モフモフ療法ボツネタ掲載(内輪ネタ)

早いもので、モフモフ療法の記事を書いてから1年が過ぎようとしています。根拠のない代替療法、食事療法を批判する動きもあるが、震災以後は人々の不安を追い風に根拠無き言説は大きく広がろうとしているように見える。
それ以前は小さな動きではあったものの、根拠の乏しい不安に対し、特殊な努力を続ける人たちは同じように活動していた。モフモフ療法の記事をもし彼らが目にしたならば、社会から責められ、虐げられてもきまじめに一所懸命活動している私たちの様子をパロディにして笑いものにしようとするモノではないか?そう勘違いさせてしまうかも知れない。生真面目さ、真剣さが招いた悲劇だとしたら、なんとも哀れではないか?その状況に気がつけるようになるにはどうしたらよいのか?
その為の余裕は一時の良き笑い、それもパロディによって供給されるとまた面白いかも知れない。道化として振る舞っていた自分と目の前で踊る道化と手を取り合い笑い合う、そうして新たな日常に戻っていく・・・。

■モフモフ療法インタビューボツネタ
代替療法のオカシサを虚構で紹介するためのパロディ記事を書いた気持ちを言語化してみるとこんな感じだったかと思います。
そのシリーズの2作目にあたる『モフモフ療法の歴史』というネタ記事は、パロディではあるものの、後半は何となく良さそうな話としてまとめられたかな、と思っております。実は、この記事の最初の原稿は更にバカらしくアホ臭いオカルトな内容となっており、これじゃあパロディとしてもやり過ぎだろうとボツにした次第です。しかし、最近の米のとぎ汁噴霧とか細菌が元素転換なんて話を見ていると、どっちがパロディなんだか分からなくなるほどで、ボツにしたネタもアリかも知れない・・・などと考えて古いフォルダから引っ張り出してきました。
そんなわけで、前置きが長くなりましたが、昨年のボツネタを掲載します。(ネタギレともいいます)



ネコ揉み療法の問題点について、厳しい指摘を掲載し続ける『トアル新聞』であったが、今回はなんと、ネコ揉み療法と並べて語られる事も多い、『モフモフ療法』の世界的権威と呼ばれる人物に突撃インタビューを行っている。トアル新聞からの許可を得て転載させていただいた。

『モフモフ療法』
動物やぬいぐるみなどの柔らかなふんわりとした被毛の様、或いはふんわりとした被毛に接触した感触を(モフモフ)もふもふと形容されるが、このモフモフと接触する事でヒトは安らぎを覚えるとされ、この感覚を積極的採り入れたセラピーをモフモフ療法という。
モフモフ療法には主に猫が用いられる事が多いとされるが、アレルギー等を勘案し、ぬいぐるみが使用される場合もある。
但し、モフモフ療法には離脱症状が有ることが知られており、その用法に当たっては適切な指導の元に行われることが求められている。

出典:はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E2%A5%D5%A5%E2%A5%D5%CE%C5%CB%A1

トアル新聞日曜版『ALTO』8月15日紙面より
先日、本誌に於いて『ネコ揉み療法利用者に複数死亡例』という記事を掲載したところ、様々な分野から大きな反応を頂きました。その中に次のような意見がありました。
『新聞記者もネコ揉み療法団体もそれぞれの立場から好き勝手な事をいっているようにしか見えない。色々な立場からの意見も併せて掲載するべきだ。』
ごもっともな意見ではあると思います。相手の言葉尻を捉えて一方的な意見を書き散らかすのは誠実な態度とはいえないと思います。本誌ではなるべく客観性を重視するという方針に基づき記事を書くよう努めましたが、読者からは一方的な反論にも見えたかも知れません。安易なネコ揉み療法バッシングであるとの指摘もあるようです。
この指摘を受けて、本誌ではムニューダージャポンの会長をはじめネコ揉み療法団体に取材を申し入れたところ、どの団体からも現時点では取材を受けかねるという回答を頂きました。そこで、ネコ揉み療法とは兄弟関係にあたる『モフモフ療法』の提唱者に企画を持ちかけたところ快諾を頂きました。記者からの質問に対しても饒舌すぎるぐらい余すところ無く語っていただいた印象です。
勿論、客観性のある第三者からの意見ではありませんのでその点は差し引いて読まれる事が求められると思いますが、とても参考になるお話しを頂きました。
道良 寧子氏はモフモフ療法提唱者で世界的権威とされる人物であり、モフモフ療法の普及啓発に努めている。日本モフモフ療法普及協会会長でもある。

記者:まず、モフモフ療法の歴史についてお伺いしたいと思います。それとネコ揉み療法とはどのように違うのかなどと併せて説明していたければ。読者にはあまり違いが明確ではないと思いますので。

道良:にゃるほど、同じように見えますよね。それは当たり前の話で元々は同じものだったのですよ。ところで、記者さんはネコや動物などはお好きですか?

