バナナと音楽

先日の東京マラソンは大変面白いレースでした。藤原新選手が東京のコースを走る姿を見ると、彼が拓殖大学時代に箱根駅伝一区を走る姿を思い出します。いやぁ、としとったなどらねこ、と。そんな競技的な興味で東京マラソンを楽しんだのですが、市民レースとしても日本最大規模のこのマラソンはそれ以外でも色々と話題になっていたようです。



■音楽を聴かせるとバナナが甘くなる?
どらねこは見ていないのですが、テレビのニュースでAKBの音楽を聴かせたバナナは甘くなると謂うように受け取られるような内容のニュースが流れたそうです。どらねこは次のリンク先の記事で知りました。

なんと、“AKBバナナ”が「東京マラソン2012」で配布されるとは!
http://blog.livedoor.jp/mensstudio/archives/53698378.html

放送自体を見ていないのではっきりとした事は謂えないのですが、このようなスタイルの報道をしたこと自体が望ましいことで無いと思います。いや、問題ありです。



■甘いのか甘くないのか
バナナに音楽を聴かせる事で聴かせていないバナナに比べて甘くなる理由は考えつきません。例えしっかりと検証した結果甘くなることが明らかになったとしても、それはおそらく音楽の有無以外に原因があることでしょう。そもそも、有りと無しのバナナを比較しているものの、それが同じ条件で保存されていたものなのかすら明らかで無く、元々の糖度が同じである保証もありません。同一条件における追熟による糖度の変化を検証しなければ甘く(屈折糖度計の濃度表示が高く)なったとは謂えないでしょう。

「何をそんなに憤ってるの?NHKは何となく放送しただけなんじゃないの?」そんな疑問を持つ方も居るかも知れませんが、どらねこは次のページを読みこの記事を書くことにしました。



AKBを聴かせた東京マラソン用バナナだと? 「ヘビロテ」がヘビロテされるバナナ倉庫に潜入した
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1202/23/news064.htmlより引用
ヘビーローテーションを聴かせる理由は「げん担ぎ」。今年の第88回箱根駅伝完全優勝した東洋大学の駅伝メンバーの一番お気に入りの歌だったことから選んだ。音楽を聴かせたバナナの提供は昨年の東京マラソンから始めた企画で、昨年は一般人のフルマラソン経験者200人にアンケートを取り、ランニング中に聴く音楽として1番人気だったZARD「負けないで」を聴かせた。曲を聴かせることで特別な効果があるのか気になるが、担当者は「科学的な根拠はない」としており、本当にげん担ぎのためだけという。

担当者は単なるげん担ぎの為だと述べているようです。


■放送の問題点
どらねこが一番問題だと思うのは、その手法がなんとなく科学を装う事にあると思います。
例えば似たような放送内容でも、音楽ありと無しのバナナを用意して、番組スタッフが食べ比べてみて、「あ、何となく音楽ありの方が甘い気がして元気がでる感じがします!」なんて演出だったらこれほど憤らなかったと思います。
屈折糖度計を用意して両者を比べると謂う手法が科学的に検証しているような誤解を招きかねないと思うからです。
単なるおまじないやげん担ぎを非難する気などありません。実際に甘さが違うことが計測器具を用い科学的に検証されたように見えかねない放送内容となっている事が問題なのです。明言しなくても伝わるメッセージの恐ろしさについて自覚が足りないのでは無いかと思うのです。
どらねこはこのように感じましたが皆様はどうでしょうか?アサイチでの安易な食品の健康効果を謳う放送内容など公共放送の報道姿勢としてどうなのだろうかと思うのです。



おまけ
■バナナの追熟
バナナの甘さのお話しをちょっと書いておきます。
果物は樹からもいだとき熟していない場合、保存により甘く熟すタイプとあまりそうならないものがあります。バナナは未熟なまま収穫され、追熟と謂う操作をする事でねっとりと甘い果肉に変化します。キウイフルーツや洋なしなんかも同じタイプですね。反対に樹で熟させる果物にブドウやリンゴなどがあります。
熟したバナナはすぐに悪くなってしまいますので、輸入前には未熟なままで過ごして貰うために、比較的低温に保ち輸送されます。こうすることでバナナは休眠状態になります。そして、日本に持ち込まれた後に追熟と謂う食べ頃の状態に変化をさせることになります。
リンゴと野菜や果物を一緒にしておくと早く悪くなると謂う話を聞いたことがあるかも知れませんが、これは熟したリンゴが出すエチレンガス(C2H4)の影響です。休眠状態にあるバナナにエチレンガスを与え、温度を高くすると追熟が進みます。甘くおいしいバナナとなるよう、適正な温度(高すぎると熟す前に傷んだりします)と湿度と酸素及び二酸化炭素濃度に保ち、店頭に並ぶのにちょうど良い状態でバナナを出荷するのです。音楽の出番なんて勿論ありません。
音楽を聴かせようと思うくらい、大事に良い品質のバナナを・・・と謂う気持ちが無意識に環境調整を更に適切なものとし、バナナを丁寧に取り扱う動作につながる事でおいしいバナナができあがる事までは否定しません。