イヌリンで血糖コントロール?

NATROMの日記12月19日のエントリ『自然食品糖尿・菊芋の精 (エキス) 専門店 菊芋屋』のスパム を読みました。
キクイモエキスを飲んで血糖値が下がったとか、天然のインスリンの効果か?みたいなオイオイといった内容の利用者体験談を載せた業者の宣伝メールを紹介した記事です。
コレを見ていて、昔読んだ本を思い出しました。まだやっていたんだなぁ、こんな悪辣な商売はさっさと摘発されちゃえばよいのになぁ。というのが、正直な感想。

「食べ物神話」の落とし穴−巷にはびこるフードファディズム−高橋久仁子著 講談社 BLUE BACKS
この本は栄養士向け雑誌『食生活』に連載されていた、フードファディズムを斬る』という記事を単行本化したもの。所謂食のニセ科学や怪しい情報の真偽を検証する内容の本です。栄養士さんはニセ科学的な健康情報嵌り易いなんて一部の方から云われていたりするのですが、ちゃんと読んでましたか?え、おまえも一応栄養士の資格持ってるだろって?失礼いたしました。
キクイモは生姜みたいな形をしている、キク科植物にできる地下茎です。どらねこの食べた感じでは、イモっていうイメージじゃあないです。当地方では『カライモ』と呼び、漬物にして薄切りで食べる習慣があったりしますが、どらねこはいつも遠慮してます。食は慣れですね。

前置きが長くなりすみません。本題行きます。
「食べ物神話」の落とし穴より引用

p125-126
主成分はイヌリンでこれは果糖(フルクトース)が多数結合した多糖類です。人の消化器官はイヌリン分解酵素を分泌しないため食べても消化されず、したがって吸収されません。
<中略>
イヌリンは果糖からなりますが、果糖はブドウ糖と違って血糖上昇が軽度であること、インスリン分泌を促進しないということなどがキクイモが糖尿病によいとされる根拠になっているのかも知れません。
なお、糖尿病に効くという広告の宣伝文言に「インスリンを含む植物」とか「インスリンと同じ作用をする物質を含む」というものがありましたが確かな文献でそれを裏づけるものはありません。何かの間違いではないでしょうか。「insulin(インスリン)」から''s''を取り除くと「inulin(イヌリン)」です。キクイモに多いイヌリンが誤ってインスリンになったのではないかとは私の勝手な憶測です。


なるほど、ありそうな話ですね。〜に効くという話には伝言ゲームの末端に於いて尾ひれがつくのはよく見かけます。
イヌリンは基本、β2→1結合という方式で果糖が連なる構造をとっているのですが、この結合はヒトの持つ消化酵素では分解できないため、栄養素としては殆ど利用できません。その為、血糖値上昇には殆ど影響しないのですが、栄養素としても利用されません。栄養素(エネルギー源)として期待できないのであれば、通常の食物繊維以上の効果を期待するのは酷というもの。どらねこはそう謂う風に思ってます。
薬物療法、食事療法、運動療法が基本の糖尿病ですが、イヌリンが食事療法の主流となる事はまずあり得ない話でしょう。