記者:ええ、まあそれなりに好きですね。家には猫が二匹いますよ、雑種ですけど。

道良:心の不調が切っ掛けでいろんな病気が引き起こされるのはご存知でしょう?今では精神科医療など心の不調を扱う医療が進展しているけれど、大昔はそこらへんのフォローがあんまりにゃかったのですね。原因不明の難病の幾つかはこころの問題であったりしたわけで、ストレスが緩和される事でそうした幾つかの病気は治るんですね。可愛らしい動物を撫でる事で心に安寧をもたらす・・・それがモフモフ療法とネコ揉み療法の起源ですね。

記者:なるほど、ありそうな話ですね。

道良:元々は民間療法みたいにゃものだったのだけど、今から200年ほど前に羽根満次郎氏という猫療法士を名乗る人物が『猫養道』という本をかきあげたんですね。それまでは口伝や経験に基づいて行われていた猫揉みの体系化を図ったわけです。私の手元に複写本があるんだけど、その手技は現代のカウンセリング理論と相通じるものがありますね。だから、心が原因で起こっているような患者に対しては効果は確かにあったと思うんですよ。カウンセリングにも限界はありますけど、今の薬物療法みたいに効果のある治療法はなかったわけですからね。
記者:カウンセリングですか、それなら効果はありそうですね。

道良:でしょでしょ(笑)。当時の通常医療に比べて効果があるように見えたから人気が出てきて口コミでどんどん広まっていったんです。『猫が鳴くと医者が泣く』なんて言葉ができたと云われるくらいにね。だけどカリスマであった羽根満次郎氏の死後は後継者にも今ひとつぱっとしなくて、少しずつ衰退していったのですね。この時期の衰退は犬派の陰謀だ!なんていってるヒトもいるけど、陰謀にゃんて口にしちゃあダメだよね。
記者:へぇ〜、そのような歴史があったのですね。でも、最近の盛り上がりはすごいですよね。その後どうなったのですか。

道良:衰退期にも『猫養会』という団体として細々と活動を続けていたんですね。そんなある時、誰かがネコ療法にはどんな病気にでも効果があるといい始めたんですよ。その誰かというのは大澤章二という人物なのね。彼はなんというか思想家くずれな感じにゃんだけど、当時の何となく閉塞感のあった時代背景からかその過激な主張がウケちゃって、ネコ原理主義者の多くを取り込む活動になったみたいなのね。それまでは慣習的に猫療法と呼ばれていたものに、『ネコ揉み療法』と名付け、その効果はスピリチュアルヒーリングパワーにある、と提唱したのも彼なんだよね。
記者:現在広まっているネコ揉み療法の基礎を築いた人物が大澤章二氏なのですね。

道良:そうにゃんです。大澤氏の教えをそのまま受け継ぐのが『ネコ揉み療法学会』で、スピリチュアルとカジュアルを前面に出して支持を集めているのが、『ムニューダージャポン』、医師や医療業界に籍を置くヒト達が中心になって運営されているのが、『世界ネコ揉み医療協会』というわけ。
記者:ところで道良さんの提唱されているモフモフ療法はどこに位置するのでしょう?

道良:ニャハハ。実は、モフモフ療法はネコ原理主義者との争いに敗れた負けネコが集まったものなんですよね。ネコじゃなきゃダメな理由は何でですか?という質問をした瞬間に破門にされたという逸話があります。
記者:実際、ネコじゃなきゃだめな理由はあるのですか。

道良:良い質問ですね。実は、モフモフ療法でもネコが主役なんですよ。愛らしい声、モフモフのふわっふわな被毛、しなやかな体躯・・・うっとりするにゃん。癒し効果は一番高いと思いますよ。でも、ネコが苦手な方には受け入れられないですよね。そんなヒトにもモフモフの恵を!というのが当初の主張だったみたいです。
記者:当初といいますと、現在は違うのですか?

道良:そうにゃのですよ。話すと長くなりますけど聞く気ある?
記者:ええ、日曜版なので紙面をいっぱい開けてますから安心して語ってください、お願いします。

道良:我々はネコ揉み療法に対してはもう一つ大きな疑問があったのですよ。ネコ揉み療法では、ネコは治療のツールとして扱われて居るんです。ヒトの治療が最優先でその中ではネコの幸せは後回しになっちゃうんです。患者が来れば、寝ているセラピーキャットを持ち上げて診療室につれてきます。それじゃあ効果は半減ですよ。ヒトもネコも同時に幸せになれる道は無いか、それが正しいネコ揉み療法にゃのでは?そうじゃない、ネコもヒトもWIN WIN の関係を目指す『モフモフ療法』が必要なんだ、と考えたのですね。また、ネコだけじゃなくウサギでもインコでもぬいぐるみでも一応イヌでもモフモフを愛する人全てに恩恵を、という運動を行ってきたのですね。
記者:なんだか良い話ですね。ジーンときました。

