砂糖についてちょこっと語ってみた

Butayama3という方がまとめた、「エビさん、砂糖と甘味料について大いに語る。(小比良さんお話し会番外編)」というツイートまとめを読みました。→http://togetter.com/li/317080

6/3の小比良さんお話し会の際、事前に質問を募りました。
そのなかに、砂糖と甘味料の害に関する問いがありました。
食の安全の専門家、添加物マニア(笑)のエビさんがきちんと調べてきてくれていたにも関わらず、当日フィードバックができませんでした。(ごめん・・・。)
でもかえって、TWでゆっくり語ってもらえてよかったかも・・・。 by Butayama3

詳しい内容はまとめそのものをどうぞ読んで下さい。
どらねこも砂糖を有害視する言説について過去何度か採り上げたこともあり、こうした砂糖有害論に対し何かを書いてみたくなりました。当該まとめとは違った視点で砂糖と健康についてちょこっと書いてみようと思います。



■教育現場でも?
砂糖はずいぶんと色々な方面から批判されることが多いのですが、食育を謳った本でも害悪について採り上げられたりもするのでちょっとゲンナリしてしまいます。その一つに、TOSS食育でも推薦されていた大沢博さんの著作*1があります。これについてはこちらで*2で採り上げておりますので、興味のある方は参照して下さい。さほど知名度は無いと思うのですが、砂糖=悪という主観に基づき書かれた内容が義務教育の現場に食育として登場すると考えれば問題の深刻さが理解できると思います。水からの伝言に対する批判のお陰か、そうしたトンデモない言説を採り上げたTOSS指導案がネット上で見られなくなってきたように感じておりますが、本当であれば嬉しい限りです。


■マクロビ(食養)での批判
砂糖有害論で忘れてはならないのは、やはりマクロビ系のお話しでしょう。マクロビオティックの教えには、食材は丸ごとすべて食べましょうというという趣旨のものがあります。それは精製された食品は栄養成分が抜けてしまい、本来食品が持っていたバランスを損なったダメな食べ物になってしまうというものです。しかし、よく考えて下さい、砂糖なんて味を調える調味料ですよ?調味料は栄養素摂取源として期待されるようなものじゃないですよね。他にも砂糖の怖さを煽るためか、砂糖を食べ過ぎるとカルシウムが奪われるなんて説も紹介されたりしますが、これも過去記事でおかしさを指摘してます。ちょっと引用しておきます。

【砂糖はミネラル分を奪う?】
乳酸が発生して血液が産生に傾きそうになるのを調整するためにミネラルが消費されるという理屈自体はあり得る話です。高ピルビン酸血症や高乳酸血症などでは確かに体のカルシウムは排出されやすくなると思いますが、それらは病気が原因により起こるモノです。健康人が偏った食生活をおこなうぐらいで顕れるようなモノではないとおもいます。また、乳酸は糖質が代謝されるような嫌気的なエネルギー生成反応で出来上がりますが、これは運動などをすると筋肉ではそのような反応がおこり、乳酸が生成するワケなのですけど、運動するとカルシウム排泄が促進されるのでしょうか、よく分かりません。


【砂糖にはビタミンB1がないから悪い?】
ビタミンB1が不足していると、確かにピルビン酸からアセチルCoAへの転換が滞りそうです。でも、食事バランスガイドなどで推奨されるような食事をしていれば、ビタミンB1の欠乏は起こらないと思うのですね。例えば豚肉には豊富なビタミンB1が存在しています。玄米を食べなくても、白米と豚肉で代謝をするに十分なビタミンB1が確保できるのですね。偏った食生活を主張するからそのような事も心配しなければならないわけです。ある程度バランスの良い食生活をしている方は心配する必要は無いはなしです。
要するに、砂糖単独あるいはそればかり食べるような食生活なら問題になるかもしれない、という事ですね。



低血糖症にもなるの?
砂糖をとりすぎると急激にインスリンが分泌される等で糖尿病でもない人でも低血糖症を招く、という言説もあるようです。これはどうなのでしょうか?もしかすると、ごくごくまれにそのような方がいらっしゃるのかも知れません。しかし、その場合でも、砂糖ばかりを悪者にしていい理由にはなりません。
砂糖は、ブドウ糖と果糖という二種類の糖から構成されているのですが、果糖は血糖値をあまり上昇させない事がしられております。血糖を上昇させるのはブドウ糖なのですが、このブドウ糖を豊富に含んだ食品を我々はよく食べているのです。それはご飯やパンなどの主食穀物です。日常の食事で血糖に大きな影響を与える食品はごはんです。しかし、ごはんを単独で食べる場合に比べ、食物繊維や油脂を同時に食べる事でその上昇を緩やかにします。砂糖も他の食品と一緒に食べることで、その吸収をゆるやかにさせます。
誰も気にする必要もない日常の食生活に、なんとなく悪そうなイメージを持つ食品を採り上げ病気の不安を植え付ける言説にどらねこは不快感をもっております。


