どのような物質も毒物と成り得る−下書き−

前回のお話し(どら??じゃないほう)のつづき。どうやったら、一般の人に陰謀論的有害論のバカらしさを上手に伝えることが出来るのだろうか。頭の中に浮かんだ言葉や案の書き付け。

「どのような物質も毒物と成り得るのだったら、どのような食べ物も毒物と成り得るよね、そんなの詭弁じゃない?それが何だって謂うの?」
こんな感想を持つ方が大多数だと思う。
じゃあ、何でそのような毒物と成り得る物質を我々は利用しているのでしょう。それは利用することで得られる利益がそれによって被る不利益を差し引いても有用なものだからだよね。

極端な例)
がん発生要因の第1位は食事である。だから食べ物を食べなければがんになる確率を低下させる事が出来る。

この例が述べている事自体は間違っちゃあいないけど、そんな訳にはいきませんよね。食べ物を食べなければ、がんになる以前に死んじゃいますからね。一つ一つの言説には誤りが無くても、そこから導き出される結論は現実的で無くなってしまう場合がある。この例はあまりにも非現実すぎて引っかかるヒトは居ないと思われるが、これと同じ構図で事実誤認が誘発されている。


○○はもー毒だ!!
前述したように、多かれ少なかれ全ての食べ物は人体に有害な作用を及ぼし得るわけで、○○有害論ではこの事を巧妙(?)に操って、消費者の不安を煽るのだ。

極端な例2)
コカコーラを飲むと歯や骨を溶かす危険な飲み物ダヨ。ほら、コーラを入れたコップに歯を入れてしばらくおいておくと・・・「あっ、カミソリでまっぷたつだ〜!こわ〜〜い」

歯を構成するアパチットは酸性溶液中で脱灰をおこす。これは事実だが、骨を溶かす場合にはコーラが直接骨に接しなければならないため、コーラを飲む事でこの状態は起こりえない。この例では意図的にその事に触れないようにしている。また、コーラや他の炭酸飲料だけでなく酸性溶液一般に当てはまることであり、pHについて謂えば、コーラよりも食酢や柑橘類の方が低く、歯の脱灰に与える影響は大きいと考えられる。食酢ではなく、コーラのみを取り出して問題視するというのは詭弁以外の何者でもない。
コーラの問題点はその飲み方にあって、別に歯を溶かすことはその本質ではない。飲み過ぎで食事が疎かになる、砂糖を摂りすぎてしまうなど、問題点を個別に丁寧に説明することが求められる。
酸性の食品を食べれば確かに歯は傷むことでしょう。だから、食べた後は口をすすぐようにすればよいのです。浸かっている時間が長いから危険なのですね。と子どもには話したい。

前回会話より
宇宙ねこ「確かに食べ方によっては毒になるよね、何でもだけど(ぼそ)。化学調味料はやばいよね、おそらく脳室に溶液を直接注入したら死ぬと思うよ」
モニョ子「それ別に化学調味料じゃなくても普通に死ぬとおもいますよ・・・」

こんな感じで突っ込んで頂ければ嬉しいのだけど、同じ構造でもココまで大袈裟で無かった場合には信用してしまうことも有りそうだよね、という話。

テキトーな例)
食品添加物として加工食品に加えられているニャンパク質加水分解物には動物実験により有害作用がある事が明らかになっている。ラットに投与した実験では、寿命の短縮、失明等の健康に重大な影響を与えることが明らかになっている。このような食品を放置しているのは企業と厚生労働省が癒着していることの現れである。

陰謀のくだり以外は特にウソはなくても読んだ人はニャンパク質加水分解物が危険なものと判断してしまうかも知れない。勿論、危険性が無いとは謂いきれないが、危険な物であるという証拠にはなり得ない。それは判断するに十分な情報が公表されていないからだ。この場合、確認すべき点はなんだろうか。
まず、投与法だ。食べ物であるのだから、経口摂取の結果であるのかを確認したい。もしかしたらお腹に直接注射しているのかも知れないし、静脈注射しているのかも知れない。脳室に直接打ったら危険だよねとは程度が違うけれど同じ構図なんだよね。
次に投与量。ねずみさんにあげるのだから、人間が食べる量を食べさせる事は出来ないよね。体重1kg当たりどれぐらい与えたのかを確認して、それを人間の食べた量に換算したいところ。ニャンパク質加水分解物を体重1kg当たり、10mgまでだと何も問題が無かったけど、50mgを与えたら半数のネズミがモフモフ病を発症したとする。体重50kgのヒトであれば、2500mgだね。さて、食品添加物としてはどんなに多く摂っても1日10mg位が限度という使い方をされていたとすれば、この物質はモフモフ病を発生する危険な食品添加物と言えるのだろうか。その実験で使用された物質の量が現実的なものかどうかを確認しておくことが大事だからね。

他に、ネズミの結果がそのままヒトに適用できるか?という問題がある。ラットにある食品を与えたところ、発がん性が確認されたとする。『危険な食品買っちゃだめ』という本に大々的に取り上げられ、その食品が人間に対しても発がん性物質であると一般に認識されました。その後、人間に代謝系の近い霊長目(さる)で確認したところ、発がん性は認められなかったという結果がでても、その食品の悪評を完全に取り去ることは難しい。


どのような食べ物も詭弁によって毒物と成り得る