マクガバンのこととか

表のエントリを書いた後、暗黒版を書くのが普通だが*1、今回はこちらが先に出来ていた。表を更新する余裕が無かったなどとは思わないで欲しい。これが今日一番伝えたい事である。では、本題どうぞ。

マクロビさん達によって日本においては原形を留めていないマクガバンレポートこと、『Dietary Goals for the United States』
wikipedia日本語版では、『食生活指針』というキーワードで調べると、その説明を少しだけだが、見ることが出来る。ところが、英語版wikipediaで検索してもまともな情報は引っ掛かってこない。一般市民からは殆ど顧みられることの無い資料であると考えて良いのだろう。
ところで、NATROMさんはブコメ
“今村光一著「アメリカ上院栄養問題特別委員会レポート いまの食生活では早死する 改定新版(S63年1刷)」は入手”
と仰っていた。この本に5000ページの記述はあるのだろうか、なんだか犯人を追い詰めているようで楽しみである。
『容疑者はお前だ!!』
どらねこの手元には更に改訂を加えた、2002年8月発行の同タイトルの本がある。
このほんの前書きにはこうある

アメリカ上院栄養問題特別委員会(当時、マクガバン委員長、以下M委と略記)が資料も含めて五000ページを超える膨大なレポートを発表したのは一九七七年だった。このレポートは、二年間にわたりアメリカばかりでなく世界中から資料を集め、またアメリカ以外の国からも学者を招き証言を求めて出された、きわめて密度の濃いレポートだった。

※強調はどらねこによる※

 しかし、この本はアメリカ上院栄養問題特別委員会のレポートを抄訳、編集したとか前書きで述べているが、本書のp20にはこんなくだりがあったりする。

M委のこのような審議調査やその結論について、読者のために要点だけを簡単にまとめてプロローグとしよう。

 プロローグばかりじゃあない、本文中もこんな調子なのだ。しかも、引用箇所も明確ではないのだ。目に付くのは『議事録の中にある』という言葉だ。議事録は結論に影響を与えることもあるが、大概はいろいろな意見のやりとりがあって有用なものが報告に残るものだ。日本の食育基本法成立前には議事録でトンデモ発言が随所にあった事を記憶している。ほんとアホ臭くて馬鹿げている、怒りにも似た怒りを覚える。
 これは推測だが、『Dietary Goals for the United States』を策定するに当たって、行われた議論や報告の中には、それこそ科学的なものや文化を考慮したものもあるのはもちろん、中にはトンデモ発言もあったであろうし、当時のアメリカでも活動していたミチオ クシが意見を述べたものも入っているかも知れない。そんな結論には採りあげられないやりとりの中から自分に都合の良い部分を抜き出した。そんなものなのでは無いのだろうか。いや、意外とイイ線いってるかも。
 こんな前半でも案外まともな方なのだ。後半には自分が推奨する健康法を延々と紹介している。

第四章 異常現象も多い現代の食事、健康状況
 ビタミンB不足の貧血と高校生の脚気
 国民病になったアレルギーと“奇病”エイズの本当の原因
 心の異常の背後には低血糖症の存在も
 精製されすぎた食品に原因がある低血糖症
 “麻薬”になることもある砂糖のこわさ
 科学技術を神にした狂った社会
 大きく育つとガンになる?
 早死にが予想される大きく育った現代っ子たち
精製された食品で低血糖に、砂糖は麻薬!!どっかで聞いたことあるフレーズばかりだ。

第六章 ガンもビタミンで治る!新しい医学に目を開こう
 抗ガン剤の無効性は理論的にも立証されてしまった。
 肉体の持つ自然な抵抗力の強化が大切
 薬医学は高くついて効果がないが栄養医学は効果的で安い
 ガンは退化病だと理解していたゲルソン
 ビタミン、ミネラルのガン治療効果が注目されている
 バイパス手術は手遅れ、心臓病を簡単に治す栄養療法

 ゲルソン療法にメガビタミン、自然治癒力ですか。

 巻末にはご丁寧にこのようなオマケつき。

ポーリング療法の資料は左記で求められる。
ああ、『分子矯正医学』ね。
サプリメント売りたいんだ。なんだ、結局商売じゃん。

管理栄養士養成課程のある大学に置かれているこのトンデモ本。誤った理解が広がらなければよいのだけれど・・・
栄養士会はほっといていいのかねぇ。

*1:普通言うほど表対応の記事をかいているわけではない