病気と食事

栄養バランスのとれた食事ってなんだろう?理想の献立って何だろう?そんな記事を書いたことがありました。

理想的な献立は本当に理想的なの?
ある程度の期間に必要になる栄養素の合計を便宜上1日当たりに示したモノ、それが1日当たりの推奨される摂取量なのです。だから、必ずしも毎日その分量食べなくても大抵は大丈夫なのです。1日毎に見た場合ではでこぼこであっても長い期間でみたらつじつまが合えばよいのですね。自分たちが1ヵ月間に食べたものを1食あたり均等に分けたとき、モデル献立の内容からそんなに離れていなければ良いと思うのです。

このエントリでは、毎食毎食、給食のようにキチッキチッと栄養計算されたような食事をする事が正しいのではなくて、ある程度の期間で辻褄を合わせられれば良いんだよ、という事を述べました。けれども、これは健康で、食生活についての配慮がそれほど必要の無い人についてのみ、当てはまる話なのですね。ところで、健康な人と食事制限を必要とする人の食事内容の違いはどのようなものなのでしょう。やはり、ある程度の期間で辻褄を合わせる事が出来ていれば良いのでしょうか?
今回は、正確性は少し犠牲にして、イメージ的に理解しやすい形*1で説明を試みてみようと思います。

■推奨量には差はあまりないけれど

食事摂取基準の推奨量と、制限食や療養食での栄養素設定量を比べるとそれほど差が大きく無い事もあります。この表は架空のものですが、ぱっと見は大差は無いように見えますが、そこには大きな違いが存在します。
健康な人では毎日の栄養摂取量にある程度大きな幅があっても、1週間とか1ヵ月のスパンで辻褄が合えばそれほど健康に悪影響は及ぼしません。イメージとしてはこの図のような感じです。

ところが、糖尿病や脂質異常症のような代謝系の病気を持っている人が同じようなバラツキのある食生活を行えば、健康に悪い影響が直ぐに現れてしまいます。イメージとしてはこのような感じです。

健康な人に比べて、マージンが小さくなるとイメージしてもらえば良いのかも知れませんね。
腎臓病や糖尿病などは体の恒常性を維持する機能が低下している状態であると考えると良いでしょう。内部での調整が困難になっているわけだから、外部から入る量を調整してあげる必要があるわけです。食事療法にはそんな意味があるんですね。病気が進行すれば、このマージンは非常に狭いモノになってしまいます。場合によっては健康な人の推奨量では病気に悪影響を与えてしまうことも考えられます。
このような食事療法を行っている人でも、食べる楽しみは尊重しなければなりません。その人がどれほどのマージンを持っているのかをしっかり見積り、その範囲内で変化を持たせて、食事が苦痛にならない配慮が必要だと思います。その為には、病気の程度や体の許容量などをできるだけ正確に見積もる事のできる力が必要になります。医療の現場ではこの部分に無頓着な事もまだまだあるようです。病気になったからといって、必ずしも給食のように決められた分量の食事を毎回食べなければならないワケでは無いのですね。できる範囲で食べる楽しみを尊重する、今後はそういった配慮が求められていくのだろうと思います。

■もうひとつ
あとで辻褄を合わせればよい、それが通用する人とそうでない人がいることを忘れてはなりません。病気を持っている人に、大丈夫だからとムリに食べ物を勧めるような事はやめましょうね。ヘタをしたら命に関わりますからね。

*1:分かりにくければ私のせいです、ゴメンナサイ