謎溶き腸上現象Ⅲ:水太りの謎編

【伝説】
水太りという言葉をご存じだろうか。以前はスリムな体型であったAさんであったが、特に何も太るような食事はしていないのに、気がついたらブヨブヨの体型になっていたという。
「私こんなに食事を減らしているのにぜんぜんやせないのー、水を飲んだだけで太っちゃう体質なのよー」
が口癖のAさんだが、確かに普段の食事量は少ないと周りの人も証言している。実際、昼食には子供用のお弁当箱にこんにゃく中心のおかずが目撃されている。こうした事例が存在する事を栄養学者は何も認めようとしない。このように栄養学の専門家が認めない怪現象に対し、腸上現象に詳しいカジカワ氏は次のように述べている。
「秘密結社モフモフ療法学会による陰謀です。アースクエーク兵器による水のホメの波動がナチュラルヒーリングパワーに作用し、生体内元素転換が生じているのです」
カジカワ氏の発言はともかく、何も食べなくても太る人の存在はけっして無視することはできないのである。


【真相】


■食べた事を認識していない可能性
「私こんなに食事を減らしているのにぜんぜんやせないのー、水を飲んだだけで太っちゃう体質なのよー」と謂う人は日本各地いたるる所でその存在を確認されているのは事実である。彼らは決して太る理由が自身の食べ過ぎである事を認めようとしない。食事をしないのに太ってしまう事が本当にあるのだろうか?
実際のところ、腎臓や心臓などの臓器の疾患等により身体の水分調整がうまく働くなると浮腫という現象が起こり、体内に水分がたまってしまい、体重が大きく増える事が知られている。体内に余計な水分が貯留した場合には、利尿剤などが医師により処方されたりするが、10kg以上の余計な水分が排出されるような事例も存在するようだ。しかし、これは厭くまで病気であり、適切な治療が必要な状態であるといえる。健康に特に問題がない人が何も食べないのに太ってしまうという事は基本的にあり得ないと考えて良いだろう。
ところで、多くの場合はほとんど食べていないというのは自己申告に過ぎず、実際には太る為に必要な栄養を摂取していると考えられている。しかし、本人は特に食べていると謂う自覚がなく、無意識のうちに視野に存在するお菓子などを食べていたり、おやつは別腹と謂う言葉を勘違いし、別腹だから食事に入らないと思い込んでいる事がほとんど食べていないと謂う認識につながるものと考えられている。こうしたつらい現実を突きつけることは本人の認知的不協和をもたらしかねない非情な行為*1となることもあり、取り扱いが大変難しい問題であることが知られている。


■本当に膨らむ事も
しかし、特に病気とはいえない場合でも身体の水分が増えるという現象自体は存在するようだ。
それは浮腫とよく似ているが、病的なものではないという違いがある。通常、身体はミネラルバランスをほぼ一定に保ち、代謝機能が十分に発揮できるよう調節されている。特に、ナトリウムというミネラルとカリウムというミネラルのバランスは重要であり、摂りすぎた分は速やかに腎臓から排泄することでその濃度を一定に保っている。
ところが、食事からのナトリウム量が急激に増えた時でも、腎臓からのナトリウムの排泄は2〜3日遅れで増加するようになっており、その間はナトリウムが体内に余計に貯まった状況となってしまうのである。これでは正常なミネラルバランスを保てなくなってしまいそうだが、身体は上手にできているもので、体内の水分を同時に増やす事により、ナトリウムの濃度を保つようになっている。つまり、一時的な水太り状態である。あまり食塩摂取が多くない人に比べ、食塩摂取量がとても多い人では、体内に余計に蓄えている水分は多い事が考えられるだろう。


■どれぐらい貯まるのだろう
例えば、ナトリウムが体液中に1mEq/L(23mg/L)増加すると仮定すれば、同時に水も7ml〜8mlほど移行すると予測される。わかりやすく食塩摂取量を例に考えてみよう。通常、1日に8gの食塩を食べている人がいたとして、急に12g増加し20gを食べるようになったと仮定して計算例を示す。

これは食塩がNaとClの化合物であるためです。ナトリウム量から食塩を換算する場合には2.52の食塩換算係数をかける事になります。

増えたナトリウムで水中のナトリウム濃度が高くなってしまわないように、水で薄めるとイメージして下さい。

余談ですが、人体内にはおおよそ体重1kgあたり1.5g(1500mg)ほどのナトリウムが存在します。体重の50〜60%が水分と考えれば、この数式の意味が理解しやすいかも知れません。

水1.5リットルといえば、なんと体重1.5kgである。これはダイエットを考える女性が無視できる数字では無いだろう。
勿論、塩分が蓄積し続けるわけではないので、このまま水太りを続ける事はないのだが、常に塩分摂取量が多い人では余計な水分を抱えている可能性が高いのである。


■結論
何も食べないのに太り続ける事はないが、急激に食塩摂取量が増えた場合には相応に体重増加をしても不思議はない。しかし、それを水太り体質というのには無理があるだろう。
ところで、体重測定前に爪を切ったり髪を切ったりするような健気な女性にどらねこがアドバイスをするならば、それよりも数日前からの減塩習慣をつける事をお勧めをします。しかし、食塩摂取量が増えればあっという間に元の多い水分量に戻ってしまう事でしょう。常に減塩に心がけた生活をする事をお勧めします。これで、体重も減って健康的な減塩習慣も身について一石二鳥です。問題があるとしたらその程度の体重減少じゃ物足りない方にはまったく納得して貰えない事でしょうか・・・

出だしはこんな話じゃなかったような気がしますが、ネタなので勘弁して下さい。(了)

*1:食べた事を帳消しにしようと嘔吐を繰り返し、食思不振症となった場合に誰が責任をとれると謂うのだろうか