スクリーニング

この記事は旧ブログどらねこ日誌に2009年4月28日掲載した記事を体裁を整えほぼそのまま転載したものです。
最近さっぱり更新していないくせになぜ今頃?と疑問に思われそうですが、言及先の人が最近牛乳有害論の本を出したそうなので、こういう人ですよと紹介するための再掲でした。表現等稚拙なところもあるかと思いますがご了承下さい。

■佐藤章夫さん
この方、牛乳有害論の老舗で牛乳だけでなく現代的生活は体を害するというスタンスで独自の健康情報を配信し続けていらっしゃいます。

貴重などらねこ日誌読者のMAMORUさんから、彼の運営する「生活習慣病を予防する食生活http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/index.htmlというwebサイトを斬っていただきたい」というご要望を頂きました。どうやら高糖質食で糖尿病が良くなるという主張もされているようです。当該ページをチラッと見てみましたが、かなりの香ばしさがただよっておりました。さて、どうしたものでしょう。※本記事の引用文は佐藤氏のウェブサイトからのものです。

メタボリックシンドロームを予防する食生活

肉・脂肪の摂取量が多くなるとインスリンの効き目が悪くなって、身体がインスリンの分泌を増やせと要求します。このインスリン分泌の増加によって肥りはじめやがて糖尿病へ。糖質(炭水化物)の摂取量を多くすると、「高炭水化物食」→「インスリンの効き目がよくなる」→「少ないインスリンで心身が活動する」→「インスリンの分泌が少なくなる」→「肥らない」というサイクルが回転してメタボリックシンドローム(内臓肥満症候群)を予防します。もちろん、糖尿病患者の食事は穀物中心の高炭水化物食にすべきです。その証拠をご覧ください。

証拠をご覧下さいとの事です。
早速読み進めてみました・・・が、すぐに頭が痛くなってきてしまいました。面倒くさがり屋のどらねこは既に検証意欲が失われてしまいました。

メタボリックシンドロームを予防する食生活より
http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/lifestyle2/metabolic.html

日本人の食生活の基本は古来、「穀物+大豆+野菜(+魚介類)」でした。日本人は、過去1000年以上にわたって、コメをはじめとするデンプン(糖質あるいは炭水化物)が主成分の穀物に支えられてきたのです。

日本人が何世代にもわたって自らの身体で安全性を確認してきた食事が安全な「日本人の食事」です(上図)。この食事に見合うように日本人の身体が変化・適応してきたのです。穀物を中心とするこのような「日本人の食事」を「粗食」と呼ぶ人がいます。この食事はたしかに質素・素朴でありますが、決して粗末な食事ではありません。「日本人の食事」は「素食」(基本的な食事)であって「粗食」ではないことをご承知おきください。この「素食」を続けていればメタボリック症候群にはなりません。

1000年前には何人の祖先がいたか
1000年という時間の長さはなかなか実感できません。そこでつぎのように考えてみましょう。



私たちひとり1人に2人(2の1乗人)の親がいます(両親)。その母親と父親にもそれぞれ2人の親(祖父母)がいました。すなわち祖父母は4人(2の2乗人)です。その祖父母にもそれぞれ2人の親がいました。曾祖父母は8人(2の3乗人)、曾々祖父母は16人(2の4乗人)になります。ヒトはだいたい30歳位までに子どもをつくりますから1世代を30年としましょう。30年毎に祖先は倍々に増えます。1000年は33世代に相当します。したがって、1000年前には2の33乗人の祖先がいたことになります(約86億人)。1000年間に存在した私たちの祖先は[2の1乗+2の2乗+・・・+2の33乗]人になります(2の34乗-2=172億)(上図)。


日本人の食生活の原型が1000年前に成立したと仮定すれば、この食事は172億人の祖先が食べ続けてきたものです。日本人はこの食事で考え、遊び、働くようにできているのです。この食生活は、明治維新によって西洋文化が導入されても基本的に変わることはありませんでした。それが過去40年という短期間で一変してしまったのです。私たちは、今、172億もの先祖が食べ続けてきたものを捨てて、祖先が全く知らなかったものを食べるようになりました。

172億人が食べてきたそうです。すっごいインパクトですねぇ。
おもわず信じちゃいそうになります・・・ってなるか!!

