健康食と危険食⑤

彼は医師でありながら、現代医学や科学文明に対しては批判的であり、全体を診るという東洋医学、なかでも漢方を好み、食養で殆どの病気は完治できると信じている。そのようにこの本(健康食と危険食)からは読み取れる。
しかし、医師として全体を診るのだとしても、人体や生命活動について最低限度の知識は持っていて欲しいところだ。
現代医学や科学文明が何を述べているのか理解できていなければ、それらについての正しい批判を行う事はできないからだ。
陰陽表


彼はこの表に基づいてほとんどの事象を解釈しようとするが、正直みていて痛々しい。しかし、これをフムフムなんて納得しちゃう人もいるのだから、さらにイタイのだ。
オススメのイタイお話

p64
九州の海岸に育った私は、近所の悪童たちと一緒に、学校の行き帰りに畑の茄子をちぎって、塩もつけずにかじったことを思い出します。翌日はキット、何人かの子供が、「口ジケ」=口角びらんをおこしたものです。生茄子のすごい陰性の拡散、破壊力を示しています。未熟な「いちぢく」の果汁も同じように陰性の破壊力をもっています。

それ、たんにシュウ酸カルシウム針状結晶でただれちゃっただけじゃない。いちぢくはフィシンというたんぱく質分解酵素の仕業だよ。別に陰陽でなくても科学的に説明できる事象に過ぎないんだけどな。じゃあ、中庸に近い食品だったら生で食べても破壊力がないのかい?彼らの大好きな豆類は生で食べると大変な目に遇うのは有名になったよね。白は中庸の色だって謂うけれど、白インゲン豆の破壊力をなんて説明するのでしょう。中庸の破壊力?

遺伝も食事しだい?

p90-92
紫よりも外側にある紫外線は陰性の光線ということになります。紫外線で皮膚に破壊作用が起こるのを防ぐために、人の体はメラニン色素という陽性色素を皮膚に集中しますが、これが「日焼け」といわれるもので、熱帯の日射しの強いところに長く住んでいると、日焼けが固定して黒い人種という「遺伝」ができ上がってしまいます。

彼は獲得形質が遺伝するものと考えているようですね。白人の肌が白いのは高緯度地域でのビタミンD欠乏が淘汰圧として働いた結果と考えられております。(表皮にメラニン多いとビタミンDを効率よく合成できない)
この程度ならカワイイもの、次にいきましょう。

p108
妊娠中の食生活がもっと陰性に偏向しているとか、母の体質がひどく陰性ですと「白ん坊」よりもひどい肢体不自由児や精薄、または白痴さえ生まれる可能性があります。ではなぜ「白」という字を使っているのか。
天才の大脳は普通人の脳より大きく、重いのですが、本来陰性の働きをしている陰性の大脳が、人より大きいのですから、次々と偉大な思想を生み出します。
しかし、普通人の大脳より陰性ですから、その陰性が少し度を越せば狂人と言われることにもなりかねません。

えっと、なんの説明にもなってないんスけど。
しかも何を言っているのかまったく意味不明です。彼流に謂うと彼は脳の陰性度が高い状態なのでしょうね。

p109
精神分裂症という病気がどのような病気であるか、また、どうして起こるものか、どうすれば治すことが出来るかということは、陰陽の原理をマスターされた読者には、やさしいことだということもわかると思います。
分裂は遠心力であり、拡散性で、つまり、陰性であります。分裂症が食養の実行で治ったとしても別に不思議ではありません。われわれ食医の間では当たり前のことになっています。

統合失調症発症の原因は単一ではなく、先天的な素因や様々なリスク要因が重なり、それにストレスなどが引き金となり発症すると考えられております。ですので、こうすれば治るという病気ではないため、偶々根拠のない民間療法を試してみた時に状態が良くなるなんて事も大いにあり得る話だとおもう。
通常の治療を否定しなければ良いのですが、そこが心配なんだよね。

p112-113
親に似ているとか、親の持病がその子に現れたということだけで、遺伝という宿命的な烙印を病人に押しつけることは間違っています。
もし鼻の低い両親の子に、兄や姉ともちがって鼻の高い子供がうまれたら、それは隔世遺伝だろう、と一般にいわれていますが、その祖父母もまた鼻の低い人であったらどういうことになるか、突然変異という便利な学問的臭いのする術後で片付けられそうです。
<中略>
月に一、二回出張しては、村の人たちに食養を語り、病人を指導しました。その病人の中にTさんという中年の農夫がいて、肋膜炎で寝ていましたが、食養と漢方薬で二ヶ月後には全快しました。
それから一年後のことでした。熊谷校長はおだやかに笑いながら「Tさんの家には先日四番目の子供が生まれたが、どうも河内先生の子らしいと部落の評判になっていますよ」という。私が二、三回Tさんの家に泊まったことと、生まれた子が上の三人とは全く似ていないのみか、鼻筋が通って、目が細いなど、どうやら私によく似ているというわけです。
陰性食をたくさん食べながら懐妊し、生まれて来る丸くて大きい目の兄や姉たちとと違って、キリッと緊って切れ長の細い目に高い鼻、何となくノーブルな感じの子が生まれることは、食養を実行する家庭では、「食養的人相」といわえて当たり前のことになっています。

