かつてはイケナイなら今はイイの?(頭のモヤモヤ編)

※この記事はダラダラと長い(自分でいうのもなんですが、ホント長いです)し、箇条書きにもしてないのでとっつきにくいです。次回の対策編はなるべく簡潔にまとめたいと思いますので、面倒だと思うかたはスルーしていただければと思います。



■こんなネタどう?
さて、そろそろ次のブログ記事でも書こうかな、う〜んでもネタが無い・・・と、ツイッターでグチグチとしゃべっていたら、ちきーたさんという方からこんな提案を頂きました。

https://twitter.com/chquita_/status/354494185988038656
ちきーた@寝不足 @chquita_
@doramao 最近(というか前から)「これは買ってもいい、これは買っちゃダメ」みたいな商品を選り分ける本が持て囃されてるじゃないですか。小さい子供を持つ母親は結構この手の販売テクに引っかかり易くて安易な選り分けに騙され易いのですが、こういうのを注意喚起するブログはどうですか?

どらねこも栄養成分などについて、○○は身体に良いとか悪いとか特定の成分ばかりを採り上げるようなものについて今まで何度か批判的に言及してきましたが、実際にどう気をつけたら良いのか、という視点の記事は余り書いてこなかったように思います。これは是非書いてみたいと思ったわけなのですが、どこから手をつけたら良いのでしょう。そこでツイッターでアドバイスを頂こうと思い、次のようにツイートしてみました。

道良寧子@doramao
今のRTについて、記事にしてみたいと思うのですが、皆様からも意見など頂いたり議論してみたいなぁと思います。
興味のある方は

#買ってはイケナイ?
でツイートして頂ければ嬉しいな。

そうしたところ、幾人かの方からご意見、アドバイスを頂きました。今回は頂いた意見等を紹介しつつ、どらねこの頭の中を整理し、次回を対策編として具体的な対応策などを提案してみようかな、と思っております。さて、上手にまとめることができるかしら・・・



■皆様からのアドバイス

https://twitter.com/chquita_/status/354498071217963008
ちきーた@寝不足 @chquita_
幼稚園のお迎え井戸端会議などで「なんか本に『これは危ない』って書いてあったらしいよ〜ヤバイものが入ってるらしいよー」「あーだから安売りしてたの?」程度の情報で不買意識って広がってしまうのが困る。主婦はちゃんと情報を洗わないし拾わないクセに伝播力ハンパない。 #買ってはイケナイ?

あ〜、こういうの良くありますよね。色々と取り組んでいる声の大きい方がいらっしゃって、そういう人がコレ悪いのよ知ってた?というと、追従者的な感じの人がいて、じゃあ私も気をつけないと・・・と、賛同を示すとなんとなくある商品が「アブナイもの」かもしれないと他の人も感じてしまうような状況ですね。
主婦に特別その傾向があるかは不明ですが、子供の健康を守らなきゃイケナイという使命感がそうした行動に駆り立てる原動力になりそうにも思います。



https://twitter.com/sugim/status/354499224785793024
茶色二号 @sugim
「コーラは骨を溶かすので飲んではいけない」当たりから考えると、40年以上の「買ってはいけない」歴史があるので、何を買ってはいけないのか時代別に並べてみても面白いかも… 
#買ってはイケナイ?

都市伝説的集みたいな感じになりそうですね。手間は掛かると思いますが、分析したら何か傾向をつかめそうで面白そうです。


https://twitter.com/sugim/status/354500003433160704
茶色二号 @sugim
料理教室をしていて、よく尋ねられるのが「何を選んでいいのかわからない、何を食べたらいいのか分からない」というやつ。教科書に書いてないし!真面目な人が教科書やマニュアルを求めてしまう結果が #買ってはイケナイ? なんだとおもう。


以前、性教育のお話しをさせて頂いた時にもこの話が出たことを思い出しました。人間の営みで欠くことのできない重要なものの筈なのですが、高校以降に正しい情報を教えて貰う機会は乏しいことが関係しているのかも知れません。


https://twitter.com/chquita_/status/354500378873700353
ちきーた@寝不足 @chquita_
不買意識を持って不安がってる主婦に「ちゃんと調べれば危ないか危なくないかハッキリ分かるよ」と言っても、それが面倒くさいからそういう本に頼ってるんであって、真偽は別にしてそういう情報を持って不安を振りまく自分にステイタスを持っちゃってる感じがする。 #買ってはイケナイ?

