こぶとりじいさんはけんこうじいさん?

どらねこは、お勉強好きの高齢者グループを対象とした食生活に関する講習会を頼まれたりするのですが、最近ちょっと回数が多くて、段々とネタギレ状態になりつつあります。何か良いアイディアがあれば教えて欲しいところです。『今回は生活習慣病のお話しをしてくれ』との要望だったのですが、ただ単に○○の摂りすぎは良くないですよ話では面白くないので、ちょっとネタ探しをしたところ、高齢者は太り気味の方が長生きしやすいから、生活習慣病を気にする余り食事制限に熱心になりすぎるのも考え物だよ、と謂う話しを混ぜることに致しました。
茨城県でのコホート研究から
お話しで引用する研究とデータをちょっと紹介します。これは茨城県で行われたコホート研究*1で、性別や各年齢階級に於ける死亡率が最も低いBMIを明らかにしようとしたものです。男性32030人、女性61916人を1993年から10年間追跡した結果次のようなデータが得られました。

女性に比べると男性の方がBMIが大きいほど総死亡率が低くなる傾向があります。また、年齢が上がるにつれ、死亡率の低いBMIも上昇する傾向にあることがわかります。
今回は高齢の方を対象とした講習会なので、60〜79歳のBMIと死亡率の関係に注目します。

男性では特に、一般に理想的とされるBMI22前後よりも肥満とされるBMI25以上のグループで総死亡率が低く抑えられているのが特徴的と謂えるでしょう。明らかな肥満であるBMI30以上のヒトでも、BMI18.5よりも低い痩せているヒトよりも総死亡率が低いことに注目です。

■結果の解釈
この研究だけでなく、類似の調査に於いてもそのような傾向があらわれており、更に隣国である韓国の研究*2に於いても同様の結果が得られております。なので、実際にそう謂う事なのでしょう。ただ、どうして長生き傾向になるのか、長生きなら循環器疾患に罹りやすくなっても良いのかなど、解釈や考え方など議論の余地は色々とあると思います。

■どらねこの感想
個人的な印象を述べると、若いうちは将来の循環器疾患のリスクを低下させるため、薄味の食事に慣れたり、BMI25を超えない程度に体重コントロールをするのが良いのかなぁ、と思っております。中高年に差し掛かっても特に治療が必要な病気がなければ、少しぐらい太ってきてもそんなに気にしないで、ちょっとぐらい運動習慣をつける努力をすれば良いんじゃないでしょうか。
そして、高齢期に入った頃には、病気への抵抗力や、重い病気に罹ったときの蓄えを持っていた方が良いだろうから、極端に太りすぎでなければ減量は考えなくても良いのだろうと思います。60歳以上の方に対して、所謂メタボの基準のようなものをそのまま当てはめた健康教育を行うことは意味がないように思っております。勿論、治療を要する病気があれば、制限などの食事療法は行う必要はありますけれど。
まぁ、BMI25近辺で肥満を気にしてダイエット!!と謂う話しに専門家とされる人たちまで同調するのはどうなんだろう?とは思います。もう少し議論になって良いと思うんですね。それでもやっぱり適度に色んなものを食べて、適度な運動習慣を持つのはガチであると、どらねこは思うんですよね。

*1:Matsuo T, Sairenchi T, et al. Age- and gender-specific BMI in terms of the lowest mortality in Japanese general population. Obesity (Silver Spring). 2008 Oct;16(10):2348-55. Epub 2008 Jul 24.

*2:Jee SH, Sull JW, et al.Body-mass index and mortality in Korean men and women.N Engl J Med. 2006 Aug 24;355(8):779-87. Epub 2006 Aug 22.