遺伝の仕組みを理解していないようですね。(どらねこも自信ないけどこの人よりはマシだと思う、ゴメン)
まず、配偶子を形成するために減数分裂を行うのですが、人間だったら23組の相同染色体は46本の染色体を持っているから、できあがる配偶子は2の23乗通りで、更に精子と卵の組み合わになるから、トンデモナイほど多様組み合わせの子供が誕生するのね。これで同じ容姿の子供が生まれない事が分かります。他にも相同染色体がくっついて2価染色体になるときにもDNAの組み替えが行われる(相同組替え)が行われておりますので、2度と同じ組み合わせの子供が生まれない程の確率になるのだっけか・・・(何コレ)
マメのシワぐらいの理解で遺伝を語るのはチャンチャラおかしいのです。
食と遺伝の関連ではエピジェネティクスが影響してくると思いますが、通常の遺伝を無視して語れるものではないし、その影響は食養如きで語れるほど単純ではない。
「食養的人相」があるとしても、栄養失調で飢えているからなんて感じじゃあないの?(無責任)

p117
一般に「遺伝的」とか「遺伝性」という言葉が簡単に使われている生まれつきの病気あるいは状態(若禿げとか、色が黒いとか、髪の毛がちぢれているとか、若くて白髪になるなど、一般には病気とは考えられていないもの)が、生活の大きい変化(主として食生活)や、意識的に、あるいは計画的に実行された食養の実行などで、数ヶ月ないし一、二年で治ったり急変かを起こした例は数えきれないほどあります。
こうして一般にいわれている遺伝という考え方を否定して、われわれは「食伝」であると考えています。
食伝という考え方は、狭い意味では一人の生命が母の体内で始まる前、すなわち、精虫と卵子のそれぞれに対して、父や母の食生活の影響が与えられている、そのころからのことを、陰陽的に考えます。ついで、一つの精虫と卵子が合体して受胎した時から二百八十日の間に、母の食べ物がその血液や羊水を介して与える胎児への影響を、陰陽的にとらえるわけです。

それって、ホントに日常レベルで交わされる会話での「遺伝」じゃん。先天的なものかどうか実際に調査されてないものを否定して「食伝」の論拠にしないように。遺伝が影響する場合でも、その発現は環境に依存することも多いし、例えば遺伝的に脂質異常症を発症する素因があれば、それこそ食事療法は重要だ。この場合は遺伝を否定することなく、状況を説明することができるわけだ。
このような食伝の考え方を聞かされた母親は、生まれてきた子供になんらかの病気が見つかったとき、自分を責めてしまうよね、きっと。真面目な人ほどショックはでかいよ。で、その時こういうのだろう。
「食養を実践すれば、きっと健康に育ちますよ、今からでも遅くありません」ってね。

p137
鼻の下はなぜ長くなるのか。鼻の下が長いとなぜ「だらしない男性」が連想されるのか。妊娠中の食物に砂糖や果物などの陰性食が多すぎますと、陰性にかたよった子供が生まれるのは当然ですが、生まれつきに加えて幼少年期の食物が陰性だと、細長い逆三角形型か長い四角の顔になりやすいものです。
陰性過剰は緊まりや弾力の不足でもありますから、顔や内臓は下垂しやすく、下垂すると眼瞼が視野を邪魔するので、無意識のうちに引き上げています。これが前額部の横シワです。青少年ですでにこの横シワが二、三本も出来ているようでは、その子の将来が心配です。
鼻の下が長くなるのも、下唇がふやけて厚くなってくるのも、前額の横シワも、何れも同じ陰性過剰の症状でありますが、このことは顔だけでなくて、内臓の下垂症やアトニー(無力症)・胃下垂・子宮脱・脱肛・腸捻転などにも直結しやすい体質ということになり、肉体的無力症は精神的無気力と裏表であるところに、「鼻の下の長い」ことの身心生理学的なメカニズムがひそんでいるわけです。
陰性の性質は温厚で悠長でよいのですが、行きすぎるとスローモーになったり、寝坊がひどくなって、「グズさん」といって肉やタマゴでM型になっている陽性な奥さんから叱咤激励されることにもなるわけです。

砂糖は陰性でキレやすくなる食品って聞いたことあるけど、気のせいか?温厚で悠長って逆じゃないのか?
あ〜、なんか真面目に応答するのがバカらしくなってきた。
鼻の下が長い・・・「だらしない男性」というイメージは確かにあるよね、「女の人にだらしない」とか、好色っていうイメージだけど。
それって、無気力の反対なんじゃない?
なんとでも解釈できることをずらずら並べて、陰陽の根拠としているが、それって何も謂っていないことと何ら変わりがないのである。

ふぅ、なんか中だるみしてきた。とりあえず今回は彼の陰陽解釈のテキトーさと科学や医療の理解度が伝わればそれでよい感じ。
次回はGを否定した彼の食養の特徴を、他の流派やGの直系であるCI協会などとテキトーに比較してみようと思う。