ネコ揉み療法のオカシサに気がついて!

<注意>このエントリはフィクションであり、登場する病名や固有名詞等は架空のものです。実際の人物及び団体等と直接の関係*1はございません。

ネコ揉み療法とは
『キセキがおこるネコ揉み療法』のキャッチフレーズで知られる代替療法である。
施術は厳しい訓練を積んだネコと講習を受け認定されたネコ療法士の手によって為される。受療者は安楽な姿勢でネコを膝などに載せ、療法士の指示に基づいた部位を揉んだり撫でたりを繰り返す。この行為により受療者の精神は解放され、癒しの波動を受けやすくなるとされ、ネコが発するスピリチュアルヒーリングパワーを効率良く吸収できるとされるもの。何にでも聞くとされているが、その効果を証明したエビデンスレベルの高い研究は知られていない。

■ネコ揉み療法再び
皆様は覚えていらっしゃるでしょうか。今年の夏、ネコ揉み療法による健康被害が話題となった事を。あれから数ヶ月、ネコ揉み療法団体は何事もなかったかのように活動を続けております。痛烈に批判したトアル新聞社は再び反ネコ揉み療法キャンペーンを行う事にしました。とらねこ日誌ではトアル新聞に特別に許可を頂き記事を紹介しようと思います。

※こちらの関連記事も参照して下さい※

キセキがおこるネコ揉み療法

http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100808/1281243538
モフモフ療法の歴史

http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100817/1282048475


ネコ揉み療法の真実

http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100822/1282455062

【トアル新聞日曜版『ALTO』12月12日紙面より】
以前こちらの特集記事で、ある代替療法の危険性や問題点を採り上げた事を覚えていらっしゃるでしょうか。『ネコ揉み療法』という代替療法固執した結果、適切な医療を受ける機会を失い、体に重篤な障害を負った被害者の方が、ネコ揉み療法団体を相手取り民事の裁判をおこしました。その裁判の報道が切っ掛けとなり、ネコ揉み療法による被害の実例や、死亡例など数多くの体験談などが寄せられました。トアル新聞日曜版でも特集を組みこの代替療法の実情や薬物忌避による問題点などを伝えてきました。その結果、医療施設などで表だってこの療法を採り入れている旨が宣伝されることは少なくなって来たようです。しかし、未だにネコ揉み療法団体が作る資格取得講座は賑わっており、ネコ揉み療法利用者から疑問の声が上がっているという話は余り聞かれません。どうすれば、利用者や効果があると理解しているヒトに気がついて貰えるのでしょうか。
本日は、ネコ揉み療法による被害が社会問題となる以前から関心を持って追いかけてきた南椎林檎氏に色々とお話しを伺いたいと思います。

記者:南椎さん、どうぞよろしくお願いします。南椎さんは、文法のプロであるだけでなく、デザインナイフ評論家でもいらっしゃいます。そんな南椎さんがネコ揉み療法の問題点を追求することになったのはどのような理由からなのでしょうか。

南椎:仲良くしてもらっていた動物関係のお友達がネコ揉み療法に嵌ってムニューダジャポンに入会してしまった事が切っ掛けですね。そのヒトには私の言葉は未だ届いておりません。どうしてこんな事になってしまったのだろう・・・そう思って色々調べているウチにずっぽりと嵌り込んでしまいました。逆の意味ですが。

記者:私たちからすると、まるっきり下顎的におかしな話をどうして信じ込んでしまうんだろう、健康被害がでている事が報道されているのにどうしてやめることが出来ないんだろう、そんな疑問が浮んできます。このような利用者の心理などについて、以前の記事で烏猫さんに教えていただいたので、不要なバッシングを招くような非難記事は書かないようにしてきたのですが、被害の報告を目の前にすると彼らに上手く伝わるような指摘や批判ができないものか・・・と日々考えてしまいます。

南椎:私たちから見ると下顎的におかしな話でも、彼らの理論からすれば整合性があったりするんですよ。例えば、「ナチュラルヒーリングパワーなどというものは検出できない!ありえないっ!」という批判に対しても、「ナチュラルヒーリングパワーを感受できるのは我々の心の中に住むインナーキャットだけであり、機械では検出できるモノではない」という解釈で内部の人間は納得できてしまうんです。もちろんそう謂った整合性も大切な要素なのですが、それよりも重要なことはネコ揉み療法に神秘的なチカラがあって欲しいと願う人々をいかに安心させる事ができるかなんですよ。

記者:ええと、それはどういった意味でしょうか。

南椎:本質を外してしまう虞があるのですが、分かり易さを重視して例えを用いて説明してみましょう。

子ども:うわ〜ん、モフニャンロボを落としてこわしちゃったよ〜。お父さん、なおして、今すぐ元通りなおしてよ〜。
お父さん:これはもうバラバラだから直す事はできないよ。一度壊れたモノは元には戻らないんだよ。
子ども:そんなこといわないでなおしてよー。え〜ん。

