自閉症と補完代替医療−始める前に読んでみよう−

札幌で開催された自閉症代替医療セミナーの件が
【bemさんの処】【そらパパさんの処】でさっそく採り上げられておりました。(参考になります)

この問題について、どらねこも意見を表明しようと、拙い知識でいろいろと調べたり考えてたりしたのですが、どうにも良い記事が書けそうにありません。
先日アップした、補完代替医療のコスト記事中で引用した『がん補完代替医療ガイドブック』にとっても参考になる情報が書かれておりました。コチラを引用しながら検討してみたいと思います。

尚、このガイドブックは
四国がんセンター 【がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究】
から、第1版、第2版ともダウンロードすることが出来きます。とってもお勧めです

※注意※以下の内容は『がん補完代替医療ガイドブック』を参考にしておりますが、意見や解釈などはどらねこ独自のものであります。論の正当性や適否等はご自身でご判断下さいますようお願い申し上げます。


※※※ここから本題※※※
『がん補完代替医療ガイドブック』は文字通り、がん患者が利用する補完代替医療について考え方や利用法について述べたものであるのですが、がん治療だけに関わる内容の他、

・補完代替医療とはどのようなものか
・補完代替医療に対するときの心構え
・補完代替医療を利用する前に確認すべこと
・科学的検証とは何か

等、補完代替医療全般を利用する前に必要な知識を得ることができる内容構成になっております。
がん同様、根本治療が困難であったり、治療法の確立していない分野に於いてはとても重要な考え方であると思います。


●補完代替医療にはどのようなものがありますか?
第2版p4表1より

この表に記載されている補完代替医療について、自閉症に効果が認められるといった内容の書籍が刊行されていたり、セミナーや効果を謳うウェブサイトが確認できたものを並べてみます。

ホメオパシー
・中国伝統医学(漢方で自閉症治療というサイトが結構引っ掛かる)
・心理・精神療法
音楽療法
・ハーブ、食品、ビタミン、ミネラル、生理活性分子
・整体、オステオパシー(頭蓋骨整体)
カイロプラクティック
リフレクソロジー
ロルフィング
・アレクサンダーテクニーク
・フェルデンクライス
・気功
・レイキ、セラピューティックタッチ(ドルフィンレイキ)

うわあ、ほとんどじゃあないですか。がんなどの難治性疾患とほぼ同じ摘要というのが見て取れますね。

●補完代替医療を始めるきっかけは?
第2版 p7より

補完代替医療の利用のきっかけについては、補完代替医療に対する周囲の人の態度や考え方などの要因が強く影響していて、患者さんが抱えている苦痛や不安のような感情状態の要因は影響が小さいということが明らかになりました。
<中略>
現在一番重要と考えられているのは、補完代替医療に関する情報提供の仕方であり、それによって補完代替医療の利用に影響が出る可能性が指摘されています。

がんに対する調査ですのでそのまま当てはめてしまうのは乱暴ですが、善意の人から奨められる場合や新しい治療法に対するセミナーが新聞広告された場合、そこに『権威有る団体が後援』という文字が入っていた場合などが後押しになりそうだと謂うことですね。

では、上記に挙げた補完代替医療に対する情報を取捨選択する場合にはどのような知識が必要なのでしょうか。どのような心構えを持って臨んだらよいのでしょうか?


●最近は、ウェブ上から情報を収集される事が多くなっているようです。気をつけたい項目は以下の通りです。
第2版p11より

簡単に書いてはありますが、実際のところ検証するのはそんなに簡単ではありませんよね。どらねこだったら、先ず、製品を販売しているか勧めているかを確認します。診察だったら、妥当な値段設定か、というのも大事ですね。やたらと高額なサプリメントを販売しているようなら、親指をぺろりしてちょんと眉毛へ。
誰が運営しているかも大事ですね。販売業者へのリンクが沢山張ってあるようなら要注意です。でも、善意の人が勧めているからといって良いわけでも無いんですよね。
これらの情報の中で、『事実に基づいているか』『どのように選ばれたものか』『出典は』などをいきなり判断せよというのは難しいと思います。判断に迷った場合は、すぐに飛びつかず情報を吟味する姿勢が大事であると思います。


