刑務所内の生活でみるみる痩せたという話をきいて

体重の変遷をグラフで公表している記事が話題になっておりました。http://dietclub.jp/takapon_jp/

管理栄養士であるどらねこの目から見てもこの痩せ方はたいしたものなのでちょっと興味を持ちました。彼はこのまま痩せ続けてしまうのでしょうか?推測憶測*1交えながらちょこっと考えてみたいと思います。


■体重の推移
入所直後に95.7kg235日後には約70.8kgに減少との事で約25kgもの減量があることになります。体組織の増減は1gあたり7kcalが必要と一般に考えられていますので、25kgの減量と謂う事は通算175,000kcalのエネルギー不足があったと考えられます。意味の無いたとえですが、バナナ約2000本を我慢するぐらいの熱量です。だからどうしたですが。
とはいえ、リンク元のグラフを見るとはじめは急激に、その後は減少が緩やかになっていることがわかります。途中から食事の量が変化したのでしょうか?それとも運動量が大きくかわったりしたのでしょうか?


■体重減少の理由を憶測してみる
まず、刑務所ではどのような食事が提供されているのかを知る必要がありますが、食事の構成はおかず約1000kcalに主食の量で個人差を調整しているようです。主食の区分は大きく3つに分けられ、おかずと併せて約2600kcal、約2300kcal、約2200kcalとなるよう*2です。グラフ主は身長173cm前後の壮年の男性で、日常活動も通常通りに出来る体格の良い健康体ですので、食事は2600kcal設定で提供されたと想定します。
さて次は体重の変化を見ていきます。このエントリでは入所時と50日目、120日目、235日目のデータを元に検証を進めることにします。

それぞれの期間で1日あたり減少する体重(g)に7kcalを掛けると、推定不足エネルギーが計算できます。

こうしてみると、はじめの50日でのエネルギーの不足が非常に大きいことがわかりますね。

次に、グラフ主の1日のエネルギー消費量を推測してみましょう。30〜49歳男性の基礎代謝基準値(kcal/kg/日)は22.3ですが、太りやすい体質との話もでているので勝手に数字を丸めて22としておきます。それに期間中の基準体重と一般的な刑務所のスケジュールからどらねこが生活活動強度を推測したものを掛け合わせて一日の推定消費エネルギー*3を導いてみます。

だんだんと痩せていくことで予測される消費エネルギーも減っていく事がわかりますね。さて、刑務所で提供される食事が2600kcalであった場合、これらの予想消費エネルギーを引いた値が不足エネルギーにあたります。では、どれぐらいの不足となるのでしょうか。

どうでしょうか、2つめの表にある体重の減少から予測される不足エネルギーと比べてみて大差が無いと思います。グラフ主の体重減少は特におかしなものでもなく、予測の範囲内と謂えそうですね。


■これからどうなる?
8が月で25kgも痩せるなんて必要な栄養が摂れているのか心配だし、健康に悪いんじゃないかしら?などと思いましたら、結構な量の食事をしていてもこれだけ痩せる事が可能であることが、机上の計算ではあるもののわかりました。某所*4でネタにした、網走番外地ダイエットは嘘じゃ無かったんだ!と謂う検証になってしまいました。
ちなみに、グラフ主がこのまま同じ食事で同じ生活習慣を続けると仮定すると、体重が約62kgになったところで釣り合うと予測されます。身長173cmで計算すると、BMIは20.7ですのでスリムで健康的な体型が維持できる事になります。やはり計算された食事と規則正しい生活習慣こそが王道なのでしょうね。

*1:エネルギー代謝には個人差もありますし、ストレスなどここで考慮していない因子が沢山存在します。それらを無視した思考実験的エントリであることをどうぞご了承下さい。

*2:3区分は更に細分されるようです

*3:憶測まみれのデータですのでそのあたりはご了承願います

*4:http://d.hatena.ne.jp/T-3don/20110625/1309001164