明石要一氏の名前に反応した理由



外で友達と遊ぶ子ほど「高学歴・高収入に」 独法調査
これはasahi.comのページに掲載された記事のタイトルである。

あまりにアレなタイトルのお陰か、200を超えるブックマークを集めていました。
記事には元となった調査研究のリンクは示されていませんが、どうやら独立法人国立青少年教育振興機構という法人が2009年11月から12月にかけて実施した『子どもの体験活動の実態に関する調査研究 』の中間報告を紹介したものみたいでです。
当該調査の詳細については此方で読めます。

一応、食と健康関連ブログである(そうなの!)とらねこ日誌で、なんの脈絡もなくこんな記事を採り上げるのかと謂いますと、この調査研究の中心人物について色々と思うところが有るからなんですね。
そんな主観が入りまくった記事なので、この先を読んでくださる方はそこら辺を割引いてください。割引シールは店内入り口で配布します。

■明石要一氏
先ほどの調査研究は千葉大学教育学部教授である明石要一氏が座長となり、音頭をとって実施されたようです。どらねこは明石氏の名前は以前からマークしておりました。勿論、悪い意味ですが・・・。なんで悪い印象を持っているのかをお話ししてみようというわけです。

■TOSS
明石氏の話の前に、TOSSについて話しておきます。TOSS(教育技術法則化運動という活動からはじまった)という向山洋一氏を代表に据えた教師の団体があるりまして、簡単に謂うと、教育技術や授業技術をマニュアル化・共有などして、よりよいモノを目指しましょうねという趣旨で活動しているモノです。その団体で行われている内容には勿論有用なモノも有るのでしょうけれども、『水からの伝言』という教育現場で使用するには問題と考えられる本を題材とした道徳授業案がTOSSのウェブサイトで紹介されていたという経緯があります。(問題点については詳しくは此方を)
それだけ(というには大きい問題かもしれませんが)ならまだしも、問題のある授業案のまとめページまで出来ちゃうほどなのですね。リンク先をみると分かるのですが、内容の正確性に疑問のある教材が数多く採り上げられております。ニセ科学や誤った歴史認識に基づいて書かれた参考文献・・・そう、偏って居るんですよね。たまに間違ってしまうのは誰にでも有ること、だからこそ、誤ってしまうことの無いように、意見の異なる本を開き専門書を読んだ上で自分の言葉として形にするわけです。偏っている理由は、自分(達)の主張が先ずあって、それを肯定してくれる本を参考にするからそうなっちゃうんです。でも、元々の主張自体に妥当性があれば、トンデモない内容の本ばかりにならないはずですからね。自分たちの主張が有ることは否定しないが、主流とはなり得ない理解や科学的に誤った主張を授業で行うことはハッキリ言って問題だと私は思うのですよね。だから、TOSSについては色眼鏡で見ているわけ。

■明石氏とTOSS
どらねこがTOSSに注目した理由は、有名(?)な水伝授業の件もあるのだけど、インチキ食育授業案をいっぱい作っているからなんですよね。中でも、牛乳有害論や砂糖の害については本まで出しているくらい沢山作られているのです。どうやら、昔の日本は良かった、日本食万歳という思想が根っこにあるみたいなんですよね、だから砂糖や肉の食べ過ぎで子どもはキレるようになった、と謂いたいみたいなんです。ごはん食運動にも積極的みたいですね。
明石氏本人も、月刊「食生活」という栄養士向けの雑誌に於いて、食の乱れは生活の乱れをはじめとした様々の問題の温床となっているという持論を展開したことがあり、次のように述べている。

食生活5月号(2007)
偏食の激しい大学生はいま、どんな青年になっているのだろうか。
嫌いな食べ物が6個以上ある人は、「わがまま」「頑固」「やきもち焼き」「根にもつ」「諦めやすい」「泣き虫」「怒りっぽい」という行動特性をもつ。

発達障害スペクトラムにあるヒトでは偏食が多く見られると謂うことが知られており、教育社会学者であればその可能性を考慮する必要があると個人的には思うのですが、それはいいでしょう。コレだけでは彼の主張の妥当性をそれほど疑う理由にはなりません。同じような主張を持つ以上の共通点があるからです。

TOSSの影響力は結構あるみたいで、読売新聞の食育テキストまで作成していました。現在はリンク先が無くなっておりますが、その事を記事にしたモノが拙エントリ、『大手新聞社の食育はTOSSだった』です。他国の食文化に対する偏見が露骨に見られるモノが小学生向けの食育冊子として配られたと考えられる現実にクラクラしたモノです。
で、この冊子の発行元はコレ

食育推進研究会って何?
食育推進研究会のウェブサイトを調べてみると、次のようなメンバーで構成されておりました。

向山氏と並んで明石氏の名前がありますよね、そして研究会の建物がTOSSビルと来れば、なんかピンと来ますよね。ん、ちょっとまって?理事長の斎藤滋の名前には覚えがあります。そうそう、当該冊子の中でこのように引用されておりました。

モノは噛めば噛むほど海馬の血流量が増して記憶が良くなると主張される方でしたよね。昔の日本人は良く噛んでいた、戦後日本人の咀嚼回数が減っている、という彼の主張が多くのブログなどで引用されているのですが、どうやら和食は素晴らしいという話の論拠として示されているようです。魚や野菜などの保存食は咀嚼が必要だから素晴らしいという話なのでしょうが、それって高塩分問題の方が大きくない?なんて、ひねくれモノのどらねこは思ったりもするのです。あと、魚よりも肉の方が噛む回数は多いと思うのだけどね。
とまぁ、上の例は必要以上に噛みつき過ぎのきらいがありますけど、斎藤氏の名前を別の処で見ていたことがあるので、余計厳しい目で見てしまうというのはあります。
俗流若者論の検証をされている、【新・後藤和智事務所 〜若者報道から見た日本〜】に於いて、件の斎藤氏が採り上げられていた
詳細はリンク先を見ていただくとして、ニセ科学としてもダメダメな部類に入るゲーム脳を肯定的に捉え、新聞に寄稿しているという有様です。今どきの若い者は・・・という考えに凝り固まっているからこんな話も真に受けてしまう・・・のかも知れない。
彼が理事長の研究会なのだからその主張は推して知るべし、ですね。

■まだまだあるよ
他にも、エネルギー教育全国協議会では、座長に明石要一氏と向山氏が並んでおり、その関係性をしっかりと伺わせます。というか、またしても本部所在地はTOSSビルですよ。

他にも、id:kei999さんの明石要一センセ―はトンデモなので、信じないほうがいいなどが参考になりますね。なんとなく明石氏が指揮を執った研究の解釈に眉に唾したくなるキモチが分かっていただけたのでは無いでしょうか。

長くなりすぎましたので、一端終了とさせていただきます。
調査研究の本文については、体調が良ければエントリにしたいと思います。