検証!ビタミンC療法その2



前回からの続き

ポニョ子「うわっ、きったナイ。何このおがくずみたいの。爪研いだらちゃんと掃除機かけなさいよ」
どらねこ「うるさいなぁ、さっさと本題入ろうよ。こんな掛け合い漫才だれもたのしみにしていないから。鶏和え酢、ネット上の情報をいろいろ検証*1してみようよ」

キーワード高濃度ビタミンC点滴療法『がん』
  ぽちっ

どらねこ「点滴療法を実施しているところを中心に見ていきましょう」
モニョ子「なるほど、共通点が有ることがわかりますね」
ポニョ子「ポーリングと最新の研究の結果効果が確認されたというヤツね」
どらねこ「ポーリング話の他に多くのサイトが同じ論文を引用しているね」
モニョ子「どらねこさん、こんなの*2がありました・・・」

高濃度ビタミンC療法は、米国の化学者で平和論者であるライナス・C・ポーリングにより提唱されたものです。
ライナス・C・ポーリングは、物理の分野と化学分野を融合し、分子生物学を確立させた功績で1954年にノーベル化学賞を、地上核実験中止を訴える運動などの功績で、1962年にノーベル平和賞を2度授賞するという20世紀最大の化学者です

ポニョ子「一人で2個も貰っちゃったの、この人。凄いじゃない!!こんなネコのたわごとなんかよりもよっぽどあてになりそうよね」
どらねこ「ちょっとまってよ、ボクの思いこみだけで検証しようというんじゃないからね。現時点で入手できる情報に基づいて、主張の確からしさを調べるんだよ。まずこの文章にはちょっときになるところがあるよね。wikipediaポーリングの項目を読んでみてよ」

ポーリングは1954年に「化学結合の本性、ならびに複雑な分子の構造研究」でノーベル化学賞を受賞するが、この受賞理由は主にこの分野の研究に基づくものである。

モニョ子「英語版wikipediaにも同じような事が書いてありますね。分子生物学の実績もノーベル賞級だとアピールしたいのでしょうか?」
ポニョ子「なにそれ、ちょっと雲行き怪しくなーい?」
どらねこ「あと良く引用されるこの論文だね、紹介文はだいたいこんな感じ」

例その1
2005年に米国・公的機関/国立衛生研究所(NIH)の科学者が衝撃的発表を行いました。
それは『高濃度ビタミンC点滴は、ガン細胞に対してだけ選択的に毒性として働く』という内容の論文です。
ビタミンCは自身が酸化される事により強力な抗酸化作用を発揮しますが、その際に大量の過酸化水素が発生します。
血中に投与された時、正常な細胞は過酸化水素を中和できますが、ガン細胞はこれを中和できず死んでしまうというのです。
高濃度のビタミンCはガン細胞にとって《抗ガン剤》として作用するのです。
 
例その2
2005年9月にビタミンC療法の画期的な研究論文が発表され、権威ある科学雑誌に論文が掲載されました。
その内容は、『ビタミンCは正常な細胞に影響を与えず、ガン細胞だけを殺し、副作用のない理想的な抗がん剤である』との驚くべきものです。

モニョ子「元の論文へのリンクも貼ってあることが多いですね。信用しても良さそうにみえますけど」
Pharmacologic ascorbic acid concentrations selectively kill cancer cells: action as a pro-drug to deliver hydrogen peroxide to tissues.Chen Q, Espey MG, Krishna MC, Mitchell JB, Corpe CP, Buettner GR, Shacter E, Levine M.Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Sep 20;102(38):13604-9. Epub 2005 Sep 12.