一度他人にしたり顔で情報を伝えてしまうと、それが誤っているかもしれない時にすぐに訂正を!と、なれば良いのですが、「ウソを教えたのね?」と思われたくないなどなかなか抵抗のあるものです。
この状態では自分の中では誤りかも知れないし、そうでないかも知れないという確定していない問題であると思います。手間をかけて調べた結果、実は誤っていた事が分かるのでは?寧ろ誤っている可能性が高そうだ、と見積もれば、苦労をしてまで調べ上げようとは思わなくなっても不思議はありません。
こうして考えると、本を手に取らせたような不安には原因が欲しいという心理がやっかいなのかも知れない、という事も推測されてきますね。


https://twitter.com/sugim/status/354501017662005249
茶色二号 @sugim
小さい頃、家が共同購入とかやってて自然派(?)だったので「インスタントラーメンは毒なんでしょ。食べたことないんでしょ?」とかもよく聞かれたけど、んなわけありますかいな。節度を守って食べますわいな。昔から食にこだわりはあるけど #買ってはイケナイ ものは特にないです。

自然派(?)にも勿論個人差はありますね。極端な主張の方が目立つというのはありそうです。

https://twitter.com/koume_nouka/status/354501268623990785
koume@だらだら@koume_nouka
かつてはダメ、今は?って考えた時、いろいろあるけど、今時の企業態度の話はどうかな。保存料とかの添加物はメーカーの都合であって消費者無視だみたいな話が買ってはいけない系によくあるけど、今時にそんな消費者無視やってたら絶対儲からないよね #買ってはイケナイ?


不特定多数の消費者に目線を合わせると、特定の消費者にとっては無視されたと感じてしまう事が生じるのはある意味当然だと思います。買い置きしたい、安く買いたいというようなニーズがあるからそうした商品が生まれた事を忘れてはいけないと思います。


https://twitter.com/chquita_/status/354509605528801280
ちきーた@寝不足@chquita_
かつては「本当に食べたらヤバイもの」を注意喚起していたのに、最近の情報は「この甘味料は砂糖の◯◯倍の甘さを持ってるのにカロリーも糖質もゼロ」「こんな代物が毒じゃない筈はない」みたいに不安を煽るような内容に変わっている。配合率を伏せて危険ばかりかきたてる悪質さ #買ってはイケナイ


憶測で△△に違いない!としているものが出てきたらダウト!という事ですね。ただ、かつては本当にヤバイものぐらいしか騒げる余裕が無かったとも考えられますけれど。
確かに、○○は危険だ!と煽っている人たちが証拠を掴んだらそこから責めるはずですからね。


https://twitter.com/Toteknon/status/354527344637120513
とてくのん@STOP!未成年者選挙運動 @Toteknon
ネットの情報もそうだけど、 #買ってはイケナイ 系情報って「サンヤツ広告」の定番だったりする。
「新聞の1面下」という特等席と、「フォント2種類、絵やロゴ禁止」という美意識ゆえに信頼できる情報と誤解させるために使われてるのよね。バイブル商法はまさにコレ。


大手新聞は明らかに問題のありそうなものでなければ広告掲載を拒否しないという実情と、信頼できる新聞に掲載されているものだから広告も真っ当なものだろうと判断してしまうというギャップを利用した商売ですねぇ。
このカラクリ(?)を事前に広く理解して貰うもらうためにはどうしたら良いのかしら?というところから対策は始めれば良いのかも知れませんね。


https://twitter.com/boguscorey/status/354542246982455297
コーリー(贋) @boguscorey
不安を煽る本や、他の「危険性を示して」自己の優位を示そうとする宣伝手法をとる商品 仮にそれ自体は良い商品だったとしても、そういうマーケティングの有用度が高まることこそが社会的に危険、市場から駆逐しないといけない #買ってはイケナイ


アンフェアがまかり通る社会では困りますものね。貶めた結果、誰が得をするんだろう?そういう構造の有無をみるのも良いかも知れませんね。

https://twitter.com/ushi_mo/status/354562910770561024
@ushi_mo
そういや、昨日書店で「食べるなら、どっち?」という本が平積みになっていた。チラ見したけど「添加物が」という内容を見て、昔同じような本あったよね、と思いつつ閉じた。 #買ってはイケナイ


食べてはいけないシリーズなどもありますね。というか、このリンク先の著者さんはこの類いの本を何冊も書いていますよねぇ。勝利の方程式とでもいうのかしら。


https://twitter.com/ebi_j9/status/354577020337922048
エビ @ebi_j9
これは○、アレは×のように単純化している文章  #買ってはイケナイ  そんな単純だったら誰も苦労しない。

https://twitter.com/ebi_j9/status/354577477454139393
エビ @ebi_j9
教科書的な内容を否定しているもの  #買ってはイケナイ


後編の対策編に使わせて貰います。


https://twitter.com/chquita_/status/354599069202649089
ちきーた@寝不足 @chquita_
同じ食べ物で違うメーカーやブランドが独自性をPRするのは当たり前で、その内容が価格や栄養素だったりスローフードだったりする訳で。スローである事が他製品との差別化なのは分かるが、それが必ずしも「=安全」じゃない筈なのに、なぜかそこを連想してしまう刷り込みパワー #買ってはイケナイ?


