場所を弁えよ

家に帰ると、妻が何故かニコニコしている。
とてもニコニコしている。
何かを話したくて、話したくてどうしようもない顔だ。
どらねこはこんな時、決まって話題をはぐらかす。
「あ、その紙袋なあに?」
「ふ〜ん、なるほど」
そして手洗い、うがいなどご飯を食べる前の儀式をこなしていく・・・
しかし、今回の彼女は食い下がる。
何処までもどらねこについてくるのだ。
立ち止まり手が離せない状態になったとき、遂に彼女に捕まってしまった。
満面の笑みと供に取り出されたその物体は、赤と茶色のプラ包みを纏っていた。

「へへ〜、すごいでしょ。ごーるでんちけっと入りなんだよ!!」
両手の塞がったどらねこは為す術もなく、但黙って彼女のお話を聞くしかなかった・・・
個室と云われる部屋は我が家には無いのである。