ちょっと食品表示のお話

ホントは、6月4日にアップする予定だったのですが、体不調により放置しておりました。

■アレルギー表示5品目から7品目へ!
平成20年6月3日に食品衛生法施行規則が改正されまして、いままでは小麦、そば、卵、乳、落花生の加工食品5品目がアレルギー物質として表示が義務付けられていたものが、えび及びかにが追加され7品目に増えました。
卵・乳・小麦は食物アレルギー発症件数が多い為で、そば・落花生は重篤な症状に陥り易いということで、従来から表示が義務づけられておりました。平成20年の改正では、えびやかになどの甲殻類は子どものみならず、成人の食物アレルギーに於いては高リスクの食品で、適切な表示が大切な食品だという指摘をうけて、同じく表示が義務づけられた経緯があるようです。

この規則には2年間の経過措置があって、改正はされたけど、表示はなるべくして下さいね、という拘束力の無いものだったのが、経過措置が平成22年の6月3日で終了となり4日から完全施行となりました。
6月4日以降に製造、加工、輸入される食品のうち、えびやかにを含むモノはルールに則って表示しなくてはなりません。

えびやかにのアレルギーの特徴は、卵や牛乳、小麦が生まれてまもなくから幼児期に発症するのが主であるのに対して、学童期以降に現れる事の多いアレルギー物質だと謂うことです。そして、えびやかににアレルギーを持つ方が、食品に含まれていることを知らないままに口に入れてしまい、被害が発生することがかなりの数にのぼっていると報告があったようです。知らないまま口に入れてしまうというのはどういう状況なのでしょうか。

■えびやかにのアレルゲン
えびアレルギーの主要アレルゲンは、トロポミオシンです。これはエビの筋肉中に含まれるタンパク質で、筋収縮に関わっているモノです。じつは、トロポミオシンはエビに独特な物質ではなく、その他の甲殻類や軟体動物も持っている事が知られております。トロポミオシンは熱に安定とされ、加熱加工後もアレルギー反応を誘発するので、加工品に含まれる場合でも十分な注意をしなければならないのですね。
ところで、この基準によるえびとかにの範囲ですが、『消費者庁食品表示アレルギー表示の一部改正の完全施行について』によると、次のようになっております。

甲殻類全体ではなく、十脚目のみを対象としている、とあります。
これは、同じトロポミオシンでも、アミノ酸配列の微妙な違いがあり、十脚目は相同性が高く、フジツボカメノテなどは相同性が低い事が明らかになったこと。(軟体動物が持つトロポミオシンも相同性が低いようです)
次に、えびアレルギーを持つヒトが他の十脚目にアレルギー反応を起こす割合(60%程度とされている)に比べて、オキアミやシャコなどでは20%程度であった。
もう一つ、交差反応性は十脚目に比べて、シャコやオキアミで差があるという結果が得られた。
これらの知見を総合して、えびとかにの範囲が決められたようです。

■意図せぬ混入
食物アレルギーはほんのちょっとアレルギー物質が体内に入るだけで、症状が出てしまう方もいる事から、原材料に少量でもアレルギー物質を含む場合でも表示が求められるのですが、今回義務づけられた、えびとかには意図せぬ混入が起こりやすくて、適正な表示が難しい食品みたいなんですね。
例えば、魚をすり身を用いた加工食品を作る場合には、魚が食べたえびやかになどを完全に除去することは難しく、意図せず混入してしまう場合がある事が知られています。また、貝類を剥いたりした経験がある人は分かると思いますが、ちっちゃいカニさんが寄生していたりします。他にも、ちりめんじゃこのチリメンモンスターとして一部の方に愛好されているような種々の稚魚にはえびやかにが混じっている事があり、取り除ききれるものではありません。
なので、そういった場合には次のような表示を行って、注意喚起を行うよう指導されています。

気がつかないで食べてしまうような事例が少しでもこの表示で回避できると良いですね。
食の安全を守るため、多くの努力が為されているのですね。今回調べてみて実感したどらねこでした。

■ひとりごと
アレルギーも程度があって、微量だったら問題ないヒトもいれば、微量でも重篤な反応がでるヒトもいる。難しいなぁ。
あと、幼子のアレルギーの場合、年齢を経るに従って耐性を獲得する場合も多いから、その場合は食物負荷試験を行って確認し、解除される事になるのね。でも、専門医のヒトも少ないだろうし、万が一の事も考えられるから、解除の指示を出すのってかなり慎重になりそうだよね。生命に関わるようなショックのリスクもあるから分かるんだけど、悩ましい気もする。
例えば牛乳アレルギーの有る子で、えび・かにアレルギーも持っていたら、献立には相当気を遣わなければならないから、ストレスもかかるだろうなぁ。
除去食を行う場合には、代替食品で十分な栄養補給できるように気を配るのだけど、牛乳が無理だとカルシウム補給のために、シラス干しなどが奨められる事が多いんだよね。そこにかにやエビの混入リスクを考えてしまうと、アレもダメコレもダメになってかなり悩みそう。アレルギーの程度を考えて、適宜用いられればいいのだけど、リスク回避に重点を置きすぎると、栄養補給もQOLも大きく損ないかねないよね。ホント難しい・・・

※参考にした資料※
厚生労働省研究班による 食物アレルギー診療の手引き2008