そうそう、刷り込みパワーおそるべしですよ。農薬怖いみたいな。どこで刷り込みが行われているのかも重要だと思います。これについては心当たりがあったり・・・



■どこですり込まれたの?
小さい子供を持つ母親がこうした「買ってはいけない的なもの」に敏感であるというのは、こうした本には子供の健康問題に訴えかけるようなトピックが集まっている事が影響していると思います。また、子供の健康をまもるのは母親の役目である、という圧力なんかも後押ししていると思います。
良くやり玉に挙げられるのが、食品、医薬品、洗剤(石けん)などであり、これらを使うと子供のアレルギーが悪化したり、すこやかな成長に影響を与えるなどと危険を煽っていたりします。
こうした話が受け入れられてしまうのは、ただ単に子供の健康が絡んでいるからだ、というだけではないとはどらねこは思います。

このような本などに接する前に、○○はコワイという下地がある程度できているからこそ、大きな疑いなく、本に述べられている主張がスッと入ってきてしまうのではないでしょうか。


流れとしてはこんな感じでしょうか・・・

すりこみ→関連する事故や有害事象のニュースを目にする→強固なものになる


学校で学んだことであれば、子供はあまり疑問を持たないことでしょう。しかし、学校教えるものの中には事実関係があやふやなままにイメージを優先したものも紛れ込んだりします。どらねこがたびたび採り上げる食育の話もそうですし、EMをはじめとする環境教育なども良い話として紹介されたりします。



食品添加物のTOSS授業案

http://www.tos-land.net/teaching_plan/contents/2772
添加物は、人間が化学的に作ったものです。
添加物は最近になってたくさん使われるようになりました。
安全かどうか疑わしいものがあると言われます。
とりすぎると、ガンやアレルギー、いらいらし切れやすくなる原因の一つになっていると言われます。
妊娠中のお母さんが取りすぎるとおなかの赤ちゃんに悪い影響を与えると言われています。



農薬に言及のあるTOSS授業案

http://www.tos-land.net/teaching_plan/contents/3213
事例3 いじめにあった野球部員をバットで殴打したあと、母親を殺害してしまった事件
この少年の場合は食の崩壊は外側からは見られない。夕食は家族で食卓を囲んでいた。
外食もほとんどしていない。豊かな自然環境で育ち、近所でも優等生として有名だった。
この少年の場合は農薬などの化学物質が原因なのではないだろうか。
続いてさらに詳しく食の重要さを見ていきたい。

食品添加物は恐ろしい」、「農薬は危険だ」という教育*1だけではなく、親と買い物に行くだけでそうした情報にさらされるという現実があります。スーパーの売り場には無農薬だから安全安心という商品が並んでいますが、それは農薬が危険であるという事の裏返しという意味であることは子供は察する事でしょう。
こうして、「農薬・食品添加物=危険」という認識が作られていくわけです。このような流れは以前からあるもので、懸念が払拭されないままに再生産され続けていると考えられます。



■危険なイメージはいつ生まれたのだろう
こうしたイメージは高度経済成長期に起きたいくつもの哀しい事件や事故をきっかけに形成されたものと考える事ができます。この当時は単なるイメージだけではない、危険な農薬や食品添加物が存在しておりました。
主な事件や事故を振り返ってみます。1955年には全国で130名という大勢の乳児の命が失われた森永ヒ素ミルク事件がありました。安定剤として用いられた物質にヒ素が含まれていたことによるヒ素中毒ですが、不純物の多い工業用の安価な薬品を食品に使用したことが原因でした。

1968年にはズルチンという甘味料を使用したボタモチで死亡事故があり、同年ズルチンは添加物指定から除外となりました。
同68年にはカネミ油症事件。米ぬか油にPCB*2が混入し、28名が死亡するというものです。
1975年、米国からの輸入かんきつ類から指定外添加物である、OPPが検出されたとして、輸入を差し止めたり、一部廃棄処分にするという出来事がありました。これについては、その後アメリカからの申し入れに従い、1977年にOPPを食品添加物として指定することとなり、輸入が可能となりました。この一連の対応により、消費者に不信感が生まれたとされております。

これらは大きな出来事の他にも、戦後の混乱期や安全性よりも生産性を重視した時代には、不純物の多い添加物や安全性が確認されていない農薬などによる健康被害などが問題となることがいくつもありました。