http://www.pnas.org/content/102/38/13604.full.pdf

ポニョ子「これ、ホンモノよね。サイトにも同じ図が引用されてたし。正常細胞殺してないって事でしょ?」

どらねこ「少し整理してみようよ、この論文からかんがえてみましょう」
モニョ子「この論文の内容は妥当なモノなのでしょうか」
どらねこ「うん、ボクもこの論文の結果自体は疑いようのないモノだと思う。でも、その内容からは紹介文で述べている事は読み取れないと思うよ」
ポニョ子「えっどういう事よ。聞かせて!聞かせて!」
どらねこ「興味のある人は本文を読んで貰うとして、まず図を見てみようよ。人間の悪性腫瘍細胞とネズミの悪性腫瘍細胞、そして人間の正常細胞に対して、高濃度ビタミンCを添加して、24時間後に半減させる為に必要な最低濃度をあらわしたものみたいだ。結果からは正常細胞には影響を与えず、ガン細胞のみに効果を発揮したと読み取れる」
ポニョ子「やっぱり効果有るんじゃない、すごーい!!画期的発見ヨ」
モニョ子「もしかして、この実験は人間に対して行っていないのですか」
どらねこ「うん、その通り!in vitro系の実験と言って、ガンにビタミンCが効くかもという仮説が有ったらまず試すような実験だよ。効くか効かないかわからない治療法を本当の患者さんにいきなり行う研究は倫理的に問題が在ると思うし、手間もかけられないことが多いから」
ポニョ子「でも効果があったからイーんじゃないの」
どらねこ「うん、この研究の成果はビタミンCでガン細胞を選択的にやっつけちゃうという事も勿論あるのだけど、その作用機序、ええと・・・どうやって効いているのかを明らかにした点に在ると思うんだ。みんな大好き(?)な抗酸化作用によるものじゃなくて、有る一定以上に高濃度になるとフリーラジカルを発生させて、その力でガン細胞を殺すみたいだ。普通の細胞には解毒機構が備わっているから大丈夫という仕組みらしいね。で、その高濃度というのが血中ビタミンCレベルでいうと経口摂取ではなく点滴療法でないと高められないほどの濃度という処がミソだね」
ポニョ子「すご〜い、万々歳じゃない」
どらねこ「此処まではね。実は細胞実験というのは入り口で、有望であれば、動物実験臨床試験へと進んでいくんだよね、その結果を見たあとでないと何ともいえないよね、人間の体では同じ反応が起こらないことの方が多いんだよ」
ポニョ子「な〜んだ、期待して損しちゃった、金返せっつ〜の」
モニョ子「あ、そういえば、お姉さんに100円貸してました・・・」
どらねこ「いや、基礎的研究も大事ですから・・・この方法が将来有望かどうかはともかく、世界中でがんに効く成分は探されているからね。だいたい、がんに対する化学療法として今認められている薬は、人間に対する臨床試験を経て、効果が確認されたものなんだよ、比べる対象じゃないよ。前に紹介した研究方法の信頼度を参照してみるとわかりやすいかな」

モニョ子「低い方から、権威者の報告<実験室の実験<症例報告・・・あれ、症例報告よりも下なのですね」
どらねこ「うん、棒グラフがあったり、ガン細胞を死滅させますとか書いてあると一般の人には効果がありそうに見えるけど実はそれほどでも無いと覚えておいてね。あと、細胞実験よりも動物実験の方が信憑性は高いよね」
モニョ子「・・・という事は、宣伝文はおかしくないですか?」
どらねこ「そう、紹介している論文は、高濃度ビタミンCを細胞に添加して結果を観察したものだけど、ビタミンC点滴療法の効果自体は何も論じていないんだ」
ポニョ子「やっぱり、点滴療法なんて根拠無いのね!良かったね、モニョ子解決ヨ♪」
モニョ子「まって下さい、どらねこさん。動物実験でも効果を確認した論文もありますよ。もう少し検討してみませんか」

次回に続く・・・


ポニョ子ひとりごと・・・
え〜、まだやるのぉ、もういいじゃん。NATROMさんもエントリ用意しているみたいだし、恥書く前にやめちゃえば・・・ぼそ

*1:専門家ではない者の解釈であることを頭に入れて読んでください

*2:実在するサイトを参考にしたものですが、原文ではありません