「?それも健康の話だったの?」どらねこ&なるみーたカフェダイジェスト

以前ブログでも告知いたしました「どらねこ&なるみーたカフェ」ですが、先日無事に終了することができました。参加者とスタッフ合わせて40名ほどで、反応を確かめながらおしゃべりをするには丁度良い人数であったかな、と思いました。
この企画は、ツイッターにて感染症予防関連情報を精力的に流して下さっている堀成美さんと一緒にお話しをしたいなぁ〜、というどらねこのワガママをえるカフェの企画にのっけて頂いたものでして、折角だから、あまり見かけないテーマでやりたいなぁと思い、性教育を題材にしてみました。
はじめはどうなることかと心配*1いたしましたが、堀さんの軽妙なトークと懐の深さに助けられ、無事に終了することができました。どこまで需要があるかわかりませんが、どらねこ担当部分について、当日のスライドとダイジェストを掲載致します。
全体の流れとしては、ライフサイクルと栄養の話をどらねこが始め、思春期の手前で堀さんにバトンタッチし、学校では習わない大切な性教育についてお話し頂きました。そこからまたどらねこが、実は子供を産む前に考えなければならない、性教育としての栄養話というのもあるのですよ、というように展開しました。性教育と栄養、どちらも生きていく上ではとても重要なものであるのに、学校を卒業した後は知識をアップデートする機会に恵まれない、という共通点を確認しました。



■栄養と性のはなし前半の部
どらねこはこういうお話し会ではアドリブで話すことがほとんどなので、記憶を頼りに書きますので当日話した内容とは違う部分があるかも知れませんが、どうぞご了承下さい。





「身体をつくるということは、次世代をつくる身体を充実させることであり、実は性の話なんです」
「農業などでも成長段階で肥料の与え方もかわったりしますが、葉っぱや茎が伸びるときにはたんぱく質をつくらなければならないので、窒素分の多い肥料をあげるけど、実を大きく充実させる時期には、窒素を減らしてリン酸を増やします」
「人間も必要な栄養素は違うけど、成長期と成熟期には必要とされる栄養素の内容は変わってくるんですよ。今回はこうした変化をライフステージごとに説明しますね」
(つかみとしての農作物と栄養の話はちょっと外してしまったかも知れません)





「小さい子供ほど必要とする栄養素は大人と大きな違いがあります。大人と同じ物を身体の大きさにあわせて提供してもダメなんですね。(子供は大人のミニチュアではない)実例をしめしたスライドで説明します」





「これは日本人の食事摂取基準からひっぱりだしてきたものなのですが、エネルギーとカルシウムについて必要な栄養素を体重当たりに換算したものです」(体重当たりの基礎代謝量をしめして)
「幼児と成人を比べると2倍以上違いますし、中高年ではさらに少なくなります。成長分もたべなければならない時期と、身体を維持する時期ではこんなに違うのですから、身体の割にたくさんのたべものを必要とします。でも、身体は小さいので沢山詰め込むのも大変ですから、赤ちゃんの栄養では、消化しやすい形態のもので、食事の回数も多く、重量あたりのエネルギーの大きい脂肪の割合が多いもの)が適しているんですね。(母乳や人工栄養ですね)(カルシウムの部分をしめして)
「カルシウムについては大人との差はもっと大きいことがわかります。体重当たりに換算すれば約三倍です。これほどでないものの、他の栄養素でも同じように多く必要なので、子供には大人と同じ内容の食事を用意し、量だけ変えてあげれば良い、というわけではないことが分かると思います」
「食事もそうですが、この時期の子供にとっておやつが大切であるというのにはこうした理由があるんですね。単に楽しみのためというだけではないんです」





