まされていた記憶はぼんやりとあるけど・・・。

それから、赤ちゃんには赤ちゃん向けのレメディがあるらしいですよ。粒が極小のヤツ。
楽しみですね〜、ぜひ赤ちゃんのレメディ、どんなモノか見てみてください♪

この書き込みによれば春日助産院という施設でも行われているようです。春日助産院ウェブサイトを見る限りでは、現代医療を過度に否定しないようなニュアンスで書かれているのですが・・・

さて、開業助産師の方にホメオパシーを実践される方が多いのは何故でしょうか。それは、ホメオパシーの団体が助産師や医療関係者にしきりにアピールをしているからでしょう。例えば、助産の専門誌にもホメオパシーの広告が見開きで載っておりますし、助産師向けのホメオパシー講習会などが企画されていた事もありました。(こんなエントリも書いてます。よかったら読んでやってください)

ホメオパシーの団体ではどう考えているのだろうか
事例を2つあげてみましたが、これらは助産師の個人的判断である可能性も否定できませんホメオパシー団体はこのような事例に対しどのような意見を持っているのでしょうか。一つのホメオパシー団体のウェブサイトにホメオパシー利用者の体験談を掲載しているページがあります。そこでは、利用者の体験談がスタッフからのメッセージともに掲載されます。その一つを紹介します。

女性・北九州市・とらのこ会
出産後K2シロップを与えたくないので、そのレメディーももらったのですが、これはもし産院でK2シロップを与えなくても赤ちゃんに与えた方がいいのでしょうか?センターに問い合わせればいいのですが、どなたかの参考にもなればと思い質問させてもらいました。

村上先生
それとK2シロップの件ですが、産院で与えなくてもいいのであればその代わりにそのレメディーを与えていただいてもかまいません。いずれの場合もレメディーをくださった方にご相談やサポートをしていただけるとご安心かと思います。

産院で与えなくてもいいのであれば、という記述が微妙ですが、肯定的ニュアンスで返答していることが明らかです。

では、村上先生は何者なのでしょうか?外部の方であれば団体にはあまり責任が無いかも知れません。どらねこは少し調べてみました。

村上先生が回答している別の体験談では、先生の所属が書いてありました。同じコーナーですので、同姓同名であればなんらかの肩書きなりをつけると思いますので、おそらく同一人物でしょう。

村上先生(東京本部センターホメオパス

どらねこが、東京本部センターのホメオパスを検索したところ村上姓に該当するのは次の方です。

助産師であれば、新生児K欠乏性出血症の恐ろしさを理解していない筈は無いと思います。それでも尚、このような指導が行われたと謂うことは、ホメオパシーのレメディに同等の期待を持って処置に当たっていた事を伺わせます。ホメオパスの方々は助産師や妊産婦へどのような説明を行っていたのでしょう?
大切な子どもの死は何を行っても贖う事はもう出来ないのです。
この悲劇が二度と繰り返されないように・・・今からでも遅くありません、この件が考え直す切っ掛けになってくれれば・・・と、思います。誤りに気づいて自分の主張を変えることは、決して恥ずかしいことではないと思います。