■じゃあ、砂糖は安心してたべて良い?
安心とかそんな簡単な話ではありません。砂糖をはじめ、精製された食品は危険!みたいな一方的な話には配慮する必要はありませんが、なかなかやっかいな調味料(食品)であることは間違いありません。
それは何かと申しますと、「美味しい」「エネルギー*3源となる」という事が関係しているお話しです。現代社会は肉体労働が減る傾向があり、食事からとったエネルギーを十分に消費できず身体に蓄えてしまう傾向があるからです。余計に蓄えられたニクイヤツといえばもうおわかりですね。食事に調味料として用いる砂糖についてよほどでない限りは気にする必要はありませんが、間食のお菓子やソフトドリンクの中に入っている砂糖*4についてはやはり気にした方が良いのです。
子どもが無制限に甘い物をほしがる、買い食いをしてしまう・・・何とかしないと。親であればそんな心配をしてしまうのはオカシナ事ではないですよね。子どもにもわかりやすい形で砂糖の問題点を教えたい、そういう気持ちを利用した物が砂糖有害論なのだろうと思います。しかし、有害論で示された害悪みたいな単純な害は実際にはありません。それに気づいた子どもはどう考えるでしょうか? やっぱり信頼関係が大事ですよね?
なので、本当の問題点を明らかにした方が良いのです。


■ソフトドリンクの問題点
砂糖を含むお菓子やソフトドリンクを食べ過ぎれば太ってしまう、という認識はとても一般的だと思います。どらねこもその通りだと思いますが、この認識が問題をややこしくしている側面もあるように思います。実際にお菓子やソフトドリンクをバクバクガブガブして、さらにご飯もおかずもモグモグをして、身体に蓄えを持ちすぎ健康を害すケースも多いでしょう。しかし、見た目がスリムで食生活にも問題のなさそうな人も注意しなければならないことがあるのです。
甘い食べ物、飲み物が好きでよく食べている割に細身の人がおります。中には運動量が十分だからという人もおりますが、そうでない人も多いのです。それは、1日のエネルギー量が過剰にならないように食事で調整しているからです。
えっ?調整して何が悪いの。どらねこテキトーな事をいうなよ、なんて思うかも知れません。しかし、ここに落とし穴があるのです。ジュースを飲みたいけど太りたくない・・・じゃあ、ジュースの熱量(カロリー)分、食事をへらしちゃえ!とかしこいダイエッターはそう考えてしまう傾向があるのです。


■食事を控えるとどうなる?
実はこうした問題点が生じる事を実証した研究*5があります。

【Soft drink intake is associated with diet quality even among young Japanese women with low soft drink intake】
栄養士養成施設で学ぶ18-20歳の女性(n=3,931)に対し、DHQ(自記式食事歴法質問票)を用い、一ヶ月間の食事を分析したもの

平均ソフトドリンク摂取量がエネルギー摂取量1000kcalあたり「0-4.4のグループ」各栄養素摂取量を100とすると、「平均60g以上のグループ」では、たんぱく質、鉄、カルシウム、食物繊維の摂取量がそれぞれ90にまで減ってしまっている事がわかったのです。この傾向は、ソフトドリンク摂取量と相関していて、量が多いほど重要な微量栄養素の摂取量が減る傾向が見られるのです。
ようするに、ソフトドリンクを飲んだ分食事を減らしている傾向があるので、ソフトドリンクに含まれないような栄養素を十分に摂る事ができていないのですね。痩せる事に一生懸命・・・でも、大好きな甘い物は減らしたくないという心理の落とし穴です。


■おわりに
砂糖や甘味料は食事の楽しさを彩る大切な食材の一つです。むやみに怖がるのもダメだし、身体に害がでるほど食べるのも良くありません。食品の持っている性質をしっかり理解し、嗜好も健康も損なわないようおつきあいしていく事が大事だとどらねこは思います。この記事が皆様にとってなんらかの参考になりましたら幸いです。

*1:大沢博『その食事では悪くなる』三五館 1999年

*2:http://d.hatena.ne.jp/doramao/20121212/1355308178

*3:どらねこはカロリーとはいわない。だって栄養士だもん!

*4:転化糖、異性化糖など含む

*5:Yamada M, Murakami K, Sasaki S, Takahashi Y, Okubo H. Soft drink intake is associated with diet quality even among young Japanese women with low soft drink intake.J Am Diet Assoc. 2008 Dec;108(12):1997-2004.