「これは学校給食の栄養摂取基準です。基本的にはこの時期に1日辺り必要とする栄養素の三分の一なのですが、不足しやすい栄養素についてはそれ以上に設定されています。例えばカルシウムは1日の半分です」
「日本人で一番不足しやすいとされるのがカルシウムですが、日本の土壌にカルシウムが少ない事が野菜からの十分な確保が期待できないなんて事も関係しているようです。カルシウムを効率よくとることのできる食品はなんといっても牛乳ですけど、日本人はヨーロッパの平均と比べ牛乳摂取量は半分以下なので、確保はなかなか難しいですね」
「学校給食の基準を満たすのには牛乳が欠かせないというのはこうした理由があるわけです。逆に牛乳を外してしまうと、カルシウムを満たすのが困難になり、いつも同じような食材を使った変な給食になってしまいそうです」
「牛乳有害論などもありますが、アレルギーもないのに、子供に乳製品を与えないというのは、子供の成長を考えると色々心配になります。この時期は食習慣形成に重要な時期でもあります」
(本題からそれた話:理想的な献立は?というと給食のようなものをイメージする人が多いですが、あのような決められた栄養素を確保した食事を毎日提供するといのは、実は不自然なものです。例えば、食欲のない日もあるし、揚げ物や焼き肉をバクバク食べたくなる日もある事でしょう。決められた栄養量の食事だと、食欲がなくて残した場合でも、食欲のある時に追加で給食が増えるというわけにもなかなかいきません。その結果、残さず食べましょうみたいな話になります。それって自然じゃないですよね?)





「皆と同じ物が食べられないというのも辛いですが、アレルゲンとなる食品はこの時期に重要なたんぱく質源であったり、栄養価の高い食品が多い事が問題です。除去食が基本ですが、大丈夫な食材をみきわめ、代わりの食べものでしっかり栄養確保できるように配慮が欲しいです」
「卵や牛乳は食物アレルギーの中でも発症率の高い物ですが、年齢があがると耐性がついてくるという特徴があります。幼児の頃発症した人のウチ、小学校入学までに30%ほどの人が耐性がつくという調査結果があります。なので、医療機関とそうだんのうえ、安全を確認しながら食べられる食品を増やしていくということも大事でしょう」
「ただし、魚のアレルギーや果物アレルギーは大人になってからも耐性が付きにくいようなので要注意です」
ここで、堀成美さんにバトンタッチし、誤解まだまだ多い性のお話しをしていただきました。


■後半の部
堀さんのお話の後すこし休憩を入れ、どらねこの後半の部へ突入です。





「外見的には大人だけどまだまだ成長期の大事な時期です。あるべき自分のイメージと実際の自分とのギャップに悩むこともありますが、それがまだまだ成長期であることを忘れて極端な減量に・・・という事が問題になります」





「ライフサイクルでいうと、こどもをつくるための準備期間としてとても重要な時期です」(図をしめしながら)
「痩身傾向児と書いてありますが、BMIで16.7未満というのはやせ気味というよりも明らかにやせの範疇に入ります。太りすぎと表現するときには、BMI25程度のやや太りぎみな人も含めた数値を示す事が多いのですが、やせについてはどうも甘く見る傾向があります」
「過度な減量がつづけば月経が止まってしまうこともあります。(この部分は堀さんのパートで十分でない性知識からダイエットで生理が止まってラッキーという話が例に挙げられておりました。)しかし、月経が再開しても、無排卵月経という月経があっても排卵の無い状態になる事もあり、子供ができないために検査をして判明、というケースが実際にあります。思春期に十分な栄養をとることは「性教育の場でも語られて欲しい話題であるといえるでしょう」
「大人になってから子供をつくる、つくらないというのは本人の選択でありまわりがとやかくいう筋合いのものではありませんが、自分の子供が大人になったときに健康な子供を持つ事ができるよう、十分な配慮をして上げるという事が大人のつとめです。しっかりと食事を与え、望ましい食習慣をつくる事は、性教育の一環でもあるとどらねこは思います」





