食育はだれのため?

管理栄養士パパの親子の食育BOOK』も発売から3週間、読んでくださった方からは概ね高評価をいただいており、嬉しいかぎりです。

子育て中の親御さんに役立つ本、というコンセプトで書いておりますので、ニセ栄養学的なものや食育の問題点を追求するような内容はあまり入れないようにしております。
そこでブログでは補足として、本の性格上入らなかった、栄養や食育の問題点などにも言及してみたいと思います。


■なんのための食育?
今回は『第1章 Q4 1日3食とらないとダメ?』で説明した、子どもの食事と栄養の特徴について、今の食育ではあまり配慮されていないことについて考えて見ました。
 このQ&Aでは、どうして子どもはキチンと3食をとる必要があるのかを述べていますが、だいたいこんな理由です。

成長するために、子どもはたくさん食べる必要があります。体の大きさの割に栄養をたくさん必要とするのですが、消化吸収するために必要な消化器官はまだまだ未発達です。
一度に食べられる量は少なく、蓄えておく機能も十分でないので毎食の食事をきちんと摂り、おやつも楽しみだけでなく栄養面に配慮した食事の補食として考えることが大事です。


 本の中では、十分な栄養をとるための工夫や、朝食が十分に食べられない状況を改善するためのアドバイスをさせていただきました。
 しかし、家庭の工夫や努力だけでは改善するのは難しい問題はいくつもあります。それを補うためには社会全体で子どもの栄養と健康について配慮して欲しいところですが、子どもにとって家庭の次に長い時間を過ごす、学校内での配慮がまだまだ不足しているようにどらねこは感じております。
 食育の目的の一つは、子どもの心身の成長ですが、それを支援するための学校なのですから、もう少し融通を利かせてあげてもよいと思うのです。


■朝食たべてる?
 小学校の食育でよくみかけるのは、朝ごはんの重要性を謳うものでしょう。中には文字通り、ご飯は良くてパンはダメというなんだかなぁ、というものもありますが、好きな方を選べばOKです。
 「毎日しっかりと朝食を食べましょう」というのは簡単ですが、休日が少なく労働時間が長めのお国柄ですので、どうしても家庭での生活時間は夜型になりがちです。そうすると気持ちよく朝早く目覚めるのはむずかしくなり、お腹もあまり空いていない、という状況がつくられます。
 これを家庭レベルでなんとかしなさい、というのが今の食育にありがちな問題点です。食育を推奨する側が社会に対して配慮を求めていくようでなければいけません。小さい子どもがいる労働者に対しては、夕方以降の労働を免除とか、家事のヘルパーさん無料券の配布(浅はかな思いつき)とか、子どもに朝食をしっかり食べて貰いたい親が、朝早く活動を開始できるような取り組みをして欲しいものです。状況をちゃんとつくってあげないと、ムリが生じて長続きしなかったり、無理がたたり体をこわす可能性もあるでしょう。そんな状況で食育もクソもないですからね。
 では、学校レベルで出来ることってなんでしょう? どらねこなりに考えてみました。


■栄養補給や食事環境にも配慮を
 「朝食をしっかり食べましょう」という文言は、毎食たべないと十分な栄養摂取が難しい子どもの体の特徴を考慮したもので、子どもの健康と成長を願うような意味合いであるはずです。もし、朝食を食べなくても十分な栄養が摂れて子どもが元気なのであれば、朝食を摂らないことを問題にする必要はなくなることでしょう。食育を行う目的はなんであるのか、というのを見失ってはいけません。食育は子どもや子どもを持つ親を自分の考える理想に沿って行動させるためのものではないはずです。
 この視点で考えると、朝食を十分にとることが難しい子どもに対する学校側の援助や環境作りは違ったものになりそうです。
 そんなわけで、どらねこが学校に期待する「食育」と「食事と栄養確保の支援」です。
 


その1:始業開始時間前に「飲み物・軽食タイム」を設ける
 早起きが苦手で、朝食をしっかり食べることが難しい子どもであれば、飲み物や軽食を家から持参するのもありじゃあないでしょうか。でも、その時間で食べてね、という感じ。栄養確保が大事だというのならそのための配慮は必要だよね。



その2:牛乳タイムは給食の時間に限らない
 子どもの栄養を考えると、牛乳などの乳製品は成長に必要なカルシウムを手軽にとるのに優れた食品だといえるでしょう。給食に合わないという理由で拒否をするのはもったいないと思います。お腹が空くような時間帯に牛乳や飲み物を補給する時間をつくったら如何でしょう。



その3:給食は子どもの意思を尊重しよう
 子どものためにといいながら、子どもの意に沿わないことを強要するのはよくありません。ましてや給食は個人の嗜好には配慮しきれないものですから。嫌いな物を残す事を非難しない。早く食べろと急かさない、残しても叱らないは基本でしょう。



その4:快適な環境で食事を
 極端に蒸し暑い環境では食欲が落ちるのは当然です。学校だからといって過酷な環境を子どもに強いてよい理由はありません。環境改善については前向きに考えて貰いたいですね。



その5:お米偏重にならない
 パンが好きな子はパンを提供しましょう。ご飯じゃなきゃ力が出ないとかアタマが良くならないとかそんなデータはありません。必要な栄養素を充足できるのなら給食として問題ないです。



その6:部活動など学校での活動時間が長い日にはおやつタイムを
 夕方までいるような場合でも学校での給食以外の飲食はダメ、というのは子どもの生理を無視した拘束ともいえるでしょう。おやつを提供するなどの配慮があってもいいのでは?


 どらねこの提案は如何でしたか? 現状では難しい項目も多いと思いますが、食育が大切だというのなら考えて欲しい問題であると思います。


■おわりに
 残念ながら、子どもの栄養状態も家庭環境によって差がついてしまうという現実があります。自分で環境を選べない子どもにスタート地点の差をつけないために、子どもに対する公的な援助はとても大切な物であると思います。親が家庭が、という食育に憂慮するのはその辺りなんですね。
 何度もしつこいですが、食育は子どもの健やかな成長のためにあるのだという基本は忘れてはいけないと思います。