有名人がエビデンス

牛乳を飲むと健康を害するとか、母乳で育てないと子供に悪影響とか、乳ガンリスクを高めるなどという極端な説を垂れ流すトンデモさん達の文章に、『スポック博士』の名前を見かけることがある。なんで牛乳有害論にスポック博士が引用されるのだろうか?

『スポック博士の育児書』は一時期日本でも持て囃されたという。その内容までは詳しく知らなかったがどらねこも名前ぐらいはチラチラと耳にしていた。(添い寝ダメ系の人ぐらいの認識だけどね)
wikipedia 日本語版より

『スポック博士の育児書』(The Common Sense Book of Baby and Child Care)とは、アメリカの小児科医ベンジャミン・スポックが、1946年に刊行した育児書である。42か国語に翻訳され世界中で5000万冊販売され、1946年以降では聖書の次に売れたとも言われる。

なんで、牛乳有害系の人が彼の話を引用するのだろうかというと、上記育児書の1998年版(Benjamin Spock, Steven Parker, Dr. Spock's Baby and Child Care, 7 edition)では、2歳を過ぎた子には乳製品は必要ない、却って健康を損なってしまう、菜食が推奨される。といった主張が展開されているからだ。
スポック博士といえば、未だにその名前を覚えている人も多いでしょう。詳しいことは分からないけど、その道のお偉い人といったイメージはあるんじゃないかな。自分主張に正当性を持たせる為に彼の名を出したのだと考えられそうだ。(権威論証)

マクガバンレポートを都合良く解釈し、その宣伝に利用してきたトンデモさんも居ることですので、日本語以外のソースも調べてみた。
http://www.nytimes.com/1998/06/23/opinion/l-vegetarian-wisdom-from-dr-spock-551350.html
ニューヨークタイムス記事より

Re ''Final Advice From Dr. Spock: Eat Only All Your Vegetables'' (front page, June 20): The late Dr. Benjamin Spock has started a heated controversy with the most recent edition of his book on child care. He adopted a view that a diet free of meat, poultry, fish and dairy products is the best prescription for healthy children and adults.

Much medical and scientific evidence links a diet high in meat and dairy products to the current epidemics of heart disease, hypertension, diabetes, osteoporosis and cancer. Our diets are distorted in the percentage of animal products relative to vegetable products, a recent development in our social evolution.

確かに、最新の育児書で、動物性食品を排した食品が健康に寄与し、肉と乳製品がガンや生活習慣病の原因となると主張している旨が書かれている。
それ以前の育児書にはそんな主張は無かったそうなのだが、どうして彼は以前とまるっきり変わった事を謂いだしたのだろうか。(それ以前は乳製品とるなと謂っていなかった)

実のところ、スポック博士はマクロビ実践者だったのだ。
試しに、キーワード 『Dr.Benjamin Spock』 『macrobiotics』 でgoogle検索してみる。海外のマクロビサイトが上位でヒットし、そこにはこのような内容が書かれている。
『スポック博士と彼の妻は1991年に乳製品の摂取を中止し、マクロビ実践者のアドバイスに従った食事を採り入れた』

牛乳有害説の論拠にスポック博士の主張が引用されていたとしても、それは一マクロビ信者の発言に過ぎないものである。
牛乳有害論から詭弁を取り去ったら何も残らないのかも知れない。