●より詳しい情報収集のため、代替医療の専門家に当たる前にはどのような点を確認しておくと良いのでしょうか。
第2版p9より

どのようなところで訓練を受けたか、免許など知識や技術を持っているかなども有る程度の参考になります。例えば・・・
【医学博士】・・・医学博士は医師でなくても授与されます。医学博士とだけ書いてある場合には、別の方向からその人の経歴を調べてみると良いでしょう。案外畑違いの場合もありますよ。
【医師】・・・医師なら問題ないのでしょうか。発達関連の問題領域を扱っているはずなのに、専門は眼科であるかもしれません。
【どのような修練を積んだか】・・・留学ならまだしも、通信講座で獲得した知識かも知れません。通信講座を否定はしませんが、信頼性という面では疑問が残ります。

自分で調べるのは難しいのですが、『どのような研究が行われているか』『科学的な方法で検証されたものか』といった観点が判断基準としてはとても大切になります。


●専門用語を多用した理論が書いてあると、なんとなく科学的に検証されたものであると錯覚してしまいがちですが、実際の科学的検証とはどのようなものなのでしょうか?

第2版p17より
 がんの予防法・治療法の情報は日々さまざまな場所から発信されていますの
で、その発信された情報の質を見極める必要があります。情報源としては学会
や論文などによる研究発表が引用されることがありますが、研究の方法によっ
て、その結果の信頼性にはさまざまなレベルのものがあることを知っておく必
要があります。科学的に評価されたといっても、実際には、あやふやなものか
ら確かなものまでが混在しているのです。それを見分ける客観的な目安のひと
つが、研究方法(研究デザイン)です。どのように研究が行われたかによっ
て、科学的根拠の信頼度を知ることができるのです

第2版p17表10

前提となる知識を持たない方には少し難しいと思いますが、『手間がかかる』『高額である』代替医療を検討している場合には是非とも抑えておいて欲しいところです。
少し正確さには欠けますが、どらねこなりの見分け方を紹介します。
・信頼性の高い研究結果があるのなら、それを紹介しない手はありません。掲載されている根拠以上の、科学的な妥当性のある研究結果が発表されていない可能性がとても高いと思って良いでしょう。
・よく見かけるのは症例報告ですが、これはエビデンスレベルでいうと臨床研究の中では一番低く、一般にエビデンスがあるとはいわれないものです。
経験談や権威者の意見を重視する・・・これは最初に書いた、代替医療を始める切っ掛けともリンクしますね。実は経験談エビデンスとは謂えない全く信頼性の無いものだというのに、多くの方が参考にしているという事実があります。症例報告は疑わしいですが、経験談とは次元の違うものであると覚えておいてください。
・その中間が、細胞実験や動物実験です。中には、細胞実験や動物実験の結果を報告した論文を紹介して、『○○療法に効果があることが外国の研究で実証されました』と紹介されているケースを見かけました。このような手法で宣伝している業者や代替医療提供者には十分気をつけた方が良いと考えます。



終わりに
 今までに様々な自閉症の原因説が挙げられてきましたが現在では、先天的な脳機能障害という考えが優性であり、多くの遺伝的因子の関与が予想されており、その予想を支持する研究も報告されつつある状況です。完全に解明はされておりませんが、一昔前に騒がれた水銀原因説やテレビや消化器系の問題という説の殆どは有力な証拠が挙げられず、逆に反証が次々と報告されております。
もしかしたら、その気持ちは本当によく分かります。でも、そのもしかしたらで大切な療育の資源や生活に大きな影響を及ぼす可能性があるかもしれません。
お金を費やしてからは後戻りすることは本当に難しいんです。
始める前に考えてみてください。どれくらい効果の見込める方法なのか、お金はどれだけかかるのか、時間はどらくらいかかるのか、本人に負担はどれくらいかかるのか・・・