食品と酵素

■健康冊子再び
(おまけ2追加バージョン)
とらねこ日誌では、グルコサミンのオジサマの手足が揃っている写真を掲載している楽しい健康冊子を以前紹介致しました。それ以来どらねこはその健康冊子のファンになってしまいました。今回*1はどんな楽しい記事が載っているかしら?ぱらぱらとページをめくるとまず、子宮頸がんの記事が目にはいりました。
ふむふむなるほど、子宮頸がんはワクチンで予防できるがんであり、年齢やその人のライフスタイルにより接種の必要性は異なります・・・と、ふむふむ・・・痛みはあるモノの重篤な副作用は心配ない、と。あと検診も大切か−。
結構良いことが書いてあります。
うん、医療機関に置かれて手軽に読まれる冊子にこのような記事があるのは良いことだな−、でもネタ的にはちょっと物足りないよな、なんて不謹慎な事を思っていたどらねこの手が止まりました。

■冷え体質改善プログラム
そんなタイトルの記事にアンテナが立ったどらねこ、でも確かに冷え性ってつらいですよねぇ、どうやって体質を改善しようと謂うのでしょう?
筆者は水上クリニック院長の水上哲秀先生というお方でした。お医者様が書いているのですから、そんなにおかしいことは書かれていないかな?早速読み進めて見る事にしました。
まず、冷えの説明がありました。女性に多いと謂われているけど、最近では胃腸の働きの低下や運動不足が原因で男性にも冷えを感じるヒトが増えている。冷えにより血液の循環が悪くなり、肩こりや生理痛の悪化などが問題になる・・・と。
ふむ、気をつけなければならないのですねぇ。そこで体質改善となるワケですか!さて、どんな方法を教えてくれるのでしょう?

■腸の働きを改善しよう
水上先生は謂います。

そこで見直してもらいたいのが「腸」の健康です。腸の働きが悪くなると血液が汚れて血行不良になり、冷えを起こす原因にもなるからです。

ふーん、そんなモノなのかしら?でも、冷えが原因で腸の働きが悪くなるんじゃね?負のスパイラルみたいな感じなのかしら。じゃあどうすりゃいいのさ、センセイは続けます。

それには腸内の食べ物を発酵させてエネルギーに変える「酵素」を増やし、食べた物をしっかり消化・吸収させることが重要です。
量、質ともに十分な酵素が腸の中にあれば血が汚れにくくなり、血液が体内の隅々までサラサラと流れるので血行が改善され代謝率も向上します。

ええっ、酵素を増やすですって?

昔ながらの日本食には酵素が豊富に含まれておりました。自家製の味噌や醤油に漬物、肥料に頼らない野菜や干物に納豆・・・。
現代は、早く手軽にバラエティ豊かなメニューが食べられるようになった反面、脂質が多く、ビタミンやミネラル、そして酵素も不足しがちです。

いや、昔ながらの日本食と現代の食生活を比べたら、昔の食事の方が必須栄養素が欠乏するリスクが高かったと思うのだけどなぁ。

さらに現代は、喫煙や飲酒、ストレスなど、酵素の力が低下する生活環境も増えてきており、健康体を維持するためには、積極的、意識的に酵素を摂取する必要があります。

酵素の力が低下するって何よ?もしかしてハウエルの酵素栄養学なのかしら、それともシンヤ酵素

酵素が豊富に含まれている食品の代表が「発酵食品」です。
<中略>
ただし、多くの酵素は42〜70℃の熱を加えるとパワーがなくなってしまうため、商品を選ぶ際には注意が必要です。

なんか、酵素が体内に入ってそのまま活躍すると考えて居るみたいですね。確かに発酵食品には微生物の作用により発酵前には含まれなかったビタミンや有用成分が生成していたり、分解により消化が良くなる、独特の風味が付与される等の利点が存在します。でも、それは発酵食品の性質や成分としてのメリットであって、酵素活性が残されているか居ないかの問題ではありません。その理屈で謂えば、味噌汁は酵素活性を失わせた悪い食べ方になりそうですが、そんな事はありません。
だいたい、酵素というものはたんぱく質なので、食品に含まれている酵素はヒトの消化管から分泌される酵素により分解されてしまい、加熱したのと同じようにパワー(笑)が無くなってしまうのです。また、生で食べる事ばかりに拘るのは食品選択の幅を狭くするおそれもありますのであまりお勧めできない選び方だと思います。
もう一つわすれてならないのは人間の体には膨大な腸内細菌が住み着いている事です。彼らは、ヒトがそのままでは吸収できないような成分でも酵素によって分解し栄養源にしております。その副産物が消化管のエネルギー源になったりビタミンを生成するなど、腸内細菌は腸内での発酵を通じてヒトの健康に大きく役に立っております。これは、食べ物に含まれている酵素とは無関係の現象です。
大事なことは、食物繊維などが豊富な食品や乳製品を食べることなどで、自分の体に住む*2腸内細菌が暮らしやすい腸内環境を整えてあげるような生活なのだとどらねこは考えます。