このような悲惨な事件を経験したことにより、安全な食品を供給するためのしっかりとした体制が整えられた*3という事もありますが、あまりに印象に残る悲惨な出来事であったために、食品添加物は危険であるという認識がアップデートの機会の無いままに定着してしまったのだろうと考えます。



■一人歩きする危険性
こうした認識がなんとなく社会全体で共有されてしまうと、食品添加物や農薬などが原因の問題などが発生したときに規模や危険性以上に注目される事になります。報道でも取り扱いは大きくなり、人々への印象だけが大きく残ります。
サッカリンおよびサッカリンナトリウムなどは、発がん性があるという指摘から一度その使用が禁じられましたが、その後の追試などにより安全性は確認され使用可能となりましたが、未だにサッカリンと聞くと危険な甘味料である、という認識をする人も多い事でしょう。
こうして、現在でも過去の悲しい出来事の印象に基づいた、「食品添加物」、「農薬」は危険なものというなんとなくの前提が共有されてしまっているわけなのです。

こうした連鎖を止めるために公教育の果たす役割はとても大事であるとどらねこは考えるのですが、そうした認識を再生産するような教科書の記述や授業には退場していただかなければならないと思っております。


■危険のないものはない
見出し通りです。
完全に安全な食べものなんてありませんし、ほとんどの人では大丈夫だけどある人には害をもたらすたべものだってあります。とはいえ、自分が大好きで信頼している食べものについてはそんな詮索をしないものです。だから危険性(気にすることの無いような)もスルーされます。ところが、なんとなく危険だと感じている食材についてはどうでしょうか?どんなものが入っているのか気になるでしょうし、そうした食品の問題を暴くというタイトルがあれば手に取るかも知れません。
○○は危険というイメージができあがってしまえば、危険性が全くない食品なんてないから、いくらでもそうした危険性は書くことができますし、自分の推察を支持してくれる言説は認めるまでのハードルが低くなる傾向があるから、すっと受け入れられても不思議はありません。


■気にするのは誰のため
と、ここまでいろいろと本当にダラダラと書いてきましたが、こうした良くないというイメージが植え付けられているのにも拘わらず、たいていの人はなんとなく気にするぐらいで、値段や見かけ、好みなどを優先して購入しているように感じます。
たいていの人は物事を合理的に考え判断をするので、「なんとなく」で完全に忌避するという行動には至らないと考えられます。それが、なんらかの不祥事や事件事故などが耳に入ると、「なんとなく」が、「やっぱり」となり大きな消費行動の変化となりあらわれるのだろうと思います。
では、そうした大きな不祥事などがなくても、「○○はダメ」というような本に影響を受ける人が無視できないレベルでいらっしゃるというのはどういう事なのでしょう。
普段は気にとめないことでも自分もしくは子供が健康面で不安を持っていたり、それが原因不明や治療が難しいものの場合などには、「○○が原因らしい」という説にも敏感に反応しても不思議はありません。それが何の脈絡もない食品ではなく、それ以前から何となく良くなさそうだと感じていたものであればすんなり入っていきやすいと考えられるでしょう。


■追いつめない追い込まれない
普段は合理的に考える事のできる人でも、色々なことで心が参ってしまっているときや、藁にもすがりたいような状況の時には冷静に判断できるはずもありません。こうした情報にとびつくのは「女性」や「母親」に多い、という話がありますが、子育ての問題で責任を感じている人が女性に多いという事であるのかもしれません。これらを放置しない事も予防として忘れてはならないことだと考えます。
何らかの不安を持つ人、それも子供の問題については、何も行動しないで見ているのはとてもつらい事なんです。
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110215/1297739429


■対策編へ
そんなわけで次回対策編につづくわけなのですが、ちゃんと役に立つような記事が書けるのか全く自信がありません。なので、皆様からのアドバイスは引き続き募集中です。ヨロモフ

*1:TOSSだけに限らず、教科書にも危険であるというイメージに基づいた記述があると、情報セキュリティ大学院大学セキュアシステム研究所客員研究員の蒲生恵美さんがスライド資料で紹介なさっています。http://www.usdajapan.org/jp/newsroom/2010/201005IFIApresen/201005DrGamo.pdf#search='%E8%BE%B2%E8%96%AC+%E6%95%99%E7%A7%91%E6%9B%B8+%E5%88%B7%E3%82%8A%E8%BE%BC%E3%81%BF'

*2:ポリ塩化ジベンゾフラン

*3:とはいえ、今現在は絶対に安全であるというわけではなく、事故は起こりうるものとして、発生させない努力と、監視体制が重要なのはいうまでもないでしょう