子どもに安全なホメオパシーを考えてみた

※このエントリは頭の体操目的に書かれたモノです※
ホメオパシー(一応の説明)
それは、病気を治すには病気の原因物質と類似した物質が効果を発揮する・・・つまり、毒を以て毒を制すの考え方に基づいて考案された方法だ。これの独特な処は、元物質が薄ければ薄いほど強い効力を示し、さらに希釈時に震盪という操作を合わせる事でより強くなるという思想である。元物質が含む溶媒を繰り返し溶剤で希釈を行う事でより効果は強まっていくとされる。そして、この物質をなんらかの固形物に浸透させ、それを投与する事により治療が出来るという仕組みになっている。通常ホメオパシーで処方されるような固形物(レメディ)の希釈操作では、元物質が1分子も含まれていない可能性が極めて高い。
効能を持つとされる物質が含まれていないのに、なぜに効果があると主張されるのであろうか。事実、ホメオパシーのレメディを処方された場合には、何も処方されなかった場合に比べ、症状改善効果が確認できる事が知られている。
この説明として、プラセボ効果が挙げられる。
プラセボは元々宗教的な意味合いで使用されていたとされ、「喜ぶ、喜ばせる、楽しみを与える」というような意味で用いられたとされる。それが、次第に皮肉的な意味で用いられるようになったとされ、18世紀になると、「ありきたりの手法、陳腐な、古くさい」というような意味で医学用語となり、その後次第に「作用のない物質」として定義されるようになった。
ところで、18世紀のヨーロッパでは瀉血という静脈から血を抜く方法が医療行為として行われていた。それは、悪い血液が病気を引き起こすという理解を持っていたからだ。しかし、今日では瀉血は肝臓病者への鉄除去に用いられる他は殆ど行われることの無い過去の治療法となっている。病気で体力が衰えた状態で、血液を抜くことは危険であり、清潔操作の概念すら無い状況での刃物による侵襲は細菌感染のリスクが伴うものであった事は容易に想像ができるだろう。治療どころか危険を増大させる可能性の高い手技が全盛で有ったとき、別の概念による、まったく治療効果も無いが害の無い処置が対象として行われたらどうなるだろうか?当然ながら、それ自体なんら特異的効果を有しない処置が行われた方が良好な治療成績を示したとしても全く不思議のないことだ。当時としては、ホメオパシーは奇妙でもおかしな考えでも無かったと考えられるし、当時としては有用な施術で有ったとも考えられるのだ。
先ほど述べたプラセボであるが、作用の無い物質とは謂うものの、実際には作用を持たない物質でも相手に与える方法によっては、投与を行わなかった群と比較するとなんらかの効果が確認できる事が知られている。また、プラセボ効果は不活性物質だけに現れるモノではなく、何らかの薬効を持つ薬物にも現れるものである。そして広い意味でのプラセボ効果は誰が与えたか、どのように与えられたか、どのような説明をうけたのか等によって容易に変動し、本来期待される薬効とは別の効果すら導き出すことが可能なのである。
プラセボ効果と本来の薬効を切り分ける為に二重盲検試験が行われ、薬本来の効果を知ることができるようになってきた。
これは、プラセボのような不活性物質でも、投与法の工夫により、瀉血は勿論、何もしない場合に比べて良好な結果をもたらす可能性を持つという事である。だから、18世紀19世紀前半のホメオパシー誕生当時には、比較的有効な施術であったともいえるだろう。得体の知れない不純物が混じっている可能性のある薬よりも副作用はなく、効果的にプラセボ効果を引き出す事が出来たのだから。
しかし現在、プラセボ効果と本来の薬効を切り分けられる疫学手法により、薬剤の効果を評価できるようなった。ホメオパシーのレメディはその疫学手法を用いた場合、ブランク(偽薬)が有するプラセボ効果以上の薬効は見いだせなかった。薬効成分が含まれていないのであるから当然であろう。
投与前の問診を含めてのホメオパシー治療であると主張する向きもあるが、それも又プラセボ効果の範疇である。薬効があるとする根拠とはなり得ないのだ。


ええと、なんだか如何にも尤もらしそうでシリアスな出だしですが、何となくです。自分の勉強の為に書いてみました。本題はタイトル通りで、安全なホメオパシーって有るのかなぁ、です。薬効が無いから安全なのは当たり前じゃあないの?という切り返しがありそうですが、全部かどうかは知りませんが、ホメオパシー団体はレメディ自体に効果があるという主張を行っているのという事がまず、挙げられます。もう一つ、現代医療を代替するという主張が為される事があり、予防接種に疑問を呈したり、病院で処方されるような薬剤に抵抗を持つ方がその代替として求める場合がある為問題視されていると理解しております。
そして、何より問題だと考えるのは、ホメオパシーには信頼に足る効能が確認されていないのにも関わらず、効果があると考えている方々が一定数いることだと思うのです。効果があると理解している方々の中には子どもを持つ方やこれから子どもを持つ方もいるでしょう。本人が行う限りは自己責任で済むかも知れませんが、子どもに効果が確認されない施術を標準的医療の代わりに押しつける事は肯定されないと私は思うからです。
正しかろうと理解している親が実施しても子どもに有害でないホメオパシーってあり得るのだろうか。ちょっと考えてみた。
■予防接種と抗菌薬のデトックス

このレメディは予防接種を投与する事による有害反応を抑える作用やデトックス効果があります。
このレメディは抗菌薬による悪い影響を抑える作用やデトックス作用があります。

えっ?既に効果が確認されていない事を謳っているからダメだって?そうかもしれませんね。
でも、有害であるか否かはこれだけじゃ判断出来ないかもですよ。
何を謂いたいのかと申しますと、世の中にはほぼ説得不可能と考えられる、代替療法利用者の方々がいるように私には思えます。そして、大抵彼らは予防接種や処方薬が有害なモノであるとの認識を持っております。
何とかしてそんな層の方々にも有効な処方を忌避して欲しくないと思うのですね。少なくとも子どもには消極的にでも行って貰いたいのです。
ですので、上記の四角内に示した様なレメディを薦め、予防接種や最低限の薬剤投与を推奨するのであれば有害では無いと思うのです。これは説得困難な標準医療に不信を持つ方々に予防接種を行って貰う方法としては有用ではないでしょうか。
とはいうものの、そのような考え方自体を放置すること事態がよろしくない、という意見もよく分かります。しかしながら、目の前に予測される危険から回避させる手段があるのならば・・・と、思ってしまうのもまた事実です。
そうは謂ってもやっぱり大きい穴が空いてますよね。問題の無い方式だと認識されるなら、再生産されていつまで経っても無くならないという可能性を孕んでおりますから・・・
代替医療から決別する為には、準備が足りないのかも知れません、資源が不足しているのかも知れません。人間の弱い心には難しい事なのかも知れません。でも、その為の努力がなされなければ、いつまで経っても訪れないモノですよね。


参考にした資料
代替医療のトリック: サイモン・シン&エツァート・エルンスト 青木薫 訳 新潮社(2010)
パワフル・プラセボ: Arthur K. Shapiro, Elain Shapiro 赤井正美 滝川一興 藤谷順子 訳 協同医書出版社(2003)