道良:ところが、そんな良い話でもないんです。だって、モフモフ療法ですよ?医療も発達していない心理療法という概念すらなかった時代ならともかく、科学や医療が発達した現在では、モフモフ療法は医療とは呼べませんよね。よくてペットセラピーの一分野ってところですよ。身の程をわきみゃえないとね。
記者:これは意外なお言葉です。

道良:だから私たちは自らをオカルト団体であることを宣言したんです。オカルト宣言にゃ。
記者:確か、ネコ揉み療法は科学を装っているという理由で批判されておりましたよね。

道良:未知の概念であるスピリチュアルヒーリングパワーを前面に出すのであれば、効果を謳っちゃダメだと思うんですよね。効果を確認できるとしても、心理療法的な部分しか評価できないと思うんですよ。スピリチュアルヒーリングパワーなんて検出出来るわけもないし、ちゃんとした検証で効果が確認できていない理由を、ネコ揉み療法には二重猛犬法は御法度だからなんて逃げているのは卑怯だと思うんです。
記者:なるほど、確かにそうですよね。

道良:そんなわけで、モフモフ療法は羽根満次郎氏が記したとされる教典は実は宇宙ネコが授けたモノだった、と解釈しているんです。宇宙ネコの癒しの秘術、それがモフモフ療法であると我々は信じております。
記者:まさしくオカルトですね。では、その教えを詳しく。

道良:宇宙ネコは元々は『カリカリ』という総合栄養食を適正量食べて健康を維持し日々の活動を行っているのです。この『カリカリ』は優れた食品であり、宇宙ネコの特殊能力を発揮するための酵素生成に関わる栄養素を十分補給できるのです。ところでこの『カリカリ』という食品は味気ないものなのですよ。まぁ、宇宙食ですからね。日々の厳しい活動に疲れた彼らは『モンペチ』という嗜好食品を食べることでストレスを発散させるようになったのです。で、早い話が私たちの社会を悩ませる生活習慣病みたいなものになっちゃったわけですよ、彼らも。モンペチを食べ過ぎて、カリカリを食べなくなったネコ達は活動には欠かせない特殊能力が失われちゃったのですよ。
モンペチが原因というのは分かったのだけど、カリカリに戻れないネコ達がいっぱい居て問題になったのですよ。よ〜するにストレスですね、過酷な任務に味気ないカリカリじゃ満足できにゃいんです。カリカリのかわりになる癒しが求められたんです。

記者:それがモフモフ療法だったというわけですか?モフモフ療法を施すのは実は人間の側だったとは(笑)。

道良:そうにゃのね。任務先の先住民族に下顎や耳の後ろをモフモフしてもらうんですよ。もう至福の気持ちよさで、ストレスも吹き飛びますよ。あまりに気持ちよくてゴロゴロいっちゃいます。つまり、モフモフ療法はストレスによる抗いがたいモンペチ欲を抑制する代替療法だったんです。確かにストレス発散作用は比較対照試験でも明確に現れましたね。血液中のストレス指標物質にも大きな違いはありましたよ。でも、モンペチ欲は思った以上に強くて、モフモフ療法もやる、モンペチも食べる・・・みたいな事になっちゃうケースも続出したのね。
記者:ソレ単独では効果は限定的だったと。

道良:みゃあ、そういうこと。そのあとばっちり効く薬が開発されたので、モフモフ療法は治療の主役じゃあなくなったけど、モンペチの食べ過ぎ自体は良くないから、現在も補助的に用いられて居るんだね。ところで宇宙ネコはその外見通り(?)狡猾な奴らなんですよ。彼らはモフモフしてもらいたいので人間を手なずけるため、餌をまいたのですね。それは、自分たちの体をモフモフすると御利益がありますよ、どんな病気でも治りますよ・・・と。
記者:うわぁ、悪辣ですね。で、実際は所謂プラセボ効果だった・・・と。

道良:いや、そうじゃにゃいんです。はじめに劇的な効果を見せないと信用してくれないのですね、人間サンは。だから、最初のウチはモフモフしてくれたヒトが寝ている間に手術しちゃったり、抗菌薬を投与したりして治しちゃったりしてたわけ、ずるいでしょ。
記者:キャトルミューティレーションを想像しちゃいました。ようするに、当時の医学水準を超えた医療技術を持っていたというわけですか。

道良:モフモフする事自体には病気の治療効果は無いのだからサギみたいなものだよね。まぁ、そんにゃ感じでモフモフには秘密があるみたいな話が人間に広まって、ネコ揉み法が生まれ、現代のモフモフ療法に繋がっていく・・・というお話しなんです。
記者:元々は宇宙ネコの為のものだったというわけですね。

道良:そうなの。お話しはこれで終わりじゃなくて、もしかしたら貴方の飼い猫は宇宙ネコかも知れないですよ?ネコを大切にしていると良いことがあるかも知れませんよ?というのが私たちの教えにゃんですね。

記者:オカルトというよりはなんだかメルヘンぽいですね。

道良:ボクはメンヘルさんですけどね(笑)
記者:今日はお忙しいなかありがとう御座いました。

道良:モフモフっ!!