「さて、妊娠は若い人ほど安全性が高いのでしょうか? 概ねその通りなのですけど、10代の妊娠はやや危険性が高いことが知られています。そして何より本人のためになりません」
「どうしてかというと、思春期後期は本人もまだまだ成長期なのです。自分の成長と赤ちゃんの栄養を同時に満たすのは容易ではありません。この時期の妊娠は無事に出産できても、骨密度を高める大事な時期にカルシウムが欠乏することで将来の骨折リスクを高めるなんて事もありそうです。赤ちゃんの健康は勿論大事ですが、子供をもうける女性自身の健康も同じように大切なものだからです」
「若い人の妊娠で忘れてはいけないのが、妊娠を望んでできた子供ではない事が多いという話です。それが栄養と性の話とどう関係するのかといいますと、妊娠初期に大事な葉酸が十分に確保できないという事と関係します」
「妊娠初期に葉酸が欠乏すると神経管閉鎖障害という赤ちゃんにとって重篤な障害が起こるリスクが高くなるのですが、サプリメントなどで適切な葉酸補充をすることによりかなりの確率で防ぐ事ができます。しかし、妊娠のごく初期に補う事が大事なので、思わぬ妊娠ではそうしたリスクが高くなるという事もあるのです。子供をもうけるというとても重要な事は、キチンと計画をたてて行って欲しいと思います」
堀さん「避妊を含めた適切な性知識を男女ともにしっかり身につける場が無い事が問題ですね」





「最近は2500g未満の低出生体重児が増えています。これは、痩せている女性が増えている事と、妊娠中の体重増加が抑制される事とよく関連しています」(図をしめしながら)
低出生体重児は栄養状態の悪かった昔はに比べ、国民の栄養状態が良くなるにつれて少なくなっていましたが、ここ20年以上増加傾向をしめしていて、現在は全体の10%ほどをしめるようになりました」
「痩せている事がとても良い事のように扱われる風潮も問題なのですが、妊娠期の女性にまでそれが広がっているのでしょうか。これには、産科医の一部助産師の一部が行う食事指導にも問題があります。確かに妊娠中の過度な体重増加は高血圧や妊娠糖尿病などを誘発しますから体重増加をおさえてもらいたくなります。しかし、過度な体重抑制が低出生体重児の増加という結果をもたらしているのですから、これを受け止めて指導を変える必要があるでしょう」





低出生体重児ではどんな事が心配になるのでしょう。簡単に説明すると、体重の少ない子はその分蓄えが少ないという事です。そのような状態であるにもかかわらず、室温の十分に保たれていない環境でカンガルーケアを行い、母乳が出るのをまっていた事で低血糖を起こし、脳にダメージを負ったという症例もあります」
「カンガルーケアでなくても、低出生体重児では低血糖がおこりやすいため、必要に応じて糖水の補給なども行われます。低血糖リスクが高い子供に対し、母乳で無ければと母乳が出るまで我慢させるというのは危険な行為と考えられます。誰のための栄養なのか基本に戻り考えて欲しいなぁとどらねこは考えます」





「今度は授乳期のおはなしです。母親がねそべって子供に母乳を与えている様子をみて、家で横になっておっぱいをあげるのなんてたいしたこと無いでしょ、なんて話をする人がいるようなのですが、アレって実は重労働なんですよ?という話です。ジョギングで500kcal消費するとしたらどれぐらいの長時間走る事になるでしょう?2時間くらい走らないといけないかもしれません。同列には扱えないですけど、それぐらい重労働なんだよ、という事をあたまの片隅に入れてパートナーへの配慮があればと思います。これも性教育ですから男の人も知っておいて欲しい話です」
「また、この重労働だという事を考えれば、授乳中はやせるというのもよくわかりますね。早く妊娠前のスタイルを取り戻したいと考えるでしょうから、食事を十分に食べないで急激に体重をおとしてしまいかねません。しかし、体重だけじゃなくて、色々な栄養素も母乳から出ていってしまいますので、栄養素欠乏のリスクもあるのです」





「さて、この図は母親が栄養素欠乏の時に母乳の栄養成分はどうなるのかを示したものなのですが、どんなことがわかるのでしょうか?」
「影響が大きい成分については赤ちゃんの栄養素欠乏が心配になる事が分かるのですが、少ない成分については何も心配しなくて良いのでしょうか」
「実は、影響が小さい成分というのは、母親の蓄えを削っても母乳中の栄養量が維持されるという意味なので、母親の健康に悪い影響を与えるという事なんですね。だから、痩せていくのが嬉しいから食事も増やさないというのは、子供の身体だけじゃなくて母親の身体にも悪影響を与えかねないんですね」
「男の人は妊娠・授乳期の女性の身体について傷つけるような事をいっちゃあいけないんです。結果的に肉体も傷つけかねないんですよ。そうした事をしっかり覚えて相手の身体を気遣って欲しいものです」