これを持ち出す時点で、この人は情報を有効的に取り扱えない人であることを宣言しているようなモノです。だから、どらねこは他に書かれたことを批判せずに済むのです。全部デタラメの可能性が高いですからね。あ〜〜良かった。

え、何がおかしいかですって?
算数も満足にできないアホな猫でもわかりますよ。
172億人でも十分おかしいのですが、その一世代前、借りに1030年前を想定してみましょう。先祖さんはさて何人でしょう。
ええと、約354億人でございますね。
たった30年で172億人も増えてしまいました。
この計算をあと2世代もさかのぼれば、過去に存在したであろう人類の数を軽く超えてしまうことでしょう。

この計算には様々な問題点があるのですが、一番の問題点は血縁関係が全く存在しないことが前提になっている事です。分かり易い例を考えてみましょう。

ある人は両親がいとこ同士だったとします。この人の4代前の祖先は何人いるでしょう?

4^4−2^(4−2)=12

 
この場合は両親が非血縁者であった場合の16人より4人少ない12人になります。

昔の日本では生まれた場所で生涯を終える、という生活が当たり前であったと考えられます。その地域に住む人は遠い近いあわせて、皆が親戚同士であった事でしょう。祖先を手繰れば、色々なところで絡まり合った網目になります。だから祖先の数はそのような莫大な数字にはならないのです

さて、あなたは彼の主張を信じられますか?
 
■間違えたくないから
なぜ本題ではなくてここに注目したのかというと、既に検証済の周回遅れの理論やトンデモ解釈ばかりで、一つずつ採り上げるのは面倒な割には益があまり見あたらないからという事なのです。
どらねこはアタマがおかしいので、普通の人だったらしないようなミスを連発します。それでも何とかやっていけるのは、でてきた数値なり、結果なりが妥当なモノかどうかを確認しているからなんです。いや、すごく当たり前のことであらためて語るようなものでは無いのですけれども。大抵の人は行っていると思いますし、俯瞰した後、細かい項目を点検するのですよね。(どらねこは細かいの苦手)
家計簿付けてて、今月の出費は150万円なんて結果になったら、計算ミスを疑うのは当たり前の話ですよね。ところが世の中にはまともな肩書きを持つ人でも出来ない人がいらっしゃる。
普通の人だったら「オイ、オイ」と思うような結果がでてきても普通に採用してしまうところです。トンデモデータをなぜか疑わず、これは誰も知らなかった事実であるようなぶっ飛んだ結論を導き出してしまうのですよね。そういう人はデータを適正に扱えない。だから、論文を引用していても参考にならない。例え、その元論文はしっかりしたモノでもトンデモ解釈を駆使して自分の考えを支持するデータに造り替えてしまう。
常識的理解を覆す理論を提唱している文章を目にしたときにそれがトンデモ解釈か否か判別したいわけですが、元論文に当たろうと思っても、ネット経由では手に入らなかったりすることも多いので、そこまでして検証するに値するモノなのかどうか本文を読んで判断するわけです、論理の導き出し方とか、提出されたデータが常識的な数値なのかどうか・・・そんなに時間もありませんし。
突飛なデータや解釈をまともに採用する人は、理論の裏付けとして採用した引用がトンデモか否か判断できる能力は無いとも考えられるわけで、そんな人の話は参考にする必要もないし、労力を掛けて検証する必要も無いわけです。科学リテラシーはもちろん、高い方が良いのですけれども、そういった知識が無ければ判断できないというものでも無いのです。厳密には切り分けられないのですが、実生活では十分役に立つと思います。どらねこも専門外についてはこんな感じで流し読み、アレ?どうなんだろうと思ったら、キーワードを入れて検索するわけです。

うだうだ書いてきましたが、落とし穴はそこかしこに有るわけで、自分も気をつけなければな、というオハナシでもあったりします。 

少なくとも、こんな人が書いている牛乳有害論の本ですよ、とわかればお金を出して買うのをためらって下さる方がいればと思います。