水はガブガブ飲めば良い?(後編)

後編では、水分摂取時に気をつけたいことを書いてみます。尚、この記事に書かれた内容は生理学、生化学の基礎を踏まえておりますが、どらねこ個人の見解を含む読みものとして受け取ってください。何らかの参考になれば嬉しいです。

【脱水タイプ別の基本的対応法】

図中に対応法を書きましたが、大切なのは脱水の原因を除去することだと思います。アタリマエなのですが、原因が無ければ脱水はおこりませんし、原因をそのままにしていては、脱水を繰り返すことになります。また、原因によっては基本の対処方法が不適切になる場合もあります。

例)糖尿病の高血糖による脱水症状
血糖値が高くなることで血液の浸透圧が高くなり、体内全体では水分は足りていても細胞内では脱水状態という事になります。これは水分を補うだけではだめで、血糖のコントロールが優先されますね。

以上のように、水が足りないからといって、ただ単に水をガブガブ飲めば良いということは無いのです。うっ血性心不全の持病がある人は、塩分を控えめにし、必要に応じて水分量を調整します。ガブガブ飲むと浮腫を促進しかねません。

→図中には『経口補水塩』というコトバが出ておりますが、それについて述べた拙エントリも御座いますので、興味のある方はどうぞ。
※参考※→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20121214/1355466153

【脱水の予防】
■高齢者の脱水
高張性脱水は、喉が渇いてしょうがなくなるのが一般的ですので、自分で自由に水を飲める状態にある人は殆ど心配する必要は無いといっても良いでしょう。気をつけなければいけないのは、喉の渇きを自覚出来なくなった高齢者です。予防策としては、決められた時間に適量の水を飲む習慣をつける事が大事です。気温が高くなると不感蒸泄が増えますので、室温によって摂取量を調整することが求められます。
■赤ちゃん、子供の脱水
消化管が未発達であり、免疫力も高くない時期ですので、下痢や嘔吐により水分が急速に失われる事がよくあります。吸収の良い経口補水塩を事前に準備しておくと良いでしょう。腸に炎症を起こした後は乳糖分解酵素の働きが低下する事がよく見られますので、乳製品は控えた方がよいでしょう。
■スポーツによる脱水の予防(要望によりボリュームアップ)
昔は練習中には水を飲むな!という精神論(?)的指導がありましたので、脱水症や熱中症を助長した事と思います。今では競技中の水分摂取が大切であると多くの方に認知されておりますが、必ずしも適切な水分補給が出来ていないのでは?という心配もあります。
ラソンを例に水分補給を考えてみます。忘れてはならないのは、気温の問題です。レース開始時よりもレース中に気温が高くなる事が一般的です。最高気温を意識して、レースに臨む事が求められます。気温が高くなればなるほど、脱水や熱中症の危険性は高くなります。趣味で走る方では、30℃近くなる事が予測される場合、レースを中断する事も選択肢の一つだと思います。あと、もう一つは必要以上の汗をかかないようにする、というのが有ります。何の為に汗が出るのかというと、体温を下げる為に汗をかくのですよね。(アタリマエすぎてすみません)しかし、汗の量が一定時間に一定以上の量となると、水分が体を伝って流れ出るようになります。汗で体温が下がるのは、気化による吸熱反応によりますよね?気化が追っつかない程の汗では、失われる水分の割に体温は減少しないのです。でも、体は熱いから汗をかこうとする・・・悪循環ですね。水をかけて体を冷やしてあげる事や汗を蒸発させやすいよう、タオルで拭き取ったり、適切なウェアを着るなどの対応が必要になります。
水分摂取も十分気をつけなければいけません。まず、レース前にはある程度の水を飲んでおくと良いでしょう。レース中の水分は塩分量0.1〜0.2%程度含んでいるものが良いでしょう。また、糖質がある程度含まれていると吸収も良くなると思います。市民レースでは水しかとれない事もあるかと思いますが、低ナトリウム血症を引き起こす危険がありますので、飲み過ぎには注意しましょう。日頃の練習でどれくらい水分が失われるかを把握しておくと必要な水分が予測できますね。普段あまり練習していないヒトでは特にレース中の水分摂取に気を遣って欲しいと謂うことでもあります。

なんだか書き足りない気がするので、次回は余談編をお送りします。にゃん