「赤ちゃんの栄養という話になると、どうしても母乳か人工栄養かというような両者がさも対立するものであるかのように語る人がいらっしゃいます。どらねこは母乳というものは素晴らしくて色々なメリットがあるものだと思うのですが、母乳が難しいのなら、人工栄養も良いし、場面場面で使い分ければ良いとおもうのですが、完全母乳でなければいけないと完全母乳に対する拘りがやたらと強い母乳指導を行う方がいらっしゃる事に懸念をもっています」
「ほとんど母乳なのに、体調悪い時に少し人工栄養を併用したというだけで、完母(完全母乳)を達成できなかったと罪悪感を持ったり情けなさを感じたりする方もいるようです」
「母乳育児、人工栄養児という括りは、自分が集団に入ると何も得がなくても集団内にいると贔屓してしまうという人間の考え方の傾向からどうしても対立をまねいてしまいかねません。なので、そうした括りの存在自体が母親を苦しめる元になっているんじゃないかな、とどらねこは感じております」
「赤ちゃんや本人にとってメリットの多い方法を気軽に選択できれば良いと思います。また親が元気で無理のない方が子供にも優しく向き合えるというものです。だから、親を苦しめるような母乳指導はその点でもよろしくないと思ってます」
乳腺炎について、会場とのやりとりもありました)
乳腺炎を予防するため砂糖や肉を控えるという話はあまり根拠無いということ。母乳マッサージもどこまで効果があるのかは不明であるという事を話しました。このあたりの詳しい話は助産師であるふぃっしゅさんのブログ記事が参考になるでしょう。





「母乳は確かに優れた栄養なのですが、実は万能ではないよ、という事をしめしたものです。低出生体重児であれば、母乳だけを飲ましていると6ヶ月くらいで鉄欠乏が普通におこってきます。離乳食を遅くするのであれば、フォローアップミルクをつかっても良いですし、鉄を補える補食ぐらいは与えるなどした方が良いでしょう」





「これは乳児の健康において注意したい栄養素です。ビタミンKが十分な母乳をというのは食事では難しいので、シロップが投与される事になっています。一部助産師においてこれが蔑ろにされたという事件もありましたが」
ビタミンB12ヨウ素は親が極端な食事をしていた場合に乳児で過剰や欠乏が現れるリスクがあります。ビタミンB12は動物性食品をとらないと欠乏する事が知られているのですが、大事な時期に十分な確保ができないとビタミンB12の蓄えが十分でないまま生まれてくることになります。玄米菜食が妊産婦に勧められる事があるのですが、こうしたリスクがあることを覚えておいて欲しいと思います」
「また、ヨウ素については世界レベルで見ると不足が心配されるミネラルなのですが、日本では過剰が心配されます。それは昆布を常食する食習慣があるからなのですが、昆布には1日の上限量よりも多いヨウ素が簡単にとれるぐらい多量に含まれているからなのです。赤ちゃんはヨウ素過剰に敏感なので、妊産婦はあまり海藻をとらないほうが良いという事も知っておいて欲しいですね」


■おわりに
性の話ということでどうなるかわからないままに不安な気持ちで始めましたが、参加者の方からも概ね好評を頂きまして、活発に質問をいただくなど、それなりに成功だったのではないかなぁと思いました。欲をいえば、会場と一緒になって話を進めるような形に・・・というのもありましたが、それはまた別の機会に行いたいと思います。こうして気持ちよく終わることができたのも、堀さん、スタッフの皆様、参加者の熱気のお陰かであると思います。どうもありがとうございました。

*1:いや、だって堀さんと名前並んでるんですよ、オマエなにもんだよみたいなネコがさ、ホント緊張しましたよ