どらイモふたたび

※妄想エントリ注意※

貴方は覚えているだろうか、このアホなブログの初期に出てきたとあるイモを。

あれから60年、『どらどら村』『土良町』と呼ばれるようになり、決して豊ではないが、それなりの発展を遂げていた。しかし、この処の不況の影響は大きく、産業基盤が脆弱な町の財政は困窮を極めていた。
何とか、町を活性化できないものか・・・
「最近は健康食品ブームだと云われている。我が町の特産物から売れる健康食品を開発できないだろうか」土良町のとある場所で大切な会議が行われていた。
なるほど、隣の家鴨市は近年、家鴨大学と連携により開発された健康食品が空前絶後の爆発的ヒット商品となり、原材料となる農産物の取引価格は10倍にも跳ね上がったという。我が町の特産物からそんな凄い商品が生まれれば・・・
「しかし、我が町の特産物といえば、どらイモくらいしか思いつかないよなぁ。しかも、有毒成分が入っていると指摘されて以来、生産量も激減している有様だよ」
「いや、そんなに悲観することは無いと思うぞ。例の健康食品は当初考えていた果実には含まれていなくて、その種に有効成分が入っていたのだそうな。どらイモはあれ以来人気が無いが、最近はなんとなく健康に良さそうと云うことで、葉っぱや実を乾燥させてお茶として飲んでいるヒトもいるそうだよ。たしか、どら実とか、どら茶と呼んで利用しているらしい」
「う〜む、そう云えば聞いたことがある。我が町出身の偉人、『名護右衛門』氏は幼少の頃、どらイモの葉を煎じて飲み、おねしょを治したという逸話が残っている。健康に役立つ成分が含まれていても不思議はないな・・・」
こうして、どらイモからの健康に役立つ成分の探索を家鴨大学に持ちかけることとなった。

産学官の連携を進めていた家鴨大学にとって、この話は願ったり叶ったりで、計画はトントン拍子に進んでいった。当初の目論見からは外れたモノの、どらイモの花から興味深い成分を分離することができたのだ。
なんと、世間を騒がせている、『流行性認知症ウイルス』の増殖を細胞実験レベルで抑制させる効果が見出されたのだ。この報告に大喜びの土良町の皆さん、久しぶりの明るいニュースです。

※地元メディアは大学を取材、記事のタイトルはこちら※

『どらイモの花に流行性認知症の予防効果!!家鴨大学の研究チームが発見』
地元の産業界の動きは速かった。早速、どらイモの花を売り出すべく、商品開発に取りかかった。生産者も負けては居ない。産直市場にどらイモの花コーナーを特設して、手書きポップに『流行性認知症予防にどらイモの花!家鴨大学が証明』


この連携事業の結果に皆、万々歳・・・なのだろうか?

家鴨大学にとっては、研究資金や人材の提供などが期待できるこの事業は大変有りがたいものであったろう。そして、望ましい結果を見出した、この研究は大変意義のあるモノであった。現時点で謂えることは、細胞実験レベルに於いて、ウイルスの増殖を抑制する作用がを確認したという事だけ。今後は作用機序の解明、動物実験を経て、ヒトに用いる価値があるものかどうかを見極めていく必要があるわけね。
現状ではコレ以上の事は言えない。アクまで可能性の話にすぎないし、可能性としてもそんなに大きくないことは知っている(はず)。でも、少ない可能性の中に宝が埋まっている事を夢見て研究を続ける、これは大切なこと。
自分が研究者だったら・・・自分の研究に資金を出してくださる方がいたらとっても嬉しいし、その成果を喜んでくださったらもっと嬉しい。応援してくれる方を喜ばせたい。応援してくださる方の期待に応えたい。そんなのアタリマエだよね。
自分が学校の経営者だったら・・・う〜ん、コレは正直あまり想像がつかない。でも、地域連携とか成果を出せとかそういった要望があるだろうから、実績は作りたいはず。プレスリリースで成果をアピール、文面はやや誇張しちゃうかしら?
得られた成果についての官に関わる不安な点ってなんだろう。得られた結果を基に次の事業を推進するんだろうけど、得られた結果に対する評価というのは出来るのかしら?研究成果を活用すべく、どらイモ推進ポスターを貼ったり、健康展を開催して花エキスを飲もう!なんてキャンペーンをやるかもしれない。

各分野間には利益の相反があるんだよね、当然ながら。研究推進の原動力はそれぞれこんな感じだろうか。

研究→知的好奇心

産業→利益の追求

官→公共益

研究費の乏しい分野については、研究費を得るために目をつぶってしまう部分があるような気がする。ていうか、じぶんだったらやりそう

産だったら、投資した金額以上のリターンを期待するのは当然だよね。
この花をつかって健康食品を売り出したいと思ったら、できる限りの拡大解釈をして売り込みを図りたい。折角大学との共同事業なんだから、大学の名前も前面に出したいよね。「地域の活力になるんですよ、先生!おねがいしますよ〜っ」みたいなかんじ。

産学官連携!『猫澤食品のスーパードライモフラワーXX』は家鴨大学との共同研究により開発された次世代の健康食品です。ドライモの花抽出成分に流行性認知症ウイルスの増殖を抑える作用が有ることが鴨下教授の研究により明らかにされました。どらイモはどらどら地方に代々伝わる由緒正しき歴史のある健康食物です。貴方もどらイモパワーで病気を撃退しましょう!

なんて、売り文句を考えるかも知れない。

健康食品の展示会などで産学官連携の文字が躍っていると、ついつい、こんな妄想してしまうのだ。
夢の健康食材●●に含まれる△△は年齢とともに失われる成分を持つことが■■大学との共同研究で明らかにされました。当社の○□は●●由来の△△が一錠当たり3000μgも含まれている、アンチエイジング食品です。
大学や研究者はこのような商品開発及び宣伝にどのような認識を持っているのだろう?
此処の成分が体内で振る舞う挙動について明らかにしたことだけでは、健康に資するかどうかの判断を下すことは出来ないというのは当然の認識の筈なのに。
基礎的な研究に対する予算削減が進む事でこの状況を悪化させないだろうか?バラエティ番組での健康情報の扱い方をみているとそんな些細な事も心配になってしまうのだ。
『誰か安心させて!!』