体験会場で効果実感?

このエントリはどらねこの知人であるAさんから聴き取りをした体験報告とその報告が事実であると仮定した上でのどらねこの感想を書いたものです。


■年明けから体調不調で心身ともに参っていた
年を重ねると疲労が抜けにくくなる・・・、これはどらねこも最近痛感をするところですが、より高齢の方にとってはそれらは深刻な問題のようです。Aさんははここ数年来、冬に体調を崩せば帯状疱疹ヘルペスによる水疱が顔に現れ、酷い痛みや皮膚のただれなどに長い期間悩まされるようになりました。今年も例によって長引く体調不良に悩まされていたところ、友人からとある健康機器の体験会場に行こうと誘われたそうです。無料で何度でも体験でき、しかも評判も良いと謂う事で友人と一緒に参加を決めました。


■欲しい
体験会場で何回か実際に使用したところ、なんとなく具合が良くなった気がします。これは是非購入したいと思い家族にその旨を話してみたら、やめておけと諭されました。それでもやさしく親切な販売員と周りの参加者からの実感を聞いているとその気持ちが抑えられません。こうして何度か家族間でやり取りをした結果、心配した家族からどらねこのところにまで話がやってきました。


■どんなに素晴らしいものなの?
そんなに欲しくなってしまうような健康機器というのはどんなものなのでしょうか?ここから先は対話形式で進めようと思います。
ど:それってどんな機械なのですか?
A:いすに座った状態で機械から電流を流すと絶妙な比率のプラスイオンとマイナスイオンの作用で体に良い影響を与えてくれるのよ。生体電子で血液がきれいになる作用があるとかも。
ど:ふーん、じゃあ何回くらい通いました?
A:えーと、もう20回くらいかな。一週間くらい閉まっていた時があって、その間体調が良くなかったのよね。
ど:販売員の人はどんな説明をしたのですか?
A:うちの機械は特別な特許をとっている信頼できるもので、皇室御用達の菊の御紋が許されているのですよと特許状のコピーも配ってくれたのよ。ほら、これですよ。(どらうけとる)で、多くの方が体験していてこれまでにこんなに健康になったと喜びの声があるから信頼できると思うんだけど。(冊子もうけとる)
ど:なるほど、周りの人も効果を体験していると?
A:一人の友達は、いままでずっと悩んでいた高血圧が良くなったと喜んでいるし、販売員さんが集まっている人に効果を聞くと大勢の方が効果を感じていると答えるのよ。
ど:この機械を使用するとどんな効果が現れてどのようになるなどの説明とかはありました?
A:強い電圧をだす機械で、電流を体に流すことで血液のイオンバランスを整えて自然治癒力を高めるから、色々な病気に効果を発揮するとか。あと、初めてから最初の頃には好転反応といって、一時的に悪い影響があらわれることがあるけど、それは悪いものが外へ出ようとする働きの一つだから心配なく、長期間の使用で良くなりますと。
ど:健康に良いと感じたのはやっぱり実感があったから?
A:それもあるけれど、その体験談の本をみれば分かると思うけど、色々な病気が治っていると書かれているし、しかもその数がすごいから素晴らしいなぁと。あと、相撲のスポンサーだかになっているとかで写真も見せてもらったから信頼できる会社だと思ったし。
ど:体験談の本をちらっと見ましたけど、最初の但し書きがすごいですね。この発表内容は表現の自由憲法にも保障されているとか、病気が治った事を知る権利も同じですとか、薬事法違反にならないとかもかいてありますね。
A:その部分は読んでなかったです。ほら、中をみてください。
ど:全身療法の○○○○○○で不眠症が治り難聴からも解放され生活の質が向上した・・・なるほど。
A:ええ、すごいんですよ。
ど:で、それっていくらぐらいなんですか?
A:ええと、50万円くらいかしら。でも、けっして販売員の方は売りつけようとしませんよ。すごく親切だし。
ど:悪くいう人はいないんですか?
A:この前友達を誘ったら、以前体験して気持ち悪くなったことがあると断られたことあります。たまにあわないという人はいるみたい。


■調べてみた
話を聴いたどらねこは、その健康機器がどういうものなのかを調べてみました。それはどうやら電位治療器と呼ばれるもののようだとわかりました。Aさんからの話をきいている間は、単なるインチキマシーンじゃないのかしらと思っておりましたが、実際には家庭用医療機器として認められたものであり、基準に適合している機器であれば承認された効能効果の範囲内であれば効果を説明しても良い事になっているようです。当該機器もそういった認証はされているようでした。
では、Aさんが販売員から受けた説明等は妥当なものであったのでしょうか? このような家庭用医療機器はその販売や安全面での説明の不備などによるトラブルがあるようで、業界団体ではそのようなトラブルを未然に防ぐために自主的な取り組みも行って居るようです。日本ホームヘルス機器協会のウェブサイトには参考になるような情報が載っておりましたので紹介してみたいと思います。(因みに、当該機器を販売する会社も日本ホームヘルス機器協会の会員であるようです)

日本ホームヘルス機器協会
http://www.hapi.or.jp/

家庭においてセルフケアを目的として用いられる家庭用医療機器、健康管理機器等に関する技術の向上を通じて、品質・有効性・安全性を確保するとともに、健全で公正な取引を推進して消費者の利益を保護し、個人個人の自主的な健康管理・増進とホームヘルス機器産業の健全な発展に寄与し、広く国民福祉の向上に貢献することを目的とする公益法人です。

同ウェブサイトにはAさんが購入を検討している健康機器についても説明がありました。

家庭用電位治療器とは
http://www.hapi.or.jp/dictionary/deni.html
家庭用電気治療器の一つである電位治療器は、身体に対して「押す」「もむ」などの物理的な力を与えるものではなく、人体を交流又は直流電界に置くか、絶縁状態に置いて電位を与えて治療する家庭用の機器をいい、「頭痛」「肩こり」「不眠症」及び「慢性便秘」の緩解を目的とする、家庭用医療機器である。

治療ではなく、4つの症状に対し、緩解(一時的あるいは継続的に軽減される状態)を目的としているようですね。そうなると、Aさんがうけた説明はちょっと逸脱しているように見えます。Aさんの体験場でのケースは妥当なものであったのでしょうか?同ウェブサイトに掲載されている、家庭向け医療機器等適正広告・表示ガイドの内容が参考になりそうです。資料から該当しそうな箇所を引用・転載をいたします。

家庭向け医療機器等適正広告・表示ガイド?
http://www.hapi.or.jp/documentation/information/tekiseikoukoku_hyouji_guide_3.pdf

p3より
電話や訪問及び体験会場等における販売担当者の口述説明(セールストーク)等も、薬事法上の「広告」にあたるので注意する必要があります。

Aさんの述べる事例も広告の一環として判断できるのですね。

p19より

電位治療器の効能は「頭痛」「肩こり」「不眠症」及び「慢性便秘」ですから、Aさんが効果を仄めかされた血液をキレイにするは逸脱と考えられるでしょうね。あと、本当に効果を持っているとしても、表示を認められていない効果を謳う事自体がアウトなので、これも該当するでしょう。

p22より

体験談の例示も該当するようです。案外厳しいものなのですね。

わかりやすく不適切事例の例示もされていまる。幾つか抜粋してみましょう。

p33-35より



マジックワードの「自然治癒力」や「好転反応」はNGワードです。Aさんも好転反応と謂う何やら専門的な用語になんとなくもっともらしさを感じていたそうです。好転反応」とか「自然治癒力」と謂う言葉がでてきた時点でアウトだよ!みたいなテレビCMでもながして欲しいなぁなんて思ってしまいます。
他にも参考となる情報が盛りだくさんですので、興味のある方はダウンロードをお勧めいたします。


■どうしたら良いのかしら
こうした体験場での説明を受けた事により悩みを持ったり不安になる消費者は大勢いらっしゃるようです。国民生活センターのウェブサイトには類似の事例が提示されております。

国民生活センターの事例
http://www.kokusen.go.jp/jirei/data/200906_2.html
高血圧とその薬の副作用に悩んでおり、友人に誘われて、電位治療器の体験会場に行った。会場ではビデオが放映されており、その中で「機械が熟成して知力が付き、病気を100%見つける。1カ月この機械を使うと20歳若返る。免疫力が上がり、がんも再発しない」などと社長が言っていた。この機械はすばらしいものだと思って購入したが、機械を使い始めて2カ月ほどたった頃、体調が悪くなり、使用をやめると元に戻った。結局、機械を使っても血圧は下がらず、機械の効果について不審に思ったので、解約したい。

色々と良さそうな事を聞いてきたけど、本当かしら?そんな時には迷わず消費生活センター国民生活センターに相談するのが良いでしょう。半信半疑・・・でもやっぱり気になるからとそのまま通い続けたり、不安な気持ちでいてもたってもいられなくなりなんとなく他の人も誘ってしまう事もあるでしょう。しかしそのような行動は抜け出すことをさらに難しくなる事が予想されます。
リンク先の国民生活センターの事例を見ると業者は食い下がる事が予想されますから、そういった体験会場にはICレコーダーを持って行っても良いかも知れませんね。もし、身の回りに似たような状況にある方を見つけましたら、リンク先の情報を参考にしながら、なるべく早めの対応を行って欲しいとどらねこは思います。