記者:ああ、ありがちな風景ですよね。

南椎:モノの道理としてはお父さんの説明におかしなところは無いですよね。ですが、子どもは何故か納得しない。いや、子どもだって内心直らないことはわかっていて*2、現状の説明なんて求めていないんですよね。お父さんのなだめ方としては色々あると思うけど、代わりのモノを買ってあげるとか、嘘かも知れないけど直してあげるから・・・と謂ってその場は取り繕うようなやり方をすると子どもは泣きやむんじゃないですかね。

記者:確かに。で、これがネコ揉み療法の整合性とどういった関係があるのですか。

南椎:わざわざメジャーでない代替療法を選ぶ理由の1つに治療法が確立されていなかったり、簡単には治らない病気を治したくて始めたというモノがあります。この場合、こんな原理はあり得ないという説得を受けたとしても、「だから何?じゃあ貴方はこの○○を治す方法を知っているわけ?早く教えてよ!」そのような気持ちにさせて終わりという事になりかねません。勿論、そのような指摘を受けた人は不安になりますが、それを安心させるのが内部的な整合性です。「安心しなさい、ナチュラルヒーリングパワーを信用しなさい」という感じにね。

記者:なるほど、内部的な整合性がある程度存在するうえに、療法を頼りにしているヒトに対しては矛盾点をつくこと自体が有効な批判となり得ないわけですね。

南椎:最近、ネコ揉み療法団体が新たな顧客獲得に向け、アトピー性皮膚炎に悩む親子をターゲットにし始めたという話を聞くようになってきましたが、一度採り入れてしまえば抜け出すのは容易ではないパターンの1つですね。商売の方向性としてはまちがっちゃいないですね。このような場合には別の有効な治療法が示されない限り、妥当な指摘でも届かない可能性が高いです。
これは土良寧子氏*3も指摘していた事なのですが、ヒトクチに代替療法を信用している人と謂っても、実はそれぞれが立場の違う人から構成されて居るんですね。彼は次のように大まかにその立ち位置を分類していました。

その1:予防接種を受けない、受けたくない。薬は危ないので使いたくない。それを支持してくれる考えの療法だから利用している。
その2:ネコ揉み療法の考えはともかく、病院へ行かなくてもお手軽に治るというので利用している。
その3:治療方法が確立されて居ない病気などに悩んでおり、それが治るというので利用している。
その4:ネコ揉み療法を業務としており、それが生活の糧なので利用している。
その5:ネコ揉み療法を業務としており、医者と同じような立場で患者に接する事ができる快感を味わいたいので利用している。

南椎:全ての立場のヒトに届くような魔法の弾丸は存在しないと思わないと始まらないですよ。根気よくヤルしかないです。何も行わなければ100人中1人も説得できませんが、丁寧に相手の立場を考えた指摘を行えば、数人はその問題点に気がついてくれるかも知れません。現時点ではそれでも良いのではないでしょうか。私はその立場をとっていますよ。
また、私の悪友の一人はネコ揉み療法の中にある下顎を装うような説明を集めて、それの何がおかしいのかわかりやすく解説した記事をブログにアップして批判してますよ。新たな顧客獲得の為には代替療法団体もある程度自分たちの殻をでて外の世界に触手を伸ばすんですね。その隙をついて反撃をするわけです。そうすると、カリスマと崇める人物も実は誤りを犯すんだ・・・という印象を与えることも出来るんです。そのほころびが切っ掛けで代替療法から脱却できた方を私は数人知っております。

記者:相手によって説得方法は異なる・・・それは当然ですよね。私たち新聞メディアに出来ることも色々ありそうです。ネコ揉み療法自体を知らない人が嵌らないようにするための予防効果、それと新聞に権威を感じる人への説得効果でしょうか。なるべく多くの人に届けることが出来るように私も考えていきたいと思います。批判の種類は色々とあって良いのですね。南椎さん、本日はどうもありがとうございました。






日本モフモフ療法学会長よりヒトコト:
モフモフ療法を行う際には猫の迷惑も考えてあげてください。モフモフ療法の理念はモフモフ様と人間の幸せな関係です。機嫌の悪いときはモフモフ療法を決して実行しないで下さい。思わぬ副作用が出ることがあります。

*1:とはいえ、http://d.hatena.ne.jp/himajin774/20101017/1287303871に触発されて書かれたモノではあります

*2:わかっていない可能性もありますけど

*3:日本モフモフ療法学会会長。ネコ揉み療法の下顎を装う態度に反発している