食品の表示などにおもったこと

あるホテルにおいて、不適切なメニュー表示がなされていた事が明らかになりニュース等で話題になっております。これはどらねこにとっても気になるニュースです。メニューの情報って結構食品選択に影響を与えるんじゃないかと思います。

はじめから何を食べようか決めてなかった場合、メニューを見て「あっこれ美味しそう食べたいなぁ」と思わせるような紹介がメニューに載っていたりすると思わず注文したくなる事はあるんじゃないかと思います。予算は600円くらいかなぁと考えていたけど『採れたて今が旬「山のキノコのじゅ〜じゅ〜炒め」オススメです。880円』なんて書かれていれば、ソレお願いします!なんていってしまいそうです。ところが、その表示が実はデタラメで、キノコは栽培ものであったとすればどうでしょう。「山のキノコ」の表示がなければおそらくそのメニューを選択しなかったことでしょう。

加工食品でも外食メニューでも、表示についてはキチンとして貰いたいものです。この件を切っ掛けに、食品表示について普段から思っている事や、どらねこが昔スーパーで働いていたときに悩んだりしたことを記事にしてみようと思いました。
(そんなわけで、ホテルのメニュー表示問題について言及をする趣旨の記事ではありません)


食品表示のちがい
どらねこが述べるのは、主に加工食品などの包装に記載される食品表示のお話しです。加工食品などの表示のルールはそのまま外食には適用されません。
例えば、原産地表示ですが、メニューに原産地を表示しなさいという決まりはなく、業者が自主的におこなうもの、とされております。



外食における原産地表示に関するガイドラインより
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/gensanti_guide/

ガイドラインは、消費者のメニュー選択に資する情報提供を行うとの観点から、外食事業者が自主的にメニューの原材料の原産地を表示する上での指針であり、各外食事業者の業種・業態等の実情に応じた原材料の原産地等の表示の自主的な取組を促すためのものである。

つまり、加工食品の場合には原産地表示違反はJAS法に基づいた指導、指示、公表が行われますが、外食メニューではJAS法の対象外となります。


食品表示の意義
加工食品であれ、外食であれ食品表示を行う意味や意義には大きな違いはないようにどらねこは思います。
業者側から考えれば、食品表示が商品の中身が安全で問題の無いこと、優れていること、喫食事の事故やトラブル防止、情報を必要とする消費者に伝えるなどの意義があります。
消費者側から考えると、食品の保存など取り扱い方の参考、健康など栄養改善面での参考、品質に関する取捨選択の参考などでしょうか。
食品表示により、両者の利害が一致し、適正に運営されている限りは問題ないのですが、表示内容によって消費行動に大きな影響があるのならば、なるべく売れるように表示内容等に工夫をこらそうとするのは自然な流れであり、そこに誤りや過剰な表現など違反がなされたときに問題となるのだと思います。
また、違反とはいえなくとも、その趣旨に反した表示がなされる事もまた問題になるでしょう。食品表示を信用して購入した消費者の期待を裏切るようなモノがあれば食品表示の信頼を揺るがしかねません。


■手作りシール
これはスーパーで働いていた頃の話です。店で加工、調理し、包装して販売する商品については、基準にそって容器包装に記載して販売しておりました。決められている項目については良いのですが、任意表示の部分については、外食産業の産地表示と似たような問題があり、シールを貼りながらちょっと悩んだことがありました。
それは「作りたて」「手作り」というシールを貼るか貼らないか、という問題でした。
こうした表現のシールは「任意表示」に分類されるもので、「作りたて」という言葉にもできてから何時間以内というような基準はありません。販売店の良心に任されているといえるでしょう。しかし、お店の考える「作りたて」と、商品を手に取る消費者の「作りたて」には大きな差があるあるかもしれません。お店のよく見える場所に「当店の作りたてはできてから○時間以内のものです」というアナウンスがあれば別ですが、そうで無い場合には誤解をまねくもとではないかという気がしました。
それよりもやっかいなのが「手作り」シールです。冷凍食品を仕入れ、それを店で揚げて販売する事もあるのですが、その冷凍食品の商品名が「手作り唐揚げ」というものだったりすると、段ボール内に「手作り唐揚げ」と書かれたシールが同梱されている場合*1があります。悩ましいのは、このシールを包装ラップの上に貼るかどうかという事です。
消費者目線で考えれば「手作り唐揚げ」というシールは、お店で衣付けから手作りをしたというイメージだと思います。そういう商品名のものを店内で揚げただけとは想像しにくいのではないでしょうか。
こうしたときに、ウソはついていないし、その方が売れるのだからシールを貼っても良いのではないか、と考えてしまうか否か、これが食品表示における偽装問題の分かれ道の一つなのかも知れないなぁと今になって思ったりもするのですね。当時は忙しさの中深くは考えませんでしたが、誠実さという観点ではのぞましくない行為*2なのだろうと思います。


■ウソはついてない
程度の違いはあれ、こうした例は他にもあるでしょう。良くわだいになるものでは、植物油のコレステロール表示でしょうか。

健康応援!
モフモフキャノーラ油
コレステロール「0」

「最近ぷくぷくしてきて、コレステロールもやばいのよね、サラダ油もコレステロール0表示のこの商品にしましょ」
商品選択の際、こんな感じでこの表示のある商品を選ぶ人もいるかも知れません。
でもよく考えてみますと、ちょっとおかしいのですよね。だって植物性食品にはコレステロールがほとんど含まれていないのが普通なのですから。
コレステロールというものは、動物の細胞を構成する重要な成分なのですが、植物ではそのかわりにフィトステロール*3と呼ばれる類似物質が機能を代替しており、コレステロールは含まれていてもわずかな量しかありません。それを証拠に「食品標準成分表2010」を見ても野菜で100gあたりコレステロールを1mg以上含む食品はわずか3つしかありません。他は微量もしくは0と推定されているモノばかりです。
植物を原料とした油のコレステロールは、なたね油と大豆油で100mlあたり1mgで、調合油が一番高くて2mgです。栄養成分表示の決まりでは「コレステロール0表示」をするには、100mlあたり5mg未満であれば可能となっているため、市販されているような植物油はすべてコレステロール0表示が可能だろうという事になります。
コレステロールは身体に悪い、油にはコレステロールが入っているモノだろうというイメージを利用した販売促進策だと思いますが、ウソは無いものの誠実では無いとどらねこには感じられます。
また類似の例としては、農薬をあまり必要としないような原木栽培の椎茸に対し「無農薬原木栽培」というシールを貼って差別化を図るようなものも同じようなイメージを利用したものと考えられるでしょう。


■おわりに
食品表示は誰のためにあるのだろうと考えると、それは消費者のためのものであり、業者にしても表示のルールがある事により、商品の中身を誤解無く消費者に届けることができるというメリットがあるはずです。
上に述べてきたような、表示のルールは無いので問題はない(?)というものや、表示にウソはないのだからかまわないだろう、というものは食品表示の精神に背くモノでは無いかと、どらねこは感じます。
信頼が損なわれれば、相手に信用して貰う為のコストは大きくなってしまいます。検査を義務づけたり、第三者機関に分析を依頼をしたり、抜き打ちテストをしたり・・・。結局それは、業界全体のコストにもなりますし、消費者には価格として跳ね返ってきます。
ルールをその精神にのっとり守る事は自分たちのためである、その気持ちに立ち返って考えていただく切っ掛けになればいいなぁ、そう思いました。

*1:スーパーの精肉コーナーなどで発泡トレーに入っているソーセージやハムなどを見ると、包装してあるラップなどの上にカラフルな商品名の書かれたシールが貼ってあったりしますが、業務用商品の段ボールの中にそうしたシールが入っていたりするのです。貼って販売して下さいね、という意図なのでしょう

*2:表示については規制はないものの、消費者に誤認を与えないことが大事で、表示内容については根拠をもって説明できなければならないでしょう。食品表示のQ&Aなどではそのように書かれていたりします

*3:植物ステロールとも