酵素栄養学
この文章ではサプリメントを薦めるような記述は出てきませんでしたが、ことさら食べ物から摂る酵素の効果を過大評価する酵素栄養学と呼ばれる考え方があります。おそらくですが、この筆者は酵素栄養学の考え方(新谷弘実かも)に共感しているものと思われます。酵素栄養学というのは、簡単に説明するとヒトの体にある酵素は限りがあるので、外から補ってあげなければならない、もしくは消化酵素を必要以上に臓器が作り出さなければならないので、体に負担が掛かる。だから、不足する酵素を補う為に、発酵食品や酵素剤を食べましょう・・・というような主張が根幹にあるものです。そんなのは全く根拠の無い主張であり、似非栄養学と謂えるものです。なるほど〜、こんな話初めて聞いたよ、なんて感心しないように注意しましょうね。




■おまけ
筆者は元気な腸を支える食材&体を温める食材として次に挙げる4つを薦めておりました。
一つは発酵食品で、もう一つが食物繊維、あとの二つが甘味料と生姜としております。問題なのは甘味料の記述です。

精製された食品は体を冷やしやすいため、毎日使う砂糖は白砂糖よりもきび砂糖や黒糖、砂糖大根が原料の甜菜糖やはちみつが適しています。

う〜ん、やっぱり新谷弘実の影響*3かしら?それに精製された食品が体を冷やすって、一体何が根拠なんでしょう?
一般の人だと何となく酵素みたいな科学的な記述があると、信用してしまいそうになりますが、そうした人でもトンデモ言説かそうで無いかを見分けるヒントが結構あるものです。
日常あたりまえに使われている食品をワルモノにする記述がみられたら、疑りアンテナをたててもよいと思います。この場合は、白砂糖よりも黒糖やてんさい糖を薦めているところですね。白砂糖は体を冷やすみたいな事を述べる人は、検証というような人にものを伝えるのに大切な作業を怠りがちと考えられるからです。

■おまけ2
生の酵素は食べる前にはちゃんと利用されていたりします。
果物にはたんぱく質分解酵素を豊富にふくむものもあります。例えば、パインアップルはブロメライン、パパイアはパパイン、キウイフルーツはアクチニジン、イチジクはフィシンというたんぱく質分解酵素を持っております。これら果物をペーストなどにして、肉のつけ込み液に加えることで、固い肉を柔らかく仕上げるのに貢献したりします。
ところで、これらの果物のたんぱく質分解酵素は当然人間のたんぱく質にも作用します。傷口にこの汁を塗り込めばきっとひりひり痛むことになるでしょう。キウイフルーツにはシュウ酸カルシウムという物質が針状結晶の状態で果肉に存在しております。これは、未熟な果実の方が顕著であると思われます。これが食べたときに粘膜をチクチク突き刺します。そこにたんぱく質分解酵素アクチニジンが作用しますと、ヒリヒリ痛むわけです。どらねこはコレが苦手で生のキウイフルーツを食べる事が出来ません。
また、食べ物に含まれる酵素にはビタミンを壊す物があります。最近話題になっているトキのビタミン欠乏症はドジョウなどの淡水魚が持っているビタミン分解酵素によるものと考えられております。また、ネコに生のイカを与えてはいけないとされるのは、生のイカの内臓に含まれるチアミナーゼというビタミンB1分解酵素が食物に含まれるビタミンB1の活性を失わせてしまうからです。ちょっとなら大丈夫だと思いますが、生の魚介類ばかり与えているとビタミン欠乏になるおそれがあるのはこのためです。
人間が加熱して食事をするのはとても理に適った行為と謂えるでしょう。生ものも良いですが、必要以上に生に拘るのは不必要なキケンを招く行為かも知れませんね。

*1:フリーペーパーの健康サラダ2011※冬号 刊行:エンパワーヘルスケア株式会社

*2:腸内細菌叢はヒトや人種などで差があるようですね

*3:新谷弘実は食養系