大きい魚、小さい魚

魚の味について、ちょっと考えてみたことがある。
美味しい魚というと何を想像するだろうか。
勿論、人によってそれは大きく異なる事だと思うが、どらねこは猫なので当然、魚が大好きなので、美味しい魚を列記しろといわれれば、ズラズラと大量の魚の名前が挙がるわけである。
鰯、秋刀魚、鯵、王余魚、喜知次、鮪、鮃、鯖、岩魚、マスノスケ、皮剥、虎魚、鰤・・・
これらの魚は何時でも美味しいかというと、そうではない。魚の味は季節によって大きく変動する。それは、脂ののりと表現される事が多い。寒い海を泳ぐ魚類では脂肪の溶ける温度が低いものが多く、それは口の中で柔らかく溶け、新鮮なものでは独特の芳香を口の中で奏でながら、融解していくのだ。
季節以外にも大切な要素がもう一つある。それは、大きさだ。
上に上げた例では、キチジやサバ、マグロやブリに顕著である。これは脂のノリとも関係してくる部分も多いのだが、大きな個体ほど味の深みと口溶けの調和が素晴らしいのである。これは小振りな個体では味わえない旨みなのである。
水産資源の枯渇が心配されており、大きな個体の水揚げ量は年々減少する一方で、価格は以前では考えられない程に高騰してしまっている。
昔の魚は旨かった。
それは、昔の思い出が単純に美化されたと云われるものではないのかも知れない。
もしかしたら、それは一部の人だけしか味わう事が出来なくなったという可